脇役主人公の回想2
久しぶりの投稿になります、放置スミマセンデシタ。
その人はとにかく、美しかった。悲しいかな、私は目だけは一人前に肥えている自信があった。美しい兄弟姉妹たちのおかげで。
しかし、そんな私の常識を覆すほどその人は綺麗だった、美しかった。
「俺を知らないの?」
その人は困ったように言った。
「この屋敷の子…だよね、名前は?」
「サレ……」
ン、と言いかけてやめた。この人こそ私を知らないのだ。わざわざ本名を名乗って蔑まれる理由もない。伯爵家のサレンティアと言えば「出来損ない」として有名なのだ。
「……いえ、サレアと申します」
「サレア、かぁ……迷子かな?」
まぁそう思われても仕方ないだろう、私はスカートのすそを摘まんで俯く。高価なものとはいえ、明らかに着古されたドレス。誰がどう見てもレイカン伯爵家の娘には見えないだろう。
「……いえ、この屋敷の者です」
「見習いとか?まあいいや。俺はローウェンだよ」
「ロー、ウェン?」
ぴきっ、と固まる音がしたような気がした。そうか、この人が私の探していた唯一の同類……否、唯一の本当の兄。
「ローウェン、兄様……?」
「ッ、」
すると、その人はびく、と肩をはねさせた。不思議に思っていると、
「……お前も俺の兄弟、か…」
「え、」
びっくりするほどそれは冷たいまなざしだった。
あまりのことに戸惑ってまた固まってしまう私を置いて、その人はすたすたと歩いていき、風景に溶け込んで消えていってしまった。
何故そんな冷たい目で見られなければならないのか、考えてもわからなくて、でもこれで私に救いはないんだなと思い知らされて。
それが私と彼の最初で最後の出会いだった。
その7年後、騎士団の副団長になった彼は伯爵号継承権を放棄し、私も後を追うように伯爵家を出た。
「ッどうして、」
珍しく切羽詰まった声が出た。喉から絞り出すようなその声を出しながらもおそらく、私の表情筋は仕事をしていないことだろう。その姿はたいそう滑稽だろうが、目の前の彼は、兄は悲痛そうに私を見つめる。
「すまなかった」
「それしか言えないんですかッ!!?謝罪するくらいなら、どうして、あのとき、」
見捨てたんですか。
声にならなかった、そうだ、あの時伯爵家で一番の権力を持っていた兄が、一言でいい、私を庇ってくれたならば。
「呪われることも、なかったのに…!!こんな、体にならなくても、良かったのに!!!」
小さな叫びだった。しかしそれは部屋に響き渡るには十分だった。
しん、となった部屋で、ローウェン副騎士団長はぽつり、と言った。
「人違いだったんだ」
「……は、」
何を言っている、と目を見開いた。しかし彼は至極真面目な表情で続ける。
「俺は、知らなかったんだ。……実の妹が、虐げられている妹がどんな顔で、どんな人間なのか、知らなかったんだ」
「へ?」
「あの日…7年前のあの日あったとき、俺は君がサレンティアだと思っていなかった。腹違いの妹だろうと思ったんだ。……だって君が、サレアと名乗ったから」
「……そんなわけない、です」
馬鹿馬鹿しい、苦しい言い訳だと思った。何を言っているんだ、という気持ちで目を合わせる。
「サレアと言う姉妹なんて、いなかったはずです。あの家には」
そうだ、そんな人間伯爵家にいない、存在しない姉妹と人違いだったなんて笑わせないでほしい。
「どうか馬鹿だと罵ってくれ。俺は、……
伯爵家の人間の名前を、ほとんど覚えていなかったんだ。…いや、覚えていないんだ。」
「はぁ?」
空いた口がふさがらないとはまさにこのことである。
目の前の美青年は、ばつが悪そうに頬をかいていた。
本当に久しぶりなので描き方を忘れてしまいました……妙な部分があったら修正等していきたいと思っていますので、指摘などありましたら是非よろしくお願いします




