第14話 アンチジャイアント・ガトリング・ゼロスリー
ヤマダとクドウが、第3地区クエドラシティに来てから2日目の朝。ヤマダたちはホテルで朝食を取っていた。
「スクランブルエッグセットのライス大盛り、ポテトチップス のり塩のS」
「モーニングカレーセットとポップコーン チェダーチーズのS」
「朱雀バーガーセット マスタード派手増し バーニング32番」
クドウがキタザワに尋ねる。
「キタザワさん、スポーツというか、球技なんかは無いんですか?」
「対人のスポーツ?基本的に無いね。健康のためにエクササイズとか、格闘技も健康とバトルのためだよ」
「バトルの際、スタイリングで肉体強化は可能ですよね?そうでないと、略してタクヤは速すぎだったし」
「実際に身体を動かさないとならないけど、肉体強化は出来るよ。ただ、仮想空間と言っても、非現実的なレベルには出来ないと思う。
略してタクヤは、ネーミングはマッハだけど、そこまで異常な速さでもなかったろ?仮に音速のスキルが創れても、感覚がついていけないよ」
ヤマダが今更になって確認する。
「バトルフィールドが仮想空間なら、モンスターも仮想なんだよな?戦う意志が無ければバトルにならないし、パンデモニウムはランダムだろ?」
「モンスター?実際に存在するよ。やってるのは仮想バトルだけど。パンデモニウムは、何故だか相手を事前に認識できないから、ランダムに感じるだけらしい」
「敵を倒すと消えてるように思えたけど、マジでいるのか?」
「モンスターは敗北すると、どこかに転送されるだけ。仮想バトルだから、どちらも死なない。それと、俺たちはモンスターを敵とは言わないよ」
クドウが確認する。
「バトル相手とか対戦相手と言ってたのは、いないとパフォーマーが生活できないから?」
「そういうこと。共存関係だからね。すぐ近くにドラゴンいるのに、襲ってこないだろ?敵じゃないよ」
ヤマダが更に確認する。
「解ったような解らないような。気にしても仕方ないか。武器が自由に出し入れ出来るのは?」
「武器は仮想だよ。持ってる感覚あるのが不思議だけど、バトル以外で攻撃は出来ないよ。細かい仕組みは解らない」
「服や靴は?俺ら普通に脱いだり着たりしてるけど」
「勿論、本物だよ。武器は特殊な扱いなんだ。パフォーマーが、普段から武器をアピール出来るようにするため、存在しているように見せてる。けど、他人に攻撃が出来るのは良くないだろ?試しにどこか斬りつけてみなよ。すり抜けるから」
クドウが質問する。
「念のため聞きますけど、キタザワさん、バトルフィールド以外で炎は出せないんですよね?」
「そりゃ勿論。火事になっちゃうし。隕石を落としたら、街がとんでもないことになる」
ヤマダたちは、初日は現実と仮想の区別が明確ではなかったが、ようやく大体は理解した。
ゲームの世界ではない。技術が異常に進歩した奇妙な世界だが、あくまで起こっていることは現実だ。
朝食を終えたヤマダたち。今日は、ヤマダとクドウのスキルを検討するため、デザインショップに行く予定になっている。
出発する前に、キタザワから提案があった。
「提案があるんだけど、しばらく、俺たちでパーティを組まないか?パーティとして勝利すれば、負けた人も報酬は得られるから、やりやすいよ」
クドウが応じる。
「勿論、無名のうちらとしては、パーティを組んでくれるのは助かりますけど、キタザワさん、派手系だから迷惑になりません?」
「そろそろ俺も変化をつけようと思ってて、ドラマ性を持たせたいんだよね。例えば……」
キタザワは、自分の考えている展望を話した。
ヤマダとクドウは、キタザワの提案に賛成した。ヤマダには追加の案があるようだ。
「その方向だったら、俺からも提案があるんだけど……」
◇
ヤマダたちは、スキルデザインショップに移動した。
そこでは、AIコンサルタントと相談しながら、スキルを組み立てて、購入することが出来る。
手順としては、最初に自分の要望するスキルのイメージを伝える。すると、まずは手持ちの素材と予算に合った提案をしてくれる。
キタザワが先に素材の購入を勧めたのは、この時の提案の幅が広がるためだ。
初めてスキルをデザインする、ヤマダとクドウにとっては、相談と依頼そのものが難しい。
勿論、要望通りのスキルを創るために必要な素材や金額も案内されるが、慣れていないとコストが高くなりやすい。
手持ちの素材が多いほうが、妥協案を得やすいのだ。
ヤマダたちは、パーティでのバトルを想定して、コンサルタントとスキルの相談を始めた。
