第二章‐13
大型区域ではやはり、大型のモンストラクターが多く存在した。自由に徘徊するものやヘリオスへ向かうもの。そのいずれもが見知ったモンストラクターよりも力を増していて、討伐には大きく時間を取られることとなった。太陽が傾き、活動時間が終わろうとしていても油断はできず、ヘリオスへ向かうものがいないか警戒していた。
「戻ろう。これ以上長居すれば太陽が沈み切ってしまう」
スラッグはホイーラーをヘリオス側へ向ける。ホイーラーも他のモンストラクター同様、活動できるのは太陽が照らしている間だけだ。沈みきる前に最低でも小型区域までは戻らなくては帰還が難しい。俺達はヘリオスの方向へホイーラーを走らせた。
その道中、やはり多くのモンストラクターと遭遇する。連中もこの時間帯ではヘリオスへ侵攻する気はないのか、ほとんどは俺達を狙って動いてくる。だから質が悪い。ほどなく太陽が見えなくなるというのに、未だ中型区域の途中だ、急がなければ暗い森を徒歩で外にでなければいけなくなる。
「なぁに、モンストラクターが活動しなければ森は怖くない、気楽に行こうじゃないか」
俺の横を行くスナールはそう言うが、小型区域でもそれなりに広く、暗い森をずっと歩くのはあまり気乗りしない。もしかしたらモンストラクターのスペックがまた一段と上がって夜間でも活動可能となり夜の戦闘に慣れていない俺達を皆殺しにするかもしれないのだ。朝に二人の犠牲を出したあと、俺達は無事に八人全員生き残る事ができている。これ以上減らすわけにはいかない。
「モンストラクターが出てこない……今日の活動は終わりってわけだな」
まだ太陽は沈み切っていないものの、モンストラクターの姿はどこにもない。寝床へ帰るためか。ともかく助かる。夜間活動が可能になっているわけではないようだ。これ以上襲われてでもしていたら外へ出るのが大幅に遅くなるところである。
だがこれでなんとか今日の目的は達成した。そう思うと緊張が解けたのか全身に気だるい感覚がまとわりついてくる。
「けれど、明日にはまたモンストラクターが来る……きりがない」
モンストラクターとの戦闘を思い出し溜息を漏らす。今日が終わっても結局明日が来て、また同じ事を繰り返さなくてはならない。この気だるさが日に日に強くなって終いには地面に沈み込んでしまいそうだ。
スラッグは苦笑いを浮かべ、しかし明るく声を上げる。
「そうだな、何か解決策を設けるしか、」
スラッグは話を唐突にやめた。急に。無理矢理停止させられたかのような唐突さで、破砕音を伴って音声が途切れた。どうしたんだ、と横を向いたとき、なぜかホイーラーの上にいるべきスラッグがいない。いやいないのではなく、自らの体を支えきれなくなったスラッグがホイーラーの上から落ちようとしているところだった。そして銃声が微かに聞こえた気がした。
「スラッグっ」
後ろにいたスナールが先に事態を理解したらしくせっぱつまった声で叫ぶ。皆がホイーラーを停止させようとする。
……まずい。ここで皆が止まる事によって全滅してしまうのではないかと想像がよぎる。悠長に駆け寄っている暇はない。
「止まるなっ、死ぬぞ、早く外に走り抜けろっ」
出せる限りの大声を張り上げて皆に喚起する。これ以上犠牲を増やしたくない。スラッグの状態や、俺の必死さに優先すべきものを理解したか、すぐにホイーラーの動きを再開させる。
「俺達は狙われている、狙いを定められないように動くんだっ」
そう言うと各人大きく広がり、ホイーラーを大きく動かしながら外を目指す。距離が距離だ、こうもでたらめに動けば当てる事は叶わないだろう。
そうして俺達は再び銃声を聞くことなく、太陽が沈みきる前に森の外へ出る事ができた。
「どういう、ことだよ……」
ヘリオスへ駆け戻って、崩れ落ちるように壁へ背中を預け座り込むスナール。彼が言っているのは十中八九スラッグのことだ。俺だってどういうことか分からない。なぜ、なぜ、
「殺されなくちゃならないんだ」
ヘッドショットされ、無残に破壊されたスラッグの頭部は一目見ただけで即死だと分かる有り様だった。頭蓋が割れ飛び脳漿をぶちまけていたのだ、生きているはずがない。
「スラッグは殺されたのか、誰がやったっていうんだよ」
「落ち着いてくれスワープ。俺にだって分からない。でも、多分、これは宣戦
布告なんじゃないかと思うんだ、メッセージだよ」
俺は何故か、妙に落ち着いていた。目の前で命の恩人であり、家族であり、そして親友でもあるスラッグが殺されたのにも関わらず思考は乱れない。でも、怒りの感情が大きくなっているのは分かる。心の奥底でそれは沸々と、動く時を待つかのように。




