5. すべてが終わった後で
後日、イベントの打ち上げが行われた。
私はクミ先輩の愚痴に付き合わされていた。
「ほんっ……っと、緑子をはじめ演者の皆さんが優秀で助かったわー。メーカーの責任者がどっちも使えないなんて思ってなかった」
あの後、担当者の飲んだコーヒーに問題があった可能性が高く、現場責任者の関与が疑われた。
つまり、お腹を壊したことは傷害の可能性も出たため、警察立ち合いで内部調査が行われた。
それによると、現場責任者の社員さんが三守さんのファンだったらしく、被害者の社員さんが、自分がやるつもりだった三守さんのソールを変えられたことへの不満が引き金となり、衝動的に混ぜ物をしたことが分かった。
余談だが、演者用のポットが空だったのは、その責任者が自ら飲んだからだった。
待合室でコーヒーが減らずに残っていると、人気がなかったと思われるのが嫌だったらしい。
それにより、広告代理店の責任者であるクミ先輩の立ち回りが評価され、スポンサーからボーナスが支給されたとか。
おそらく口止め料も入っているのだろう。
しかし愚痴は言いたいらしく、”MITHUO”の名前や”不祥事”という言葉を避けながら、関係者である私に絡んでくる。
「先輩が的確な指示をしてくれたから、私たちも対処できたんですよ」
「そうです、士央さんからのアドバイスがなかったら私もあたふたしてた所です」
一緒にいた三守さんも同意見だと、2人でクミ先輩を宥める。
「ええ、士央さん含め、皆さんには大変ご迷惑をかけしました」
急に背後から声をかけてきたのは、MITHUOの重役だった。
MITHUOからは当時のスタッフは出席しておらず、代わりに私とも顔見知りの重役の垂水さんが来ていた。
「お久しぶりです垂水さん。垂水さんが来たってことは、MITHUOは本気ですか」
彼は、MITHUOではトラブル解決の最終兵器と呼ばれ、様々なトラブルを解決してきたと噂を聞いている。
「ははは、清水君から何を聞いているのかわかりませんが、本気ではありますね」
清水さんとは、私のウェア担当の方で、MITHUOで私と最もやり取りをする人だ。
垂水さんが本気なのであれば、任せておけば問題なく解決できるだろう。
改めて三守さんが持ってきた浅煎りコーヒーをゆっくり楽しむ。
軽い苦みとスッキリとした酸味、そして香りが高音を奏でた。
「これを見つけて選んだ三守さんのセンスの高さに改めて感謝ですね」
「ありがとうございます。でも、緑子ちゃんのお菓子も美味しいですよ」
のほほんと会話をする私たちに反して、クミ先輩は愚痴を聞かれた気まずさから顔を引きつらせていた。




