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落ちこぼれ能力者に平穏は訪れない  作者: 戸野牧こと
2 学校で気を抜くと殺られる
11/59

落ちこぼれは優等生を止められない

お待たせしました。

本当に気まぐれ更新になってしまっている……

ゆっくりですが先には進めるので、のんびり待っていただけるとうれしいです。

 先に近くに土を用意しておいたおかげで、かなり深かった落とし穴は10分程度で人が這い上がれるくらいの深さになった。

 ここまでやる時間は意外と短かったな。もう少しゆっくりやってもよかったんだけど……



 ん?



 今なんか嫌な音がした気がする。

 ()()()の足音みたいな……

 いやこれ絶対そうだ。こっちに近づいて来てる。

 うん、早くしないと()()()が来るからこいつらさっさと逃がしてやろう。

 俺は腕組みをしてサボり組を振り返り、声をかけた。


「さすがにもう懲りたろ? 俺に絡むのはとにかく、授業サボるのはやめろよ」

「絶対イヤだ」

「誰が落ちこぼれの言うことなんざ聞くかよ」

「……またこんな風になるかもしれなくても?」

「当然」

「今回は運が悪かっただけだ」


 ここまでやってもまだバカなことをほざいている奴らから目線をそらし、俺は大きなため息をつく。ったく、腹くくって反省しろよ。

 うーん、この状態で一体あと何分間もたせることができるか___



 突然。


「……あんたら一体何やってんの」



 ……あっもう無理だわ。



 俺の背後から聞こえた一言で空気が凍る。

 あーラスボス来ちまった。来る前に逃がしてやろうと思ってたのに、つくづくバカな奴らだよ。



「先に言っとくが、俺にこいつを止められた試しないからな。残念だが腹くくれ」


 ため息をつき、サボり組に向けて言う。

 ……声のした方、つまり俺の背後には柚木。怒り心頭、といった表情で仁王立ちしている。あちゃー、目が完全に据わっている。

 般若のようなってのはこういう顔のこと言うんだろうな、と俺がのんきに考えていると。


 柚木が超科学力(ちから)全開で辺りの落ち葉を持ち上げる。

 その人差し指はサボり組に向いている。



 柚木は正義感が強くてサボりなんかは絶対に許さない。

 そのため俺としてはああやっぱり、な展開ではあるが。



 サボり組には想定外だったようだ。

 泡を食って立ちあがり、逃げ出そうとする。

 だが遅い。



「全員くたばれ」



 うえー、声がいつもよりワントーン低くなってるよ。

 死神の最期通告(柚木の言葉)と共に、巨大な落ち葉のボールがサボり組を襲う。おお怖。


 軽いものをまとめて1つにするのは、大量の小さなものを大雑把に操ることよりも技量が必要とされる。ここで落ち葉を刃物代わりに使うのではなく、葉のボールを一瞬で作って奴らを押し倒している辺りからも、柚木の超科学力(ちから)がかなり高いことがうかがえる。


 サボり組が全員倒れたのを見届けて、俺は1つため息をつく。

 俺があれだけ時間をかけた相手を一瞬で……。 ていうか、これ後始末どうするんだよ……。

 と、いつの間にか俺の前にいた柚木が俺を振り返る。

 嫌な予感がする。


「翔弥、行くよ」

「……どこに」

「わかってるんでしょ、先生のとこ」


 ほらきた。

 こいつ俺が職員全般苦手なの知っててこういうこと言うから面倒。


「もめ事関わりたくないんだって」

「騒ぎ大きくした本人がよく言うよ」


 ……返す言葉もございません。無言で頭を下げる。


「それに私が超科学力(ちから)使ったってバレたら良くないし」

「それは自業自得___待て撤回するからその拳を下ろせ」


 どうどう、と両手を前に出して柚木をなだめる。油断も隙もあったもんじゃない。


 この学内で実習時間以外に超科学力を使うことは、一応ルール上は問題ない。普通の能力者の超科学力(ちから)は人に危害を与えられるほど強くはないからな。

 ただし、俺たちが在籍する最高クラスの上位数名は別。

 全力でやったら相手に怪我させるのはもちろん、命まで奪いかねない実力者揃い。

 念のために、と対人での超科学力(ちから)の行使を禁止されている(自分や物にかけるのはOK)。

 ちなみに、学外で人に向けて行使すると、学生のうちは誰であろうと処罰の対象。公共の場で超科学力(ちから)を使うには、この養成学校卒業時に得られる許可証が必要なのだ。



