第一章‐14
「このように昼間は素晴らしい筋肉だが、太陽が照らない夜間は筋肉が硬化し、動かす事は困難だ。俺は力自慢だが夜間にグラスレットを引く事はできなかった。太陽武器というものは太陽光の照射がなければ到底使える代物じゃない。そこに立てかけてあるエッジスコナーも、夜間は極端に切れ味が劣る。刃物に関しては昼間の切れ味が鋭すぎると言った方が正しいのかもしれないのだが。ともかく夜間使用は考慮されていないんだ」
太陽武器という道具はその名の通り、太陽に依存したもののようだった。ソーラー電池のような。電力を溜めて夜間にも使える分ソーラー電池の方が優秀か。
「不便では、スラッグが日常的に使う道具も同じ技術なんだよね」
「その通り、モンストラクターを狩る以外の道具だって、モンストラクターを材料にしたもので溢れている。それらも大半が日中しか使えないな。ただ一部はモンストラクター以外の素材を使って夜間も使えるようにしているものもある。材料が限られているから極々少数ではあるのだが」
スラッグは更に、素材としてのモンストラクターについて語ってくれた。モンストラクターという太陽に祝福された特殊生物ならある程度は数多く調達できるがそれ以外はとても少ないらしい。金属、糸、肉、薬……解体する事で様々な素材の代替品を得る事ができるモンストラクター。街でそれらの素材が直接使われていないのは家くらいなんだそうだ。どれもモンストラクターではない、土や木、石を加工して作られている。
「家くらいしか使わないって、森には十分すぎる程育ちのいい木が多く生えているけれど、大して使われていないのか」
ヘリオスの家は少し見て回った程度だが、どれもレンガ造りだ。
「活用されているさ。適度にな。多く狩り取れない理由として森は木が無ければ成立しないからだ。モンストラクターを狩るのに必要でね、奴らを狩るとき、俺達は常に地面を走り回っているわけじゃない。気に備え付けられているチャージャーで木の上に上がり、様子を窺うんだ」
チャージャーで木の上に上がる、そう表現するもので思い浮かんだのは木から垂れ下がっていたワイヤー、恐らくそれの事だろう。森で目覚めて見回した時不思議に思ったので印象に残っている。その事を言うとスラッグは頷いて、「それこそがチャージャーだ」そして今囲んでいる部屋中央の机ではなく壁際の机から道具を取って説明を再開する。
「これだ。チャージャーは大きく二種類がある。今言ったように木に備え付けて上に登るものと、自分の腰に付けて、モンストラクターに射出して飛び乗ったりするためのものが、な」
チャージャーウィンドというモンストラクターから作り出された、強固なワイヤーと射出、巻き取り装置の事をチャージャーと呼称する。ワイヤーの先端には木に登るための足場と安価が選択でき、アンカーを付けた場合、ワイヤーをモンストラクターに射出し、巻き取る事で追う事が困難な種類を仕留める助けになる。
「大まかな太陽武器の概要は分かったと思う。これ以上は追々説明する方がいいだろう。今は直近で必要な知識をもう少し伝える」
話は戻り、スラッグはグラスレットを掴む。
「コウはモンストラクターを狩るにはあまり体が出来上がっていないし、全くのど素人だ。そんなお前がエッジライナーみたいな近接武器で狩りを行うのは無謀。すぐに殺されるだろう。そこでこのグラスレットは離れた位置から射出してモンストラクターを殺せる便利な武器だ。まぁ、これだって重量はあるし引くときに力がいる。だが対策や秘訣があるんだ。最初に扱うには打ってつけだと思う。俺も昔、これで鍛えたもんだ」
右手に持ったグラスレットを俺に持つようすっと差し出す。恐る恐る両手で掴むとスラッグが手を離し、その重量が手に伝わる。重い。
「大きいだけあって、やっぱり重いな……」
約七キロ程、か。少なくとも俺の片手で保持するには少々重い。
「すぐ慣れる。俺は使い始めた時もろくに筋肉がなかったんだ。始めのうちは小型を狩っていく。問題ないさ」
自分を例に出して安心感を出すが、俺とスラッグでは出発点からして体の作りが大きく違うのではないかと思ったけれど口には出さないでおこう。
「こうやって説明ばかりもつまらんだろ、武器を理解するにはやはり実際に使う事が一番だ。安心してほしい。小型種の生息区域は森の端、大型種は森の中心。遭遇する事はない。断言しよう。それに入ってしまえば木の上に登り、脅威に晒される可能性は極端に減るんだ」
「木の上でも絶対安全ってわけでもないんだね。飛べるモンストラクターがいるって事かな」
「飛べるモンストラクターはいない。木の上でも油断できないのは、大型区域には登ったとしても届く、背の高い種類がいるからだ」
木の上に移動しさえすれば少なくとも小型区域であればほぼ安定して獲物を狙っていられる、というのはモンストラクターに襲われた俺としてはとてもありがたい情報だ。けれど、空を飛ぶ種類が存在しないという事に驚く。二百種も存在するというのに、飛行型がないのは不自然ではなかろうか。モンストラクターが出現した事で、それ以前に存在した動物は綺麗さっぱり絶滅したという。
「スラッグ、モンストラクターが出現する前、飛べる動物はいたのかな」
「いたと聞いている。ただ、存在していたという事以外、何も残っていないからどんな姿をしていたのかさっぱり分からないがね」
「でも虫は、虫だと空を飛べる種類は多いだろう」
「虫か、いや飛んでいる虫は見たことないな」
という事は、この世界に飛ぶ生き物は存在していないのか。以前までの動物と共に、飛翔する昆虫も絶滅した……だとすれば作為的なものをどうしても感じざるを得ない。
「うーん、まぁいいや。今考えても仕方ない。必要な説明も受けたことだし、グラスレットを使わせてほしい」
「よしきた。まずは射撃場に行くぞ」




