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第59話 大聖堂の街、ヤーバンブルク市

『哲学者は酒場の酒先案内人である』

―劇作家、小説家バーナーナ・デショー―




大聖堂のある、ヤーバンブルク市の街にたどり着いたのよ。

街は防衛に重点を置いていないのか、それともびっしりと詰めて建てられた家々が城壁替わりになるのかはわからんのだけどさ、堂々とした作りの街って感じがするのよねぇ。

すぐ隣の小高い山の上には城郭が見えるのよさ。

防衛能力はその城が受け持っているって感じなのかねぇ・・・


「ヤーバンブルク大司教区の中心だけあって、街が綺麗に作られていますね・・・」


メメシアは感激しているようなのさ・・・


「ここなら、ハレルの勇者の力も、プロテイウスの魔法耐久力も上げられるはずです!さあ、いざ、大聖堂へ向かいましょう!」


普段大人しいメメシアがこんなにはしゃぐなんて、珍しいのよさ・・・

まあ、案の定、大聖堂の中には簡単に入れなかったのよさ。

メメシアは必死に自身の加入している修道会の事を告げるも、まあ、門衛が相手にしてくれなかったのよねぇ・・・


「デラストラーダ会?ああ、国境を越えて色々ケチつけて回る厄介者の集団って聞いた事があるぞ。なんだ?大司教区の中で不正が無いか監視に来たのか?」


「いえ、そういう事ではないのですが・・・ないのですが・・・」


威圧的な門衛に対して、臆しているのかと思いきや・・・


「その言葉、取り消して頂けます?わたくしの所属するデラストラーダ会は神の名の下に、教会の不手際が無いか、それを治して万人が祈る権利の妨げを取り除く為の、教皇庁から認可された修道会なのですよ」


あ、やばい。

門衛と喧嘩はじめそうなのだわさ・・・

あたし達はメメシアを引き留めて、なんとか落ち着かせたのよさ・・・


「あのな・・・大聖堂へはいきなり入れはしない。ただ、入れる方法があるぞ・・・」


「えっと、その入れる方法とはなんですかねぇ・・・」


「・・・早朝の礼拝の時間。他は日曜日は早朝から日の暮れる頃までだったら何時でも入れる。最近は聖堂内で集まって賭博する輩や、客を探す娼婦まで現れて、今の大司教がそういう輩のたまり場に大聖堂がなるべきでは無いと、出入りを厳しくしているのさ」


なんてこった!

そんな事情があったとは・・・


「それに、明日はちょうど日曜日だ。明日来るといい。オレみたいな雇われ番兵にゃわからんが、デラストラーダ会と聞けば、助祭が案内してくれると思うぜ」


そう聞いて、メメシアはようやくあきらめがついたようだわさ・・・


「明日、明日は大丈夫・・・でも、せっかくなので、外からもよく見ましょう!目から恩恵を受けるのです!」


うん、何を言っているのだこいつは・・・

もはや、ただの観光客だわさ・・・


大聖堂をたっぷり見た後、街の中心へ行こうって事になってさ、建物が詰め込んであるように建てられた1本でも道を間違えると迷子になりそうな入り組んだ道を進むと街の中を通る川を渡る橋にたどり着いたのよさ。


「なんか、凄い建物なのさ・・・よくこんな川の上に建ててあるのよさ・・・」


「これは市庁舎で、ヤーバンブルク市民の大事な建物なのですよ」


っと、道を行く通りすがりの人が説明してくれたのよさ。


「ここ、司教区の土地に市庁舎を建てると話になった時、その時の大司教が土地を譲らなかったために、市民達が川にくいを打って、人工的に中州を、新しい土地を作り建てた建造物です」


