第71話 アーマゲドン
『偉大に飲酒する者、偉大に酔う』
―哲学者パイデッカー―
怨霊共が街の人々を連れ去って行こうとする。
女の人が悲鳴をあげている。
怨霊に抱きかかえられ、宙を舞っている。
その真下に、屋根の上を飛び跳ね、急接近するプロテイウスがいたのよさ。
彼は大きく飛び上がり、その大剣で怨霊を切り裂いて、さらわれそうになった女の人を救出したのだわさ!
「マジョリン!大丈夫?!息があがってるよ?」
「そういうヴィトゥスこそ、なれない攻撃魔法ぶっ放し続けて、汗が滝なのよ」
ハレルが放った稲妻や、あたし達の放った攻撃魔法が暗雲立ち込める空を様々な色で照らし、怨霊狩猟軍団を焼き滅ぼして行くのだけど、数の多さに押され気味なのだわさ。
ついにはあたし達の目の前にまで降りてきてしまったのよ!
あたし達の目の前に降りて来た怨霊は、羽の飾りを付けた兜を被った、いにしえの蛮族の兵士のような姿でいて、斧を手に襲い掛かって来たのだわさ!
身に危険を感じたその瞬間、紫色の炎が怨霊の体を焼き尽くしたのだわさ!
「苦戦をしておりますな。お待たせして申し訳ない。準備が出来た所だ」
フォースタス博士がメフィスとフェレスを引き連れて現れたのだわさ。
「遅いわよ!あんた、有名な魔法使いなんでしょ!?待たせた分、期待しているわ!」
「だわさだわさ!」
「すまぬ。だが、期待には応えよう!」
フォースタス博士は床に三位一体の魔法陣を描く。
「急いでるって言っているのに、細かい魔法陣描くのかねぇ」
「失敗するわけにはいかないからな」
「我が契約者が最終準備をしている間、吾輩も助太刀いたそう」
「怖いけど、ボクも頑張るよぉ!」
メフィスは紫色の炎を放ち、怨霊を焼き払い、フェレスが怨霊に触れると、怨霊は光に包まれ消えて行く・・・
「出来たぞ!」
フォースタス博士は描き上げた三位一体の魔法陣の上に奇妙な石を置いたのよ。
「それは・・・賢者の石!?」
「今は違う。これから賢者の石になるものだ。怨霊を強制的に生贄とし、この石に吸い込ませる!」
フォースタス博士は呪文を唱え始めたのよ。
「オー ラマ バスライ モナイ メンピス ロラーテ パセム」
三位一体の魔法陣が輝き始めたのよ。
すると、近くに迫りくる怨霊が次々に、石の中に吸い込まれて行くのだわさ!
天を覆う程の悪霊達がどんどん石の中に吸い込まれるのよ!
「これで狩猟軍団を全部、賢者の石に返還出来るのだわさ!」
怨霊を吸い続ける石は、小刻みに震えだし、宙に浮き始めたのだわさ!
「・・・これは、まずい!怨霊の数が多すぎる!限界だ!離れろ!」
っと、フォースタス博士が声を上げた瞬間、あたし達は光に包まれたのだわさ!
物凄い爆発音と共に、あたし達は吹き飛ばされたのだわさ!
あたしは空中に浮いている間、怨霊があたしの体を掴み、引き上げて連れ去ろうとするのよ。
あたしは怨霊の目に指を突っ込んでやったら、悲鳴を上げてあたしを手放したのよ。
あたしはそのまま落下して、民家の屋根に激突するかと思った瞬間、プロテイウスがあたしの体を受け止めてくれたのだわさ。
「おいおい。大丈夫か?」
「ありがとうだわさ」
「再開を喜ぶ暇もねえな。だが、お前が無事でよかったぜ」
「そうねぇ~・・・捕まっている間、見捨てられたんじゃないかって思う事もあったけど、信じてたのよさ」
「この怨霊共を払った後、祝杯でもあげようぜ!」
「美味しいお酒、絶対に飲むんだからね!」
今、あたしは何だか魔力がみなぎって来ているのよ・・・
あんなに強力な魔法を使いまくったにもかかわらず、今までにない程に最高のコンディションだわさ!