 長くなってしまった。



 そんなわけで、この状況は完全にアウト。ここで柚木が超科学力(ちから)を使ったとバレるのは非常にまずい。

 ただなあ。


「どうやってごまかすんだよコレ」


 ただの落ち葉でこれだけの威力を出せるのは、この学校が実力者揃いと言えど片手で数えるほど。

 事件(もうこれ立派に事件だよな)が起こったときにその実力者それぞれがいた場所を考えると、最終的に柚木にたどり着くのは必然。

 超科学力(ちから)を行使した痕も残っているし、どう考えても柚木の仕業なのは隠しようがない。


 先ほどの俺の一言にも柚木はまったく動じていない。

 どころか、ものすごくいい笑顔。普段の笑顔の5割増しくらいに。


 ……あ、この顔知ってる。


「全部翔弥のせいにするから」


 やっぱり。

 柚木がこの顔をするのは、たいてい何か悪巧みを思いついたときなんだよな。

 今回は「責任を全部俺に押し付ける」だったわけか。


 いやでもさすがに無理だろ。

 俺が超科学力(ちから)を使えないのは周知の事実。

 その上、この場所にこんなに柚木の超科学力(ちから)の痕跡が残っていたら絶対ごまかせない___



「柚木さん、山崎さん、どうしたんですか? こんな時間まで」

「あ、田中さん」


 なんと、このタイミングで田中さんがやってきた。

 ご丁寧に教職員の皆様も一緒に。そうか、そういえば田中さん応援呼びに行ったんだったか。すっかり忘れてた。

 こっちから教員の方に出向く必要はなくなったわけだが、面倒なことが残っていることには変わりがない。


 思わず頭をかかえる俺の前で、田中さんも教職員の皆様も、目の前の光景を見て目を丸くしている。


「柚木、山崎、これは一体___」

「私が来たときにはこうなってました」


 おい柚木ぃぃぃぃ!!

 超科学の教授の問いかけにしれっと答えた柚木に怒鳴りそうになるのを気力で抑える。

 落ち着こう、さすがに状況が状況だし、いくら俺が落ちこぼれで柚木が優等生とはいえ柚木の言葉が丸々そのまま受け入れられることはないはず___




「柚木、そうなのか?」

「これは一大事ですよ」

「山崎くんにこんな力があったなんて」

「いや、彼には不可能では」

「確かに。山崎くんは超科学力(ちから)を使えないですからな」

「そこに倒れている彼らの仕業か?」

「彼らにこんな力はないでしょう」

「では一体何が」

超科学力(ちから)以外の何かを利用したのでは?」

「そうだ、そうに違いない」

「でないとこの状況を説明できませんもの」


 えええ嘘だろ!?

 いやいや、何当事者放置で話進めてるわけ?

 柚木(こいつ)だって! どう見ても超科学力のせいでこうなってるじゃないか!


 ……という反論は胸に収める。過去の経験から、俺の言い分は聞き入れてもらえないことが分かりきっているからな。

 あと、隣の柚木の笑顔が怖い。逆らったら多分殺される。



 意外なことに、教授陣の話は思ったよりは俺を責める方向にはなっていない。田中さんの話と落とし穴などの状況から、かなり悪質なことをしていたサボり組の処分をどうするかに話が進んでいるようだ。

 こうなると俺たちの出る幕はない。


「……帰るか」

「だね」


 迷惑をかけまくった田中さんにお礼を言い、俺たちは帰途に着いた。田中さんは教授陣と一緒に後片付けをするらしい。仕事とは言え大変だろうなあ。


 成り行きではあるが完璧にのしてしまったサボり組には申し訳ないことをした、などと考えていると、柚木が「申し訳ないとか思う必要ないからね。翔弥はむしろ被害者だから」と不機嫌そうに言ってきた。思わず柚木の顔をじっと見る。


「……何?」


 柚木が数歩後ずさる。ここまで露骨に避けられるとさすがに悲しくなるんだけど。


「……いや、何も言ってないのによくわかったなーと」

「私がどれだけ翔弥と一緒にいたと思ってんの」


 今度は思いっきりにらまれた。なんでだ、俺何かまずいことしたっけ?

 柚木こいつの考えることは時々よくわからない。

 まあ、凡人どころか落ちこぼれの俺に優等生のことなんて理解できないか。

 ため息が出る。今日はずっとため息をついている気がするな。


 やれやれ、今日は色々あって本当に疲れた。

 朝から襲撃されたり、リヤカー隠されたと思ったらいきなりプチバトルしたり、騒動の犯人に仕立てあげられたり___




 あ。




 そういえば襲撃されたんだった。

 またため息つきたくなる。


「どうしたの?」

「うわっ…… おどかすなよ」


 気づいたら柚木の顔がすぐ近くに迫っていた。びっくりして思わず数歩後ずさる。


「そんな露骨に避けなくても……。 なんかあったの?」

「いやまあ色々と……うん? 前半なんて?」

「え、何のこと?」


 なぜだか無理して笑っている感じの柚木にこんな面倒な話をできるわけもないので、モヤモヤは腹におさめる。







 ……襲撃犯、どうしよう。


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