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遊園地を載せた巨大船が停泊した皇都の港でも、プラズマキャノンが破壊される音は、聞こえていた。
しかし、先ほどとは打って変わり、そこには、人っ子一人おらず、閑散としていた。
「とうとう、やっちまったか……」
険しい顔で、金髪長身の青年が沖合いの船を睨んだ。
「この轟音……おそらく、司様が……ですね」
笑顔を引きつらせ、白い髪を高々と結い上げた少女が言った。
と、その時、巨大船から一つの影が放物線を描きながら、港へ迫り、
ずぅんっ!
と音とともに、覇と聖の目の前に降り立った。それは、
「は~い! みんなも逃げてたのね!」
「つ、司じゃねぇか!」
「司様! いったいどうして!」
驚く二人の言葉どおり、それは、長い金髪を邪魔にならないようにまとめた美しい少女―司であった。
「どうしたって……聖こそどうしたの? その格好」
「き、聞かないで下さい」
聖の悔しそうな声に殺気を感じ、覇が慌てて話題を変える。
「ところでよ! 司、お前、やっぱ……」
「え? ええ、もちろん! あんな悪質遊園地、木っ端微塵に殴ってきたわよ」
さらっと答える司に、覇と聖が頭を抱える。
「やっぱりかあぁぁぁぁっ!」
「ど、どうするんですかぁ!……そうだ! 奉は?
司様、奉は一緒じゃないんですか?」
「奉なら、ほら」
と言って、司は、自分の背中で目を回している奉を見せた。
「ふっふ~ん! あたしに抜かりはないの!」
「で、ですが、いったいどうするつもりですか?
あの船の魔力炉の暴走は、少なくともこの港を壊滅させます!」
「匠の計算だ。多分、間違いねぇぞ。
あいつの話だと、プラズマキャノンを破壊してから、ジャスト五分で魔力炉は、大爆発を引き起こす。
とりあえず、要と妖、魂と巫が港から人を追い出し、完全封鎖している。
匠は、炉の暴走の規模をリアルタイムで計算中。
帝と虚は、その情報を元に防御結界を作成。
斎は、その二人の力を増幅しているぜ」
「それでも防ぎきれる保障はありません。
予想されるタイムリミットまで、あと三……いえ、二分……このままじゃ、皇都は……」
「大丈夫だって! 言ったでしょ?
あたしに抜かりはないの!」
そう言って、司は、おんぶ紐を解いて、奉を背中からおろすと、その首根っこを掴んで身構えた。
「ちょ、ちょっと待て! 司、お前、まさか!」
「聖ぃ~! カウントダウン、プリーズ!」
慌てる覇を無視して、司は、聖に秒読みを促す。
「で、ですが、司様、いったい、なにを……」
「ひ・じ・りぃ~! ぷりぃ~ず!」
向けられた怖い笑顔に、聖は、コクコクとうなずいた。
「い、いきます。一分前……」
「おい、司! やば過ぎる! お前、そんなことして、もし、奉に何かありでもしたら……」
「大丈夫って言ってんでしょ!
そんなに心配なら、神様にでも祈ってたら?」
「お、お前がそゆこと言うか?
頼むから、やめてくれ! な!」
「三十秒前です」
「平気だって! あたし、信じてるもん、奉のこと」
「司……お前……」
自分がしようとしていること、そして、奉のことを信じて疑わない司の姿に、覇は、何も言うことができなかった。
「……ぅえ? ええ? あ、あれ、ここ……どこ?」
ようやく目を覚ました奉がキョトキョトと周囲を見回した。
「起きたわね、奉。
これから、あんたを大爆発予定のあの船に向けて、ぶん投げるから、あと、よろしくね」
「ふえぇっ? ぶ、ぶん投げって……ええぇっ!」
「十五秒前! カウントダウン行きます! 十、九、八、七……」
「つ、司ちゃん! なんなの、いったい! ボク、状況分かんな……」
「いいぃ~から!
行くわよ! 『絶対防御! 奉バリアー!』」
「……四、三、二、一、零!」
聖が言い終えるが早いか、沖合いの船から閃光が走り、爆音が響いた!
ごおおおおぉぉぉぉぉんっ!
それと同時に、司は、足を高く上げ、右手で首根っこ掴んだ奉を力任せに投げ飛ばした。
「どぅおおおおおおぉぉぉぉぉりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「いぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ビィュンッ!と宙を飛び、奉が広がるドーム状の閃光に突っ込んでいく。
その瞬間、
きゅぅぅぅぅぅん ぎぃむっ! こおぉっ!
爆発力を含んだ閃光は、突如、収束!
そして、その『力』の方向を天へと向けて解き放ち、あの巨大船も含め、跡形もなく消え去った。
「ふっふ~。だぁい成功!」
大声で、ガッツポーズを決める司を、覇と聖は、目を点にして、呆然と見ていた。
そして、沖合いでは、気絶した奉がプカプカと波間に浮かんでいた。




