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脇役主人公の解析

「ふあーあ」

「あくび38回目っ!いいからほら、さっさと絞って雑巾がけ!」

「ふぁーい」

ていうか数えてたのかこの野郎。お前も集中しろよ__________とはリーアには言えないので、ちゃんと従う。

やっぱり朝方勤務は辛いなぁ、と凝ってしまった肩をよじる。疲れた。

濡らした雑巾をもってやれと言われた場所を見回してみると、溜め息を抑えられそうになかった。今日はメイド長から午前中のお掃除を命令された。そう、ここの廊下全体をピカピカに磨けと。おかげでこっちは腰がつらい。

今日も憂鬱な気分だ、なんて思っていると、

「ほら、さっさとしなさいっ」

「はいはーい、っと」

またまた叱咤の声が飛んできた。ああもう、ほんとにリーアは真面目だから……サボるなんて考えはなから無いんだろう。どうせたくさんの人に踏まれてすぐに汚れてしまうし、午後にはほかのメイドがもう一度掃除しなければならないようなところなのに。

まぁ、そういうところが好きだから、一緒にやっていけるんだけど。




「あー、つっかれたーーー」

誰もいない芝生の上で思いっきり叫んでみる。

肩こりや腰の痛みに、もういい加減慣れろよって言いたいけどまだ私メイド初めて3か月もたっていないや。そりゃ辛いわけだ。

私は通常ならメイド業につくなんて考えられないくらいのいい家柄の娘だった。そりゃもう、この城の王様王子様みたいなほどではなくても貴族では上流中の上級クラス。たくさんの使用人がいて、裕福な暮らしをしていた自覚はある。

だからこそこんなにも体が悲鳴を上げるのだろう、それは仕方がないことだと私は割り切ることにした。

「もうちょっと頑張ろう」

声に出してみる。昔亡くなった母が言っていた、言葉には魂が宿ると、だから、しっかりと声に出したその思いが実るといい。

さてもうすぐお昼の休憩も終わるか。そう思って重い腰を上げた時、

「ブフッ!」

「……?」

噴き出すような声がして、思わずピタッと止まり、その声の主を探す。

「……誰?」

そして、今まで誰もいないと思っていた庭の、木陰にうずくまる人を見つけた。

「……失礼した」

いやいやかっこつけて言っても無駄ですから。なに笑ってんですか。

その人はよく見ると、騎士のようだった。ただの使用人や庭師にしては筋肉の付き方が違う。今日は非番の人なのか、ワイシャツにジーパン、スニーカーと青年らしい恰好だった。そして美形だ。

「何に笑っていらっしゃるんですか騎士様。」

あ、いけない。たとえ平の騎士といえども、相手は私のような使用人とは違うのだ。思わずちょっとイラッとしたのが冷たく声音に出てしまったが、無礼と思われてメイド長に言われてしまったらどうしようか。ものすごく怒った顔が容易に想像できた。

「………」

目の前の騎士さんもそれに少し驚いているようで、しばし沈黙が訪れた。

………仕方ない。ここは素直に私が謝るべきだろう、立場的に。

「すみませっ……」

「お前は、」

さえぎられた。え、と思って見返すと、騎士さんはそんなこと気にもならないというようにほんの少し目を見開いていった。

「俺のこと、知らないのか?」

「へ?」

ぽかん、と口が開いたままになってしまった。え?どういうこと?

「私は騎士様の名前と顔をすべて覚えているわけではないので・・・」

すみません、とつづけた私に今度は彼方がぽかんとする。

……何なんだ?こういう意味ではないのだろうか。

戸惑う私に、騎士さんは急に笑い出す。

「ククククク……そうか、そうか……」

……何かしきりに一人で自己完結されているようだ。え?わたしもういいかな?なんか一人で満足されてるし、もうすぐ休憩時間終わるし。なんかこの空気の中は居心地が悪い。

「名は」

「サレンです」

……あ。

条件反射で即答してしまった。

変に思われていないだろうかと顔を窺うと、その心配は無用だったようで、騎士さんは口角を上げていた。

美形が笑うと本当に絵になるよなー、なんてどうでもいいことを考えていると、その弧を描いた口がとんでもない言葉を吐いた。

「俺の名はなぁ、アイルだ。アイル・サンガルト。

お前も、名前ぐらいは聞いたことがあるだろう?」

「……え、」


その瞬間、いつかのフェンアルトだかファンファータだかの言葉が蘇った。

『きゃぁぁあああ、見て、アルト様とローウェン様が……』

『騎士団の団長と副団長……』


背筋が凍るような気分だった。

震える指先で私は目の前のzン物に人差し指を突きつける。

「き、き、き、」

「き?」

騎士さん___________改め、アルト様は悪戯っぽく小首をかしげる。くそう男のくせにかわいい……じゃなくて、

「き、騎士団長様ぁ!!!????」


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