第61話 マジョガリータ
『飲んべぇとは、自己を売り、酒を買った人間だ』
―道徳哲学者ソクテラス―
あたしゃ、番兵の詰所に連れていかれたのよさ。
まあ、すぐに解放してくれるって言うからねぇ・・・
なんか、取り調べの部屋に連れて来られたのよねぇ・・・
「お前が魔法を悪用したという罪を認めるか?」
っと、番兵が言い寄るのよさ・・・
「違うのよさ。ちゃんと銀貨を払ったのよさ・・・割高な菓子パンなのよさ・・・」
「それと、この街の人間では無いようだが、何をしに来たのだ?」
「それは、勇者と来たのだわさ。この街の大聖堂で何か得られるものがあると聞いて・・・その、魔王退治に必要な経験値的なやつ?」
「勇者?最近は勇者を語って銭を得ようとする不届き者が多い・・・何か、勇者の証拠はあるのか?」
「街に仲間がいるのよさ。証明してくれるのよさ」
っと、話しは何か妙に平行線を辿っちゃうのよねぇ~・・・
いい加減、そろそろ宿に戻らないと、みんな心配しちゃうのよさ・・・
そこで、この取り調べ室に鎧を身に着けた人が入ってきたのよさ。
「これは、ジャキエル様!今、魔女の取り調べ中です!」
ジャキエルと呼ばれたこの男、あたしを汚物を見るかのような目で見て来るのよねぇ・・・
「取り調べなど不要だろ。こいつは悪しき魔女だ。魔女の狩人であるオレが言うんだからそうなんだ」
「っはあ?何言ってるのよさ!あたしゃーあんたらが悪魔と言う存在とは契約して無いし、むしろ精霊すら扱う事が無い清き魔女なのだわさ!」
「はあ?魔女に人権は無えんだよ!オレは騎士階級だ!農民以下の下等生物が気安く声をかけるな汚らわしい!」
「ちょっと!それは酷い言い方なのだわさ!」
「黙れ!人間の言葉を使うな汚らわしい!てめぇみてえな下等生物で悪魔の子はブヒブヒ鳴いてりゃぁいいんだよ!」
すると、ジャキエルってやつはメイスを振り上げたのよさ!
そして、勢いよく振り下ろして、テーブルを真っ二つにしちゃったのよさ・・・
物にあたるのよくないのよ・・・
「こいつは監獄行きだ!」
「ちょっと、そりゃないのよさ!」
あたしが魔法を唱えれば、こんなやつなんか簡単に・・・
いや、このジャキエルとか言うやつの鎧、ある程度魔法耐久性のある鎧みたいなのよさ・・・
魔女の狩人を名乗るだけあって、魔法対策はしてあると思われるのよ・・・
どんな対策しているのか、見て見ないとわからないんだけどねぇ・・・
あたしの魔法なら吹き飛ばす事はできるかもだけど、下手に人を攻撃するのは、勇者の仲間としてよろしくないのよさ・・・
真実が味方するのであれば、あたしはこのまま大人しくしていたほうが良いのかもしれないねぇ・・・
っと、考えている内に、あたしは鉄格子の荷馬車に押し込められてしまったのよさ・・・
そして、街の人達が見ている中を荷馬車はゆっくりと進んでゆくのよさ・・・
あたしがドナドナしているのを街の人達は冷たい目で見ているのよさ・・・
中には罵声を浴びせて来る変な奴もいるし、困ったんだわさ・・・
「ちょっと!マジョリン!!何してるの!!」
人込みをかき分けてメメシアが走って来たのよさ・・・
でも、番兵がメメシアを制止して、それ以上近寄れなかったのよ・・・
「メメシア!あたしゃ何かの手違いで捕まっちゃったんだわさ!助けてほしいのよさ!」
あたしは大声で伝えたのよ。
「わかったわ!何とかする!絶対なんとかするから!それまで大人しくして、問題を起こさないで!絶対、助ける!信じて!わたくしを信じて!!」
こうしてメメシアは遠くへ遠くへと離れてしまったのよさ・・・
あたしは壁に囲まれた建物に連れていかれたのよさ・・・
「ようこそ。魔女の終末の地、魔女監獄へ」
周りを見ると、見張りの兵士達が厳重な警戒をしているのよさ・・・
腰には剣を引き下げて、手には・・・
なんだろうねぇ・・・・
銃なんだけど、火縄が無いのよさ。
妙な銃を持って、警戒にあたっているのよ・・・
「ぼさっとしてねえで、歩け!」
そう言われ、あたしは重苦しい頑丈な建物の中へ・・・
そこの小さな独房へぶち込まれてしまったのよさ・・・
「これから、どう裁かれるかが決まる。それまでここでの生活を送る事になる。食事は朝昼夜の3回だ。面会は基本無しだ。それと日中は労働をしてもらう。労働内容は日によって異なる。いいな」
「質問はいいかねぇ?」
「いいぞ」
「お酒はでるのかねぇ?」
「無いぞ」
くそがっ・・・
「えっと、あたし以外に囚人はいるのかねぇ?」
「お前以外に10人の魔女と5人の狼男、1匹の羊、それと1冊の本だ」
「羊・・・本・・・羊皮紙セットかしら・・・」
「余計な事は聞くな。質問の時間は終わりだ」
そう言って、監守はドアを閉め、去って行ったのよさ・・・
ドアは除き口がついているドアなのよ・・・
部屋は床はも壁も石造りの頑丈なものになっているのよ・・・
ベッドは木枠に藁を敷いた粗悪なもので、部屋の奥にはトイレ用の桶があるのよさ・・・
なんか、いるだけで悲しくなる部屋なのだわさ・・・
もちろん、部屋に灯りは無く、日が沈むと真っ暗なのよ・・・
「おい、夕食だ」
そう言って監守が、ドアの覗き口からリンゴを投げ込んだのよ・・・
なんか、ちょっと痛んでるリンゴなんだけど、食べないと飢えてしまうのよさ・・・
今日は、みんなで美味しい夕食が食べれるのだろうなって思っていただけに、あたしゃ悲しくなってしまったのよ・・・
それと、今頃みんなはどうしているのかも気になってねぇ・・・
メメシアは助けてくれるって言っていたけど、大司教相手にする事になるんだろうし、メメシアだって危険な目にあうかもしれないのよさ・・・
心配事しかないのよ・・・
あたしが捕まったせいで、みんなに迷惑が・・・
悲しんでいても仕方がないのよさ・・・
あたしはメメシアを信じて、この魔女監獄の生活を過ごすしかないのだわさ・・・
お一人様監獄へ・・・




