第1章 “時の番人編” プロローグ【とある戦争】
これはとある戦争から始まる物語。
この戦争により多くの人が死に多くの人が裏切った。
世界を叫喚させるほど激しい戦争は約10日ほどで終戦を迎え多くの人間がその終戦を喜び合う。
だがこの戦争で得られた物はどこの人々にも何もなかった。
ただ残虐に人が死に多くの子ども達を苦しめ地獄へと突き落とす。それだけの無慈悲な戦争であったのだ。
そしてここにもまた1人の苦しむ少年がいた。黒髪に黒い瞳を持つ日本人の少年。彼の名前は――
???side
ダ―――――ッン!!!!!!!!
耳の中から頭全体を揺さぶるような建物が崩れる音が耳に響いてくる。
その音にギリギリの所で頭を覚醒させた俺は確かめるように手を二三回ギュッギュッと握りしめた。
あれから何分――いや。何時間たったかはわからない。
しかしそれでもまだ自分の生命の灯火が消えてないことは確信することができた。
それは両足が折れた痛みの感覚による確信か。はたまた額の傷から流れ落ちた血が目に染みた感覚による確信か……。
だが一番確信を得ることができる感覚はそんな悲痛なものではなく温かい背中の感覚だった。
誰に運ばれてきたのはわからない。
もしかしたらそれは自分の作り出した妄想かもしれない……。
だが【俺】は気がついたときには誰も聞いてないかもしれないのに自分をここまで運んでくれた人物へと感謝の言葉を口にしていたのだった。
「ありがとうございました……」
俺のその声に反応したかのようにカツンッと脚が石に当たったような音がするが【彼】が気付くことはなかった――
――ガララッ……!!!!
不意にその瞬間。俺は後ろから瓦礫が崩れる音を耳にして慌てるように体を反応させる。
もしこの状態で敵に見つかったら確実に殺されてしまう。
そう思った俺は最早振るうこともできない刀を構える。
しかし俺の前に現れたのは俺の信頼する仲間の一人で音楽が好きな少年だった。
「【…な…】か?」
最初の言葉は俺の耳がよく聞こえないから何を言ったのかわからなかった。だがおそらくあれは俺の名前を言ったのだろう。
そう思った俺はその人物の期待のこもった言葉に答えるかのように少し微笑みながら口を開くのであった。
「【音弥】さん??……無事だったんですね」
俺の口からはっきりと放たれたその名前に出てきた人物――音弥さんは安心したかのように深く息を吐き出していた。
「……あぁ。何回か死にかけたがピンピンしてるよ。お前の方も無事で本当によかった。どこか致命傷になるような怪我とかはしてないか??」
「……はい。脚は両方折れてますけど特に問題はありません。……ただ意識は今にも飛びそうなんで意識無くなったらよろしくお願いします」
「ん。そうか……」
俺の状態を知った音弥さんはそう呟くとどこか悲しげな顔で空を見上げる。
でも確かにこんな死と隣り合わせみたいな赤い空だったら悲しくなったりもするな。そう思いながら俺は音弥さんと同じ様に真っ赤な空を見上げる。
"あの人"と同じ名前のあね赤い【空】を――
『『……………』』
一時の沈黙が流れる。それはとても心地よいとは言い難いような沈黙であったが俺は嫌いにはなれない沈黙であった。音弥さんが俺を守っているかのようなそんな感じの沈黙が――
だが自分はこの沈黙を破って聞かなければならないことがある。
そしてそのタイムリミットは少しずつ迫ってきていた。俺の意識がなくなりつつあるのだ。
完全に意識が消える前に……俺は聞かなければ。
そこまで考えた俺は朦朧としだした意識の中。空間にひびをいれるかのように口を開いた。
「音弥さん……聞きたいことが……あるのですが」
「ん??なんだ??」
だけどそのときついにタイムリミットが訪れる。あたりの景色は赤から黒に変わりだし頭がなにも考えられなくなっていく。
だけど俺はそれでもその9つの言葉を絞り出すために唇を開く。確かめるためにしっかりと――
「あに…きは……ぶじ……です…か?」
聞こえるか聞こえないか。そのはざまを行き来するような声でやっと9つの言葉を出せた。
そして音弥さんはしっかりその言葉を聞き取ってくれたようで俺の頭に手を置きポンポンと軽く2回優しく叩きニッコリと微笑みを浮かべた。
「あぁ。心配いらない。だからお前はもうゆっくりと休め……」
安心できる優しい包み込むような言葉。その言葉を聞いた瞬間に俺の意識はブラックアウトしていったのであった――
音弥side
「……おやすみ。いい夢見ろよ」
俺の目の前に横たわっている少年。その少年に優しく言葉をかけると俺はゆっくりと体を落ち着かせる。
少年のほうは俺の言葉に安心したのか気を失い今は安らかに寝息をたてている。
その表情はとてもあの少年だとは思えないほどだ。
――しかし少年の安らかな眠りとは裏腹に俺は強い罪悪感を持たずにはいられなかった。
なぜなら俺はこの少年にに嘘を付いたのである。
「【兄貴】……か」
意識を失う前に彼の口から放たれた確かなその言葉。それは彼が懐いてやまなかった彼の兄貴分のことを示している。
そしてその男の死体を俺この目ではっきりと目にした。
腹のあたりにどす黒い血の後を残した俺の親友である少年の姿を――
とても痛々しかった。
だが不思議と彼のするその顔は満足そうに安らかであった。
何かをやり遂げたような柔らかな顔。それが彼の兄貴であり俺の親友の死に顔だった。
――なんであんなに安らいだ顔で逝ったんだ?何に満足したんだ?
