表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツVTuberの育て方~僕をゴミ扱いした幼馴染を見限り、隣の地味な転校生をプロデュースしたら神扱いされた~  作者: おなきく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/48

第48話 一歩ずつ

 その後、遠足を無事終えて、家路についていた。

 朝と同じように、芽生(めい)が僕の袖をちょこんと摘まんで、隣を歩いていた。

 ただ、一つだけ変わったことがあった。

 どうしても、芽生の顔を直視できなかった。


(なんだか照れくさいな)


 山本(やまもと)の言う通りなら、芽生は僕のことが好きだ。

 つまり、僕を異性として意識しているということだ。

 じゃあ、僕は芽生のことをどう思っているんだろう?

 そう考えると、思わず顔が熱くなる。


「あ、あのぉ……」


 芽生がおずおずと声をかけてきた。


(たすく)さん、もしかして怒ってますかぁ……?」

「え? なんで? 全然怒ってないけど」


 予想外の言葉に、僕は思わず目を丸くした。

 ちらりと隣を見ると、芽生はなぜか今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「で、でもぉ……。お昼のときから、ずっと私のこと見てくれなくてぇ……。い、いつもより話してくれないしぃ……。人目があるのにいつも通りにしてほしいなんて無茶を言ったから、怒っちゃったんですかぁ……? もう無茶は言いませんから、機嫌直してくださいぃ……」

