X-1 匣だけが知る
石造りの廃屋に、男たちの骸が転がっている。
心臓のみを破壊された死体が五つと、身体だったものをすり潰されぶちまけられた跡がひとつ。空間跳躍のために命を絶たれた闘人たちの残骸だった。
跳躍という名を冠してはいるが、実際に行われているのは命の切り貼りである。
豪雨を避けて室内で空間跳躍を待っていた彼らは、おおよそが絶頂の余韻を残した顔で事切れていた。いつも通りの、しかし誰も目にすることのない光景だった。
雨音だけが響く空間で、死生匣は爛々と輝き続けている。
闘人たちは知る由もないが、死生匣は彼らの死亡を確認すると、数十秒後に転移を開始する。手下たちを殺しておきながら、自らは破壊を経ない移動を悠々と行うのだ。
しかし今回は違った。すぐに行われるはずの転移が始まらず、タッチパネルとなっている四つの面に、闘人たちが一度も見たことのないウィンドウが表示されたのだった。
その中におびただしい量の文章が表示され、流れてゆく。誰かに読ませる気があるとは思えないスピードで。
やがて文字の奔流は収まり、いくつかの改行を経て、最後のメッセージが表示された。
『死生匣 アップデート完了 バージョン2へようこそ』
確認を促すボタンが添えられたが、それを押す者はいない。
死生匣はしばし誰かの反応を待った後、触れる者がいなかったウィンドウを閉じて、そのまま次のステージへと転移していった。




