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幕間2 聖女エマ・ライオネル ②

幕間2続きです。

♢♢♢♢


 入学式後の教室で、

「ルーカス殿下!」

と呼びかけた私に、

「人違いではありませんか?」

と返された時の衝撃!


 ルーカス第二王子の隣に、いるはずのないピーター・スコットが普通にいること!

 ルーカスあんた、「第二王子になってから、仲の良かったピーターと疎遠になってしまった」って寂しそうに言ってたじゃない!ゲームの中で!!


 そもそも、エマとルーカス第二王子が同じクラスなのもおかしい。本来エマは、クリストファー第一王子と同じクラスのはずなのに。


 おかしい……私の知っている話と違う……そもそも、あんな特徴的な見た目で、人違いのはずがない。そう思っていると、ルーカス第二王子から、さらなる爆弾発言が投下された。


「俺はピーター様の従者で……」


 従者!?王子が従者!!??


「平民ですから、姓はありません」


 平民!?なんで!!??


 私は混乱した頭の中で、なんで?どういうこと!?を繰り返していた。そして唐突に、あることに思い至る。


 そういえば、ゲーム内でルーカス第二王子が発見されるのは、今から二ヶ月前にあった、クリストファー第一王子の生誕祭でじゃなかったか?

 私(今回のエマ)はあの会で社交界デビューだったから、そこでルーカス王子が発見されたのなら、騒ぎになって知っているはず。……でも、彼はあの会にいなかった。

 そうだ!そもそも、私が、エマがあの会に出席するのがおかしかったんだ!だって本来のエマは、孤児から伯爵令嬢になってまだ一ヶ月くらいで、学園入学前に社交界デビューは間に合わなかったはずだもの。


 自分が正史を変えてしまった事実に、私は頭を抱えていた。

 しかし、目の前の男爵子息ピーターと従者ルーカスを見て、ふと考えを改める。


 今の状況の方が、二人にとってはいいんじゃない?


 だって、ゲーム内の二人は、お互い相手のことを気にしながらも、気軽に話すことの出来ない関係になってしまっていた。ルーカス王子は最近見つかった第二王子として嬉しくないほど注目を集めていたし、クラスからも孤立気味だった。

 それが今は、二人とも一緒にいるのが当たり前かのような仲の良さだし、クラスの輪の中心にいる。


 これは……いい方に改変したということで、このまま攻略を進めてみよう。


 ルーカス第二王子ルートならば、多少ブレがあってもトゥルーエンドまで持っていく自信はあったし、悲しむ人は少ない方がいい。ならばこのまま、ルーカスルートに乗るまでの一年間を過ごそう。

 攻略対象者のルートに乗るために最も大切なのは、狙っている彼と過ごす時間の長さだ。幸い、ルーカスとは同じクラスになれたため、ルートに乗るのは容易いだろう。


 そうと決まれば、私は頭を切り替えて、平民のルーカスと仲良くなろうと決めた。


 さて、ルーカスやピーターとは順調に友達くらいにはなれたと思うが、問題はマリアンヌになかなか出会えないことだった。

 クリストファー第一王子ルートなら簡単に出会えたであろうマリアンヌも、ルーカスルートだと出会う機会に恵まれない。だけどマリアンヌが戦闘に協力してくれないと、トゥルーエンドへ行ける確率が大幅に下がってしまう。

 なんとかしてマリアンヌと接点を持とうと、どのクラスに在籍しているのか調べたりしているが、必ずと言っていいほど邪魔が入るのだ。ーー何故か、クリストファー第一王子の。


 私は休憩時間の度に教室を出てマリアンヌを探していたが、その度にクリストファー王子が現れ、何かと話しかけてくるのだ。

 攻略する気が無いとはいえ、一応王子だし、こちらから無碍には出来ない。そう思って相手をしていると、何故かますます気に入られてしまい、簡単に好感度の上がるイベントが起きてしまう。

 元々、ゲームでは第一王子の好感度が一番上がり易く設定されていたが、ここまでとは思わなかった。クラスも違うのにこの出会い率。このままでは第一王子ルートに入ってしまう……


 しかも、第一王子ルートに入りそうなくらいクリストファー王子と会っているのに、肝心のマリアンヌには一度も会えないのだ。

 ゲームのマリアンヌだったら、エマがしょっちゅうクリストファー王子に会っていたら、嫉妬して、忠告と言う名の宣戦布告をしてきそうなものなのに。


 入学からひと月が経とうという頃、なんとかマリアンヌのクラスがクリストファー殿下と同じであることを突き止めた。

 ダメ元で自分のクラスメイトの女子に訊いてみたら、あっさり分かって拍子抜けしてしまった。初めから、自分で探そうとせずに人に訊けば良かった。


 こうしてようやく、マリアンヌと接点を持つための足掛かりを見つけてホッとしていたのも束の間、クリストファー第一王子がまたもや余計なことをしてくれた。

 私がルーカスとの親密度を上げるため、彼らと昼食を一緒にしようとしているところへやって来て、突然彼を抱きしめたのだ。


 いや、気持ちは分かるよ?生き別れになっていた、可愛い弟を発見したんだもんね。でもそれ、教室の真ん中で行うことかなぁ!?


 そういえばこのエピソードも、本来はクリストファー第一王子の生誕祭の時に終わらせているはずのものだ。それをこんな、日常の一幕でやってみせる!?


 シナリオの順番がぐちゃぐちゃすぎて、頭が痛くなってきた。私は本当に、ルーカスルートのトゥルーエンドに向かえるのだろうか。


 とりあえず、騒然としたクラスの状況と、何が起こったか理解していないルーカスのフォローをするため、クリストファー王子をルーカスから引き剥がした。

 そして、なんとか話の場をプライベートサロンに持ち込むことに成功する。


「殿下、ルーカスは記憶を失っているようです」


 移動間際に、クリストファー第一王子の耳元でそう囁くと、彼はルーカスの反応の意味を理解してコクリと頷いた。


 その後のプライベートサロンでは、クリストファー第一王子がルーカスの正体について話を進めていく。

 ゲーム内知識として、ルーカスが、記憶喪失なのに第二王子の立場になっていて苦しんでいるのを知っていたため、ルーカスの不安な気持ちや疑問を代弁する。と同時に、クリストファー第一王子への態度を少々悪目にしてみたが、好感度調整は上手くいっただろうか?


 ルーカスの記憶障害がゲームと同じく特殊であることも確認できた。これはルーカスルートでかなり大事な設定のため、ここがゲームと同じことが知れたのは大きい。


 今日一日で、シナリオがかなり進んだように思う。


 時系列はおかしいが、ルーカス第二王子ルートのシナリオが展開されていたし、今のところ攻略はいい感じだと思う。ただ、ルーカス第二王子ルートに行こうとしている割には、クリストファー第一王子が出しゃばって来ているのが不安ではあるが。


 家に帰ったら、現在の状況をまとめよう。

 目下、次の目標は、マリアンヌと接触することだ。


 私はルーカスルートのトゥルーエンドに向けて、今後も頑張っていこうと気合を入れた。


幕間2終わりです。

次回から第三章です。

第三章はマリアンヌ視点の予定です。


お読み頂きありがとうございます。

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