「いやいや、そういうんじゃないよ。全然、全然怒ってなんかないから」

「本当ですかぁ……?」

「うん、いや、なんて言うか……。僕の方の問題なんだ。芽生は何も悪くないから」


 そう、芽生がどうこう以前に、自分の気持ちひとつ整理できていなかった。

 情けないことに、山本に指摘されて初めて気づいた事実だった。

 だからといって、本人に直接「僕のこと好きなの?」と聞くのは、さすがに卑怯だと思う。


「じゃあ、せめてこうして一緒にいる間は、ずっと私を見ていてくださいぃ……! 私には翼さんしかいないんですぅ……。リアルで私を見てほしい人なんて……」


 芽生は、こういう恥ずかしいセリフを平然と口にするんだよな。

 後で思い出して身悶えしなければいいけど。


 その一方で、こんなことを言う芽生が、ひたすら可愛く見えた。

 意識しているから、余計そう見えるのだろうか。


「うん、分かった。ごめん」


 どうせ悩んだところで、すぐに答えが出るわけでもない。

 とにかく大事なのは、今、目の前にいる芽生に集中すること。

 彼女の好意を無下にしないことだ。


「実はその……。今日の芽生が、すごく可愛く見えたっていうか。それで、ちょっと照れてたんだ」

「え、えぇ……? そ、そんなに私、可愛く見えますかぁ……?」

「まあ……」


 恥ずかしくて、思わず頭を掻いてしまった。

 すると芽生が「へへ、えへへ……」と笑った。


「今日頑張った甲斐がありましたぁ……!」


 何を頑張ったのかは、あえて聞かないことにした。



 ◇



 それから数日、サキュミの配信を見守っていた。

 僕のアドバイスを元に芽生が新しく設けたルールも、目立った反発なくうまく運用されていた。

 基本的には何度か警告し、それでも改めない悪質なリスナーはBANする、という方針で進めていた。


 そんな中、誰が見ても一線を越えたコメントが届いた。

 しかも、そのリスナーは以前にも何度か警告を受けていたのに、短期間で同じことを繰り返した。

 そこで、ついに芽生がBANを食らわせた。

 幸い、彼女は他のリスナーを不快にさせないようすぐに空気を切り替え、何事もなかったかのように配信を続けてみせたが――


『うへぇぇ……。初めて人を殺しちゃいましたぁ……』


 配信が終わった後、電話越しに人殺しの自白みたいなことを聞かされていた。


「まあ、最初は誰だって難しいもんだよ。こういうのも、だんだん慣れていくからさ」

『殺人にだんだん慣れていく……。なんだか胸に響きますぅ……!』

「……」


 また中二心が疼き始めたのか。

 なんだか中学時代の芽生は、そういう系統のメタルをよく聴いていそうだ。

 今度、一緒にカラオケでも行ってみようか。


『あ、あの、翼さん……。なんだか最近、同接数がちょっと減ってる気がするんですけど、大丈夫ですかぁ……? もしかして、私が定着を妨げちゃってるんですかぁ……?』


 最近、最高同接数50人を記録した。

 しかし、そこから少しずつ減り、今日の配信では40人を割り込みそうなところまで落ちていた。

 芽生からすれば、不安になるのも当然だ。


「元々、こうやって急に新規が入ってくると、ピークを記録してから少しずつ減っていくものなんだよ」

『そ、そうなんですかぁ……?』

「うん。いくら芽生が上手くやっても、実際に見てみたら合わないって人は必ずいるからね」


 定着がうまくいかなければ、入ってきた新規層はほとんど離脱してしまう。

 つまり、同接数は以前と同じ水準まで戻るということだ。

 最悪の場合、以前より下がることだってある。

 その点、今の芽生は、新しく来たリスナーが順調に定着しているように見えた。


「それに、40人台にしては、結構コメントが多くなってない?」

『は、はいぃ……! セクハラコメントOKってことにしたら、みんなノリノリでぇ、へへ、うへへ……』

「……」


 別の意味で感心してしまった。

 実際、全く嫌がっていなかったのだから。

 こういうところも、男性向けVTuberとしての適性と言えるのかもしれない。


「明後日は悪心(あくしん)をプレイするんだっけ?」

『は、はいぃ……!』

「準備は順調に進んでる?」


 ゲーム自体の値段はさほど高くない。

 ただ、彼女の場合、ゲーム実況だけで終わりではない。

 実況の後には、悪心に登場したものを自分の手で再現する工作パートがあるのだ。

 だから、事前にいろいろと材料や道具を用意しておく必要がある。


(おまけに、事前にプレイしておくわけじゃないから、必要なものだけピンポイントで買うのも難しい)


 この企画の目玉は、ゲームを終えた直後に、手先の器用な芽生がその場でぱぱっと再現してみせることだ。

 正直、週一でやるにはかなりきつい。

 それでも芽生は、なんとかできると言って、ねじ込んだのだが……


『はい、もう大体の準備は終わらせましたぁ……!』

「お、早いね。よくやった」

『へへ……。それで、今回は衣装をコスプレっぽくしようと思ってぇ……!』

「コスプレ?」

『あのゲームのキービジュアルに、斧を持った隣のストーカーがいるじゃないですかぁ……?』

「ああ、そのストーカーの格好をするってこと?」

『はいぃ……! 小道具用の斧は、配信で作ればいいですしぃ……!』


 そのキービジュアルなら、僕も見たことがある。

 ハイネックのワークジャケットで、肌の露出はほとんどない。

 問題ないだろう。


「うん、いいと思うよ。それと、今回はあんまりスタイルアピールはしないでね。そういうのは短期的には受けても、長い目で見るとあまり得策じゃないから」

『あ、は、はいぃ……! こ、この前は、ちょっと欲張りすぎましたぁ……』


 おそらく、セルフ切り抜きを作っていくうちに、自分でも気づいたのだろう。


『だから、コスプレ衣装も、あんまり露出の多くないやつにしようと思ってぇ……!』

「うん、それがいい」

『な、何より私が肌を見せるのは、た、翼さんの前だけって決めてますからぁ……!』


 いや、別にそういう意味で言ったわけじゃないんだけど。

 あっという間に、独占欲の強い彼氏みたいになってしまった。


『あ、そういえば私、他にも用意してたものがあるんですぅ……!』

「ん? 何を?」

『や、やっぱり、他の人に見せる前に、翼さんに真っ先にコスプレを見てもらいたいっていうかぁ……!!』


 僕に先に見せてくれるって?

 ……悪心の、あのストーカーのコスプレを?


「どんなコスプレ……?」

『そ、それは明日のお楽しみということでぇ……! と、とにかく、明日の朝を楽しみにしててくださいぃ……!!』

「あ、うん」


 明日の朝?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