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脇役主人公の日常

起床は朝4時。

「サレンー!いつまで寝てるのっ!」

「ふぇーい」

メイドの部屋は基本的に狭い2人部屋だからいつも同室のリーアに起こしてもらっている。全くよくできた子で、しっかりしている。こういうのが主人公タイプというのだろうか。しかも美人なので、兄さんの嫁にほしいくらいだ、とあくびしながら思う。

「ほら早く着替えなさいって」

「ごめんごめん」

恐ろしい形相で睨まれたので、肩をすくめて素直に従う。

朝食をとる食堂は意外と広くてきれいで、こんなところを使用人が使っていいものかと思ってしまう。設備も整っているし、さすがお城の食堂である。でも国王とか王族の皆様方はもっと豪華なところでお食事なさるのかと思うと気が遠くなる。よく平民が王に見初められるみたいな恋物語があるけれど、やっぱり世界が違いすぎるよなぁ…とどうでもいいことを考えて短い朝の時間は終わる。

4時半、お勤め開始。

「サレン、リーア、ジュニファル、カラナの4人は庭掃除へ行くこと!6時にはホールにて、調理場を手伝えるように。怠慢は許しませんよっ」

「はいっ」

おっそろしいメイド長に命じられて、それぞれが分かれて仕事をする。まぁ、たいてい同室の子と二人一組の仕事だから、いつもリーアとはおんなじなんだけどね。


「ふぁーあ、眠いねえ、リーア」

「いつものことでしょ、ほら、口じゃなくて手を動かす」

「へいへい」

注意ならあっちに言ってほしいわ、と思うけどそうすればまた怒られるので黙って従っておく。美人は怒らせるとろくなことがないということは実家の姉妹たちを見ているのでよくわかっている。

それにしても、と持った箒を適当に動かしてぼんやりと後の2人を見る。なんなんだこの二人は。まるでやる気がないじゃないか。

「きゃぁ、見て見て!アイル様とローウェン様が手合わせしているわっ」

「騎士団の団長と副団長…二人とも美しいわぁ…」

…うるさいなぁもう。

溜め息をついてこっそりリーアを見る。リーアも気にはなっているようだが仕方ないと割り切ったように黙々と仕事をしていた。

はぁ、これだから。

ちらり、とさっきから絶賛おさぼり中のメイド二人が見ている方向を見る。

そこは騎士団の訓練場になっている。まだこんな早朝だというのにやってきているのは二人の会話からして騎士団長アイル・サンガルト様と、副団長ローウェン・レイカン様……、だろう。ここからは見えないが。仕事熱心なことだ。

確かに、二人ともかなりの美形である。というかそもそも騎士団事態美形だらけなのだから当たり前だろうが。

ふあーあ、と何回目かわからないあくびをかみ殺して視線を戻し、リーアと同じように掃除に集中する。

よくあることだ、いちいち気にしていられない。それに興味なんてない。顔がどれだけ美しくても見る気にはなれないな、と思う。だってどうせあっちはただの下っ端だと思って眼中にも入れていないような輩なんだ、そんな奴らに恋焦がれて何が楽しいのか、いや思うのは勝手だけど仕事してくれないか。そう思っていたらいつの間にか手が止まってしまっていてリーアにはたかれた。


だいたい綺麗になっただろうとリーアから合格点をもらうとちょうど5時45分と少々危ない時間になってしまった。畜生サボり魔たちめ、代わりにやってあげてたからこんなに時間がかかったんだぞと心の中で言っておく。

調理場はこの時間は忙しい。王族の皆さんはそろって8時に朝食をとるので、その用意に追われるのだ。もちろん、メイドは調理の手伝いなどできないが、材料の準備、食器運びなどをやらされる。

「大皿10枚お願い!」

「カルク8個とビリュウ鳥の卵6玉早く!」

あわただしく注文が飛び交うものだから、大変なんてものじゃない。


そうして11時の後片付け終了とともに訪れる2時間の休憩。昼食の用意は交代したメイドに任せて自分の昼食をとり、各々が好きに休んでいる。

まぁそのほとんどはさっきの二人みたいに騎士団の訓練の見学や、あわよくば美形王子を見ようと食堂に向かうかだ。どちらも不純な動機だが、それもいつものことである。当然のように私は見たい相手がいないので庭をぶらぶらするのが日常である。女の敵意識は怖いのでなるべく騒ぎの大きい方向には近寄らないように。

はぁ、次は何の仕事だろうか。憂鬱に芝生の上にしゃがみ込むと目を閉じた。面倒くさいなぁ本当に。メイドなんて。

だけれどもこれを受け入れたのは私だった。家の権力争いに巻き込まれたくないといって、体よく逃げ出した代わりにこれだ。

それでも割と楽しんでいるからいいのだけれども。

しばらくそうしてから、さて、と立ち上がる。午後の仕事に行かなければ。



これが、私__________________サレン・アノルバーの日常である。

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