それぞれ個室で相談する。終わったら、昨日のファミレスに集合することになっていた。
◇
ゴウダとボーン(旧名ホネカワ)は、ホテルで朝食を済ませた後、今後を話し合っていた。
「さて、ホネカワ……じゃなかった、ボーン。飯は安いしホテルはタダ。そこは良いとして、どうすりゃ報酬を得られるんだ?」
「昨晩、ヘルプを読んだ感じだと、他人から観戦される必要があって、いいね!が必要みたいですけど……」
「ハァ?あんだけモンスター倒しまくって、全然ダメだったじゃねえかよ。どうしろってんだよ。アイテムのドロップみたいなのもねえし」
ゴウダたちは、ヤマダたちより数時間遅れでクエドラに来ている。
昨日、ドラゴン等とバトルして何度も勝利したが、何も得られなかった。彼らは途中で諦めて、夕食後はガールズバーで遊んでいた。
「後から何か貰えるかと思ったら、なんもねえし。てか、名前って簡単に変えられるのか?どうやんの?」
「僕の名前、いつの間にか、ゴールデンリーゼント@ボーンリバーになってたんですよね。関係ないですけど、ガールズバーに行ったときの記憶が、一部飛んでる気が……」
「間違って酒を飲んじまったか?しかし、モニカちゃん出勤してなかったのは残念だったぜ。とにかく、今日は先に武器屋だ」
ゴウダたちは、エクスカリバーのクレームを入れるため、武器屋に向かった。
「どういうことだ、親父!エクスカリバーで倒すと報酬ないのか?あと、試しに殴られてみたら負けたぞ!鞘に不死身の効果あるんじゃねえのかよ?」
「やれやれ、兄さん達、義務教育を受けてないのか。私が手本を見せるから、ついてきな。あと、鞘の件だがな。バトル後は全快するから特に意味はないぞ」
親父に気を遣うボーン。
「店のほうは大丈夫なんですか?」
「AIスタッフがいるから問題ないよ」
ゴウダたちは、親父に案内されて、巨人の山に来た。
「あれとやるわ。少し遠くから共有画面で観戦してな」
モンスターの大きさに驚くゴウダ。
(なんじゃありゃ。ドラゴンよりでけえ)
『IT'S SHOWTIME!』
相手はヘカトンケイル。20メートル程ある巨人だった。ギリシャ神話に登場する巨人で、名前は「百の手」を意味する。
ゴウダからは20本くらいの腕が見えていた。
「マスターオブウェポンズ・ヘパイストス!」
『相手を攻撃してポイントを貯めることで、武器庫から強力な武器を召喚可能だ。弱点のほうが得られるポイントは高い。』
ヘパイストスとは、ギリシャ神話における炎と鍛冶の神である。様々な武器や神具を創ったとされる。
武器屋の親父は、その名のイメージ通り、炎のオーラを纏い、ハンマーのような武器を持った。ハンマーには数字が書かれていて、初期値はゼロ。
ヘカトンケイルは、多数の腕を身体から切り離して、それを飛ばして攻撃してくる。切り離した後、また腕が生えてくる。ほぼ無限に飛ばせるようだ。
それをハンマーで叩き落としながら、突進していく親父。相手が巨大なため、まずは狙いは脚だ。
ハンマーがアキレス腱にヒットすると、ポイントが表示されて、ハンマーの数字が増えた。膝の裏など脚部の弱点を集中的に狙う親父。
ある程度のポイントを貯めた親父は、ハンマーで地面を叩いて武器を召喚する。
「トリスタン・フェイルノート&ハンドレッド・アロー!」
『品番:L-21、必中効果つきの弓を100本同時に発射できるよう拡張。品番:A-08、炎の矢を100本セットだ。』
親父は、召喚した弓矢に持ち変えて100本の矢を放った。ヘカトンケイルの腕を全て打ち落とした。
ポイントが一気に貯まり、さらにハンマーで地面を叩く親父。
「乱れ舞え!オーディン・グングニル・サウザンド!」
『品番:L-07、必中効果つきの槍だ。俺は1000本持ってるぜ。オートで飛ぶように拡張した。』
槍が1000本現れ、勝手に攻撃を始めてヘカトンケイルに全て命中した。さすがに命中後は槍が落ちるようだ。
攻撃力が低く設定されているのか、まだヘカトンケイルは倒れない。
「これで終わりだ。WRウェポン!アンチジャイアント・ガトリング・ゼロスリー!」
『WRウォーで使用された禁断兵器のひとつ。対巨人用ガトリング砲だ。』
手で持つタイプのガトリング砲が現れた。ハリウッド映画等でたまに見られる、とても重そうな大きな機関銃。ゴウダたちからすると、近代兵器にしか見えない。
凄まじい速さで弾丸を撃ちまくる親父。ヘカトンケイルは倒れた。
「うちで武器を買ってから出直してきな!」
親父を派手チートに改稿しました。




