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BLESS OF HEAVEN  作者: manna
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-9-

「まぁ~つぅ~りぃ~」


がぃんっ!


「まぁ~つぅ~りぃ~」


がぃんっ!


「まぁ~つぅ~りぃ~」


がぃんっ!


 地の底から響くような呼び声と金属板を踏み叩く音が一定間隔で、しかも、着実に迫ってくるのを、巨大観覧車が姿を変えたプラズマキャノンの天辺で、奉は、恐怖に震えながら聞いていた。

 飛び降りようにも、ここは天辺。

 さっきのジェットコースターとは、高さが違う。

 いくら、奉でも無事ではすまないだろう。

 痛さにうずくまってるところを捕まえられたら、すべてが終わる。

 しかし、このまま、ここにいてはいけないと、タマシイが叫んでいる。


 出会ったときから怖かった。

 怖かったので、なりふりかまわず一目散に逃げ出した。

 逃げ出したら、追いかけてきた。

 追いかけてきたから、逃げ続けた。

 捕まったら、何かが変わる気がして、それがとても怖かった。


「ど、どーしよ……どーしよぉ!」


 奉は、ただ、オロオロするしかなかった。



 上から耳に届くガタガタと震える音。

 音の重さ、振動の間隔。

 間違いない。

 奉は、確かにこの上にいる。


 出会って、微笑んだ瞬間に逃げられた。

 逃げられたから、むきになって追いかけた。

 追いかけたら、さらにダッシュされた。

 こっちも負けじと、ダッシュしたら、だんだん楽しくなっていた。


 二人とも理由はわからない。

 分からないけど、それは、本能か、はたまた、前世からの因縁か。

 二人は、追うものと追われるものなのであった。



がぃんっ!


「ひぃっ!」


 金属板を踏み叩く音と、奉の短い悲鳴が蒼空に響く。


「ここまでのようね、奉ぃ」


 獲物を追い詰める猫のような目で、司は、にんまりと笑った。

「よくも、まあ、こんなことまで逃げてきたわね。

 あんたのせいで、あたし、いったいいくつのアトラクション破壊したと思ってんの?」


「そ、そんなの……つ、司ちゃんが追っかけてくるからいけないん……」


「あんたが逃げるからいけないの!