「はぇ~、人が造った島なのねぇ・・・それは凄いのよさ」


橋を渡って、対岸の街の中心部に行くと、さらに道は細くなり、それでも路上に屋台やら、飲食店のテーブルやらが出たりして、ごっちゃごちゃしているのよねぇ~。

聖人の石像の噴水がある広場に出て、ちょっと一息。


「街が迷路みたいで歩きにくいのよさ・・・」


「それだけ大聖堂の恩恵が強い証拠です。皆、大聖堂を見て暮らしているから、きっと心が清いのでしょう・・・」


そうかねぇ・・・

あたしにはそうは見えないのよさ・・・


あたし達は宿に宿泊する事になるので、早めに部屋をとっておく事にしたのよさ。

今回も部屋の空きが少なく、4人で一部屋に決まったのよ。

まあ、ベッドが2つの部屋で、2人は雑魚寝になる感じで、誰がベッドに寝るか、コイントスで決めて、あたしとハレルがベッドに寝れる事になったのよさ。


その後、各々街を散策するって事になって、メメシアは街の大きな教会や、また大聖堂を見に行くようだったのよさ・・・

ハレルはメメシアに付いて行って、色々教えてもらう事にするとのことさ・・・

う~ん、ハレルはもしかして、メメシアに気があるのかねぇ~。

プロテイウスはプロテイウスで、小高い丘にある城を見に行くそうだわさ。

あたしは・・・まあ、ねぇ~・・・


こんなチャンスだから、酒場でも見つけてのんびりと飲む事にしたのよさ。


「あった。これは何かよさげだねぇ・・・」


建物の前にテーブルを出しているお店で、まだ日が沈んでいないのに飲み始めている人達がいるのよさ。

とってもいい雰囲気なのよねぇ~・・・


「いらっしゃい。旅の人ですか?名物のビールがありますよ。是非、飲んで行ってください」


「名物のビール!いいねぇ・・・飲む飲む~!」


店員さんに案内されて席に着くのよ。


「は~い、これが名物の燻製ビールです」


「く、燻製ビール!?ビールなのに・・・燻製!?」


「あはは、お客さん面白いですね。燻製麦芽を使って作っているビールです。ここは川に囲まれた土地で、麦芽の乾燥を燻製に頼っているのですよ。でも、それが独特の風味を出すって、評判なんですよ」


「へぇ・・・それは知らなかったのよさ・・・またひとつ、賢くなってしまったのだわさ・・・」


試しに1口・・・


ゴクリ・・・ゴクリ・・・


「お、おおお・・・これは癖が強いのよ。なんというか、苦み?独特な香ばしさ、すっごいきつく来るんだけど、それの後味が余韻がとても心地よくて、また1口と飲みたくなる独特の味なのよ!」


もう1口・・・


ゴクリ・・・ゴクリ・・・


「ふぅ~・・・これが燻製ビールってやつねぇ~・・・美味いのよ。単純に説明できない美味さがここにあるのよ。これは、飲めばわかるとしか言いようがないねぇ!もう1杯!」


「気に入ってくれてよかったです。クセが強いから、やはり好き嫌いはあるんですよ。オマケもお付けしますね」


店員さんは、燻製ビールとオマケのプレッツェルを持ってきてくれたのよさ。

あたしゃうれしい気持ちになったのよさ。

約束の地とは、ここだったのか~って思うくらいにねぇ~・・・


「燻製ビールの独特な香り、プレッツェルをかじって飲むってのもいいものだねぇ~・・・もはや穀物天国だわさ!」


「そうだ。ここの名物で、ヤーバンブルクツヴィーベルっていう料理があるのですがいかがです?ツヴィーベルの中にひき肉を詰めた料理で、美味しいんですよ」


「おお~、いいねぇ~・・・けど、まだ夕飯時じゃ無いからねぇ・・・まあ、それはまた今度で~」


しかし、ヤーバンブルク名物の料理は気になるのよさ・・・

そうねぇ。

みんなと夕食の時にこれを食べてみるように提案してみようって思うのよさ。

きっと、みんなも喜ぶに違いない・・・

あ、メメシア、肉は食べないんだっけねぇ・・・

まあ、メメシアは肉無しで・・・


「あれ?マジョリンさん?」


何処かで聞き覚えのある声が・・・

なんと、飲み友魔法使いのテジーナちゃんだったのよさ!


続くのよさ。




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