俺は頭の中で数々の思考を巡らす。だが目の前の少年とは違い俺の頭はいたって普通。何も思い浮かばない。
だがこれだけは俺の平凡な頭でも分かることがあった。それは少年の兄貴分であり俺の親友である少年は最後は笑って逝ったということである。
――バラバラバラバラ……
俺がそう物思いいふけったとき遠くから聞き慣れたエンジン音が聞こえてくる。
それは間違いなく俺達がここへ来たときに乗っていたヘリコプターの音だった。
そしてその音は時間をおうごとに増し最終的には肉眼でも見える位置に来ていた。
「【時の番人】のヘリか……」
ヘリの扉から顔を出す仲間の一人を見てそれが時の番人のヘリだと確信を得た。
相変わらず無表情な仲間の一人である水城の顔……だがその顔は安心したと書いてある。 おそらく、長い付き合いの自分たちにしかわからないであろう顔……少なくとも俺には安心感を感じる顔だった。
「一安心って所かな」
そう言うと俺は【彼】を抱え上げた。
――軽い……。
少年を持ち上げた瞬間。俺の頭にはその一言だけがポツリと浮かぶ。
まだ成長期も終わっていない【彼】の体は驚くほどに軽かった。
「ふぅー……」
ついつい出てしまった深いため息。それはこの不条理な世界に対する批判を込めている。
だから俺はその不条理を正すために呟いた。この間違った現状。それを自分に。それに世界に言い聞かせるために。
そして願わくば自分が抱え上げたこの軽い――いや。この軽すぎる少年がもう一生。闘わないでいい世界で生きてほしいから――
「なんでこいつが闘わなくちゃいけないんだよ……こいつは――【日向】はまだ9歳なんだぞ――こんな世界は絶対間違ってる。俺の親友を奪い親友の忘れ形見であるこいつが闘わなくちゃいけない世界なんてな――」
それは14歳の俺の大人ぶった独り言であった。
???side(4年後)
「Zzz……」
――あぁ……安眠の時間って幸せだ……。
こんな当たり前のことを考えながら貴重な朝の時間をベッドに張り付いてるのは俺こと――
【不知火日向】
今年で中学3年生になった14歳だ。さっそくだが朝の俺の楽しみを教えようと思う。
まず1つ目はさっき書いたとおり朝のギリギリの時間まで延ばしにのばしてベッドに張り付き続けるこの"惰眠"そしてもう1つは――
――コンコン……ガチャッ
「……【ヒナ君】朝だよ起きて」
「う〜ん。知恵理あと5分。あと5分だけでいいから俺に睡眠時間を――」
「もう。だめだよヒナ君。朝ご飯出来てるんだから」
「……マジかよ。はぁ〜…わかったよ知恵理。起きるから問題nothing」
そう言いながら俺はノロノロとまだ暖かく名残惜しいベッドから起き上がる。そして起き上がった俺の目の前には1人の少女――。俺は彼女にまだ少し眠たい目をこすりながら柔らかな微笑みを向けた。
「おはよう"知恵理"」
すると目の前の少女は俺の方にもう一度振り向くとそのアイドル顔負けの太陽のような笑顔で応えてくれた。
「おはようヒナ君♪」
さて。じゃあそろそろ俺のもう1つの楽しみと目の前の少女について説明しよう。
まず目の前にいる少女――彼女は――
【姫ノ城知恵理】
俺の幼馴染で今は家の隣に住んでいる少女である。
純粋な日本人には珍しい銀色の髪にまるで天に愛されたような絶世の容姿。少し――いやかなり天然な性格の美少女である。
そして俺の楽しみは毎朝彼女に起こされることだ。
どうだ?美少女な幼馴染に毎朝起こされるなんてある意味男の夢だろ?
はっはっはっ!!羨ましいだろ!!
「ヒナ君!!急いで!!早くしないと学校に遅れるよ!!」
「問題nothing!!すぐ行くから!!」
じゃあ知恵理が呼んでるからまたあとで。
「ヒナ君!!早く!!」
――タッタッタッタッ……
――――――――
―――――
―――
―
――思えばこのときは俺は気付いていたのかもしれない。
これが俺の運命を変える――いや。俺の正しい運命の路線へと戻される1日の始まりだってことを。
休暇のように過ごしてきた今までの4年間を終わらせる最後の平和な朝だってことを――。
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