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貧乏公爵に嫁いだ成金令嬢ですわ!  作者: しましまにゃんこ


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11/11

11 子どもたちの居場所

 ◇◇◇


「エマ、落ち着いてちょうだい」

 わたくしが後ろから静かに話しかけると、ハッとした様子でミアの手を離すエマ。目線で先生に合図を送ると、先生は一礼して席を外してくれましたわ。


 けれど、わたくしが震えているミアに目線を合わせようとしてかがむと、ミアは泣きながら頭を隠すようにして丸まってしまいましたの。

「ごめんなさい!ごめんなさい!お願いします!ぶたないで!」

 エマに目をやると、横を向いて押し黙ったまま。

 とうやら話してくれる気はなさそうですわね。しんと静まり返る食堂。

 重い空気の中、最初に口を開いたのはレオンでしたわ。

「ミアは、まだ幼いから許してやってくれ。俺が代わりに罰を受けるから」

 レオンの言葉に息を呑むわたくし。

「あ、あの。僕も罰を受けます」

「僕も……」

 トムやサム。まだ幼い子どもたちの言葉に、罰を与えられて当然、という空気を感じて、思わず手にした扇を握りしめてしまいましたわ。


「あなた達は、ミアがしたことを、罰を与えられて当然のことだと思うのね?どうしてそう思うの?」

 わたくしの言葉にハッとする子どもたち。

「だって、食べ物を盗んだから……あと、マナーも悪いし……」

 レオンの言葉にわたくしは静かに首を振る。

「いいえ。ミアは食べ物を盗んだ訳ではないわ。この家にある食べ物は、この家の子どもであるあなたたちには、いつでも食べる権利があるわ。ただし、食べ過ぎてお腹が痛くならない程度にね。あと、食べ終わったあとは、しっかり歯を磨くこと。これができるなら、好きな物を好きなときに食べていいわ」

 わたくしの言葉に目を丸くするレオン。

「いいのか?」

「もちろんよ。成長期ですもの。お腹が空いたらメイドに言ってちょうだい。料理長があなたたちのために腕をふるってくれるはずよ」

「やった!」

 小さく拳を握るレオン。食事の量が足りてなかったみたいですわね。給仕係に、レオンに出す食事の量を増やすように言っておかないといけませんわ。


「あの、お菓子でもいいの?」

 今度はリナが恐る恐る手を挙げる。

「そうね、お菓子は10 時と15 時にお茶の時間を設けましょう。美味しいからといって、あまり食べ過ぎると身体に良くないわ」

「本当に!?やった!」

 飛び跳ねて喜ぶリナ。リナはお菓子が大好きだって言ってたものね。専属のパティシエも探しておかなければね。


「マナーを守らなかったことについては、何も言わないんですか」

 射るような視線を向けてくるエマ。ミアはまだ、頭を押さえてうずくまったまま。

「そうね。食べ物をポケットに隠すのは、確かにお行儀がいいとは言えないわね」

 わたくしの言葉に、ビクリと揺れる小さな背中。

 わたくしはよいしょっとうずくまっているミアを抱きかかえましたわ。

「えっ……」

 いきなり抱きかかえられて、固まるミア。わたくしはそんなミアをしっかり抱きしめました。


「ねえミア、ミアはどうして食べ物をポケットに入れたのかしら?」

「……お部屋に隠しておこうと思って」

「どうして隠しておこうと思ったの?」

「食べ物がなくなったときに、困るから」

「もきかして、今までもお部屋に隠してたの?」

 こくんと頷くミア。

「……でも、ミアの食べ物、全部メイドさんに捨てられちゃったから、だから……」

 この子にとって、食べ物を蓄えておくことが、心の安定に繋がっていたのですわね。

 いつ食べるものがなくなるか、怯える生活が染み付いているのかもしれませんわ。


「分かりましたわ。食べ物が無くなるのは怖いですものね。では、ミアには食糧庫のチェック係をお願いしますわ。毎日食糧庫に行って、この家に十分な食べ物があるか確認してちょうだい。足りないと思ったらすぐに追加で買うようにするわ。それなら、安心できるかしら?」

 ミアは、わたくしの言葉に一瞬キョトンとして、次の瞬間しっかりと頷いてくれましたわ。

「分かった!みんながお腹が空かないように、私がチェックするね!」

 使命に燃えるミアは、すっかり元気を取り戻しましたわ。

「では、早速今日からお願いね。もちろん、このご飯をしっかり食べた後よ」

「はい!」

 慌てて食事を続けるミア。ほかの子どもたちも静かに食事を再開しましたわ。


 ただ一人、席を立って食堂から出ていってしまうエマ。

 意外とエマのほうが、難しいかもしれませんわね。


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