聖女チャンネル再び
説明回です。
システムとか設定とか面倒、どうでもいいという方はとばしても大丈夫です。
「おはようございます!8時になりました。聖女チャンネルのお時間です!」
明るく元気なアリアの声が、全国民に届く。
新たな国造りの為に始まった新たな取り組み、聖女チャンネルが今日も始まった。
◇◇◇
聖女を失ったミルトランド王国は、国民と共に国造りを行う。
国王自身の言葉で、連合国および全国民に対して王令が発布された。
国造りには、追放された聖女アリアとその師匠である大賢者が全面的に協力することも知らされ、国民は驚いた。
更に、この取組みには全国民に参加して欲しいこと。
その為に聖女の力を用いて、全国民に国の理念や骨子、草案など伝える時間を設けること。
それに対しての意見を、これから運用する「しすてむ」で取り入れていくこと。
そういった事が伝えられた。
突然、聖女と大賢者と名乗る青年を左右に従えて国王が告げた内容に、国民は困惑した。
理解できない不安は、傍らに寄添うアリアの姿に多少緩和されたが、国が変わるという不安は拭えない。
そんな人々に向けて、翌朝からアリアの『強制通信』が始まった。
「まずは、私が思う国の在り方について、語らせて貰おう」
国王は急がなかった。
丁寧に説明して、一人一人が理解し、他者と話し合うことで様々な意見を収集したいと思っていたから。
30分で収まるように議題を絞り、平易な表現で説明する。
分からない人が多ければ、次はもっとかみ砕いて説明する。
意見が大きく分かれれば、次の通信では意見に対する見解と更なる議論を促す。
続けることによって、国民は国を作る一人であること、国や未来について考えること、自分の意見を持ってもいいこと、理不尽を諦めなくてもいいこと、そういった諸々がゆっくりと浸透していった。
◇◇◇
国王からの取組についての提案を、ベルディモードは二つ返事で引き受けた。
聖石を通した意見の吸い上げは、新システムにおいて重要な機能の一つである。テスト運用にもちょうど良い。
そう判断して、ベルディモードはシステムを稼働させた。
ベルディモードが作ろうとしているシステム。
それは現行システムをベースとした、聖女の代替システムだ。
聖石には感情も意思もない。
悪意を持って使用したら国を一瞬にして滅ぼす力を持つ。
それを防ぐために創始者は『聖女の魂』を縛り、執行者として繰り返し国内に転生するようにした。
『聖女の魂』に特殊な刻印を刻み、その刻印を持つ者がとある条件を満たすことで、聖石の力を行使することができるように設計したのだ。
ベルディモードは創始者が恐れた人災を防ぐため、聖石に判断のための基準を持たせることにした。
基準とは、国王が国民との国造りとともに定める法だ。
今まで聖女の判断で行っていた国への加護を、聖石の判断(=国民の総意)で行うようにする。
国とは生き物。
状況や時世により人々が求めるものは変化する。
それらに対応する為に、そして悪意のある煽動家に操られないように、情報を公開し冷静に議論できるような仕組みは必要だ。
加えて、国民に教育を施すのも重要だ。
それは何れ王や国民が決めるだろう。
人である以上、『知』という果実を得てしまったら、知識を欲するのは理だとベルディモードは思うから。
「調整が終わったら、アリアがいなくても『聖女チャンネル』ができるようにせねばな・・・」
言動や行い、それから生じる結果から悪意の有無を判断したり、情報を正しく集約・分析・解析・分類しているか精査したり、情報の深度を調整したり。
テスト結果を見つつ、ベルディモードはシステムの改変を楽しみながら行っていた。
「創始者は他人を信用しなかったが、子孫は他人と共に歩もうとしている。俺の介入を受け入れてまで」
くくっと昏い笑みを浮かべて、ベルディモードは独りごちた。
王太子による聖女解放が魂の解放まで行われていたら、アリアが死んだ後にミルトランド王国に聖女が生まれる確証は無くなる。
聖女解放に立ち会えたのは僥倖だが、数千年に渡り聖女が守ってきたこの地が、一人の男の愚かな行為で滅びるのはベルディモードにとって許せることではなかった。
ゆえに、ベルディモードは国王に協力を続けるのだ。
ベルディモードさんはAI的な何かを作ろうとしている模様です。