 まあ、いいわ。ここで、遊べなかった分のツケ、あんたでたっぷり払って……きゃっ、ちょ、な、なにっ?」


 突然、プラズマキャノンがもの凄い光を放ち、驚く司。

 見ると、外円に等間隔に設置された三つの発射管が白い光を放ち、中心に配された巨大な光の精霊石に注いでいた。


「なによ、これ! これ、観覧車じゃなかったの?」


「き、気付いてなかったの? たぶん、これ、魔導兵器だよ」


「嘘っ!」


 慌てて、司は身を乗り出して、その全貌を見た。


「プラズマ発生装置? 光撃魔術も加わってるし……しかも、目標って……」


「ワス・ウォーディナ帝国首都・皇都アネス・ゴルド、だね」


「いったい、どういうことよ! ここって、遊園地じゃないの?」


「遊園地……のはずだよね。ボク、ちゃんとチラシ見てきたし」


「あたしも……でも、実際は、こんなんなんて……まさか、どっかの帝国の属国が、懲りずに侵攻してきたとか?」


 言って、司は、はあぁっっとため息をついて、がっくりと肩を落とした。


「つ、司ちゃん? あの、大丈夫?」


 あまりの落ち込みように、奉は、心配そうに声をかけた。


「……せっかく楽しみしてたのに……純真な子どもの夢の舞台をよくも踏みにじってくれたぁねぇ!」


「アトラクション踏みにじった司ちゃんには、言われたくないと思うな」


「なんか言った、奉?」


 ぎんっと睨まれ、奉は、ぶんぶんと首を横に振りまくった。


「とにかく! 潰すわよ」


 短く言って、司は、宙に身を躍らせた。


「司ちゃんっ? む、無茶だ!」


「くっ、ああああぁぁぁぁっ!」


 叫ぶ奉の声を上に聞きながら、飛び降りた司だったが、高出力の電磁波をモロに浴び、苦痛に叫んだ。


「もう、考えなしなんだから……『力』よ……」


 奉は、目を閉じ、意識を集中させる。


 すると、突然、電磁波の出力が弱まり、苦痛から解放された司は、外円の真下で電磁波を放つ発射管を蹴り砕いた。


「でぃやあぁぁぁぁぁっ!」


 そして、今度は、蹴り砕いた発射管を足場に飛び上がり、右上方の発射管を拳で砕き、さらに飛んで、左上方の発射管を打ち砕いた。


「あ、相変わらずの凄まじい身体能力……心配して損したかも」


 常識はずれの動きを見せる司に、驚きを通り越して、奉は、呆れた声を出す。


きゅぃぃぃんっ!


 そのとき、中心の精霊石が白く輝いた。


「な、なんでよ! 発射管は潰したってのに……」


 打ち砕いた発射管の残骸を足場に、司は、焦りの声を上げる。


「司ちゃ~んっ! 聞こえる~っ! 聞こえたら、こっちまであがってきて!」


「わ、わかったっ!」


 上から奉の呼ぶ声に応え、司は、昇るときと同じ要領で天辺まで駆け上がる。


「来たわよ。どうしたの?」


 息も切らさず、即座に尋ねる司に、奉は、ポケットからチラシを取り出した。


「ここ見て。この船の見取り図だよ。

 中央中心に動力室……魔力炉があるところだね。

 そして、その真上には……」


「! これって、この巨大観覧車の位置じゃない!」


「そう。この魔導兵器が起動しているのも、電磁波の照射は追いつかなくても、この炉に直結しているからだよ」


「どっちにしろ、これを全体を壊さなくちゃ、作動しっぱなしってわけ?

 しょうがないわね。あたしの全『力』を持って、叩き潰して……」


「で、でも、司ちゃん、ホントにできる?


 匠ちゃんの武器も他のみんなのサポートもないんだよ?」


「やるしかないわ。

 ここで、何もしなかったら、皇都は、壊滅しかねないわ。

 やれるかどうか分からないけど……帝国の守護を預かる身としては、やるしかないのよ」


「けど、もし、兵器の破壊に成功しても、魔力炉の行き場の失ったエネルギーで起こる爆発は、どうするの?」


「ああ、それに関しては、考えがあるから、大丈夫。

 じゃ、奉、あたしの背中に乗って」


「え?」


「なにしてんのよ。

 あんたをここに置いたまんま、ぶち壊すわけにいかないでしょ?

 さっさと乗る乗る!」


「う、うん」


 せかされ、奉は、おずおずと司の背中に背負われ、どこからか取り出した帯で固定された。

 ドクンドクンッと司の鼓動が奉の身体に伝わってくる。

 そっと耳を寄せて聞くと、自分の鼓動とはまったく合わないことに気付いた。

 司が鳴れば、追いかけるように奉の鼓動がドクンッと響き、それは、まるで、互いに鼓動を補い合うようなリズムだった。


「奉、さっきは、ありがと」


「え? なんだっけ?」


「だ、だから、さっき、あんたが電磁波を……

 ああ! もうどうでもいい! いくわよ! はあぁ……」


 少し頬を赤らめた司が深く呼吸を繰り返し、精神を集中させる。

 すると、その身体から白く輝く金色の光が湯気のように立ち昇り、全身をく覆った。


(なに……これ……いつもと違う。

 いつもより、『気』が高まって……こんなの初めて……どんどん、どんどん『力』が湧いてくる)


 異様な気の高まりを感じつつ、司は、右手を高く掲げた。

 すると、司がイメージしたとおり、硬く握られた右の拳に全身を覆う光が収束し、まばゆいばかりの光が小さな太陽のように輝いた。


「いける! たあっ!」


 目をカッと見開き、司は、再びその身を宙に躍らせる。

 かなりのスピードで、真下に降りて、中心の白く輝く精霊石の位置までくると、気合とともに白金に光る拳を叩き込んだ!


「だああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


ぴぎぃぃぃっ!


 拳がヒットした場所から巨大精霊石に亀裂が蜘蛛の巣状に広がり、次の瞬間、


ごがぉぉぉぉぉんっ!


 巨大な観覧車が変形した魔導兵器のそのすべてが消し飛んだ!

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