到着
「ありゃ不味いな……見てみろ」
ここは帝国から1.5キロメートルほど離れた丘。ここからでも大量の影が帝都を包んでいるのがわかる。魔族の帝都侵攻部隊の僕達の前の部隊が到着してしまったようだ。
佐藤が取りだしていたSCP-003-JPが『引き寄せ』ていたもの、双眼鏡を受け取り様子を城壁を見てみる。
城壁から帝国兵が矢を射ち魔法を放っている。空を飛ぶ魔族が城壁を越えようとすればクロスボウによる正確な一矢が打ち落としている。クロスボウの所持者は僕達のクラスメイトの一人だった。そして、城壁の上で指揮しているのは、リーゼロッテさん。
「やってんな~」
「いやそれどころじゃないし‼早く助けにいかないと‼」
呑気に状況を観察している佐藤をはたく。これは、ほんとに早くいかないと僕の首か飛ぶどころじゃない、帝国が、皆が、死ぬ。
「急がなきゃ!」
「まぁ落ち着けTSロリよ」
「なんだよ!……ってちがうよ!」
「いや違わないでござろう」
「このまま行ってもこっちが袋叩きにされるよ?遠距離からの攻撃で幾らか数を減らさないと」
「そんなものは必要無い!佐藤!さっき渡した包丁出して!」
明見や岡田さんが僕を引き留めようとするけど佐藤は僕の気迫に押されるようにSCP-668を出した。僕はそれを引ったくるように受け取り走り出す。
「あ、おい!」
後ろで