賢者の石の爆発で浴びた魔力の塊りが影響を与えているのだろうね!
監獄方面に急いで戻らねば!
「ヴィルベルヴィント!」
あたしは強力な風の渦を発生させ、その中に身を投げ出したのだわ!
あたしの体は風に舞い、空を飛ぶんだけど、妙にバランスを保つのが難しいのだわさ!
そこで、風の渦に巻き込まれて飛んでいる瓦礫に紛れていた箒を手にして、それにまたがったのよ。
案外これがいい感じに空中でバランスが取れるのだわさ。
溢れ出る魔力の影響か、妙に五感が研ぎ澄まされ、街の人達の声が聞こえるのよ!
「助けてくれ!」
「神様・・・神様・・・」
「子供が見当たらないの!」
「怪我をしている人がいる!手を貸してくれ!」
「誰か!救いの手を!」
空から街を見下ろすと、教会の前に避難している人達がごった返しているのだわさ。
その人達を狙って怨霊共が襲い掛かる!
あたしは進路を変更し、教会に迫る怨霊軍団に向かったのだわさ!
「突撃魔法!ヴィルデザウ!!」
あたしは攻撃的な魔力の塊りとなり、怨霊共にぶち当たり、それを蹴散らしてやったのだわさ!
教会に集まった人達があたしを見上げているのがわかったのよ。
「魔女だ!」
「箒にまたがって飛んでいるぞ!」
「魔女が、俺達を守ってくれている!?」
「虐げ続けてきたのに、それでも身を張って私達を守護してくれる・・・」
「魔女・・・いや、彼女こそ天から舞い降りし守護天使だ!」
調子のいい時は他人を見捨て、調子が悪い時はすがる愚かな人達・・・
いいじゃん。
お望み通り、あたしゃーそんなあんたらを守ってやるのだわさ!
「マジョリン!ここはオレに任せろ!監獄方面に怨霊共が集まっている!あっちに向かってくれ!!」
「プロテイウス!了解だわさ!そっちはたのんだよ!」
あたしは監獄方面に向かって、全速力で空を突き進むのだわさ!
あたしの進行を阻止するかの如く立ちふさがる怨霊共をぶち当たり吹き飛ばし蹴散らして突き進む!
監獄上空で旋回しつつ、攻撃魔法をぶっ放し、群がる狩猟軍団を吹き飛ばしまくるのだわさ!
「ルフトヴァッフェメッサーシュヴァルベ!」
光速で空を舞う無数の光の刃を放ち、怨霊共を切り裂きまくるのよ!
「マジョリン!ボクもそれに乗せてくれー!」
大聖堂の屋根の上にいるハレルが大声であたしを招くのよ。
あたしはハレルに向かって飛び、手を掴んで箒の後ろに乗せたのだわさ!
「マジョリン!ボクが放てる雷撃はこれが最後だ!監獄に集まる怨霊共を一気に蹴散らす為に、この最後の一撃をマジョリンの魔法にあわせる!」
「了解だわさ!」
あたしは全速力で悪霊共に向かったのよ!
ハレルの強力な神の雷を身にまとい、究極の突撃魔法を発動させる!
「電撃戦術魔法!ブリッツクリーク!!!」
監獄に集まった怨霊共を焼き払い、消し飛ばす!
監獄上空を高速旋回し続け近寄る怨霊共をかき消すのさ!
そこで見えて来た中庭は、悪霊共に溢れかえり、兵士や監守達が血祭りにあげられていたの・・・
「メメシアは・・・メメシアは何処!?」
「マジョリン!向こう!!」
ハレルが指さす方向を向いた瞬間だったのよ!
空が血のように真っ赤に染まったの!
そして、大地から天高く真っ赤に輝く光の十字架がそびえたったのだわさ!
「たしか、修道院がある所だよ!戦いながらあっちまで移動したんだと思う!」
「すると、あの十字架の中心は・・・」
「メメシアだよ!まだ、あいつと戦っているんだ・・・」
こいつはまずい事になったのだわさ・・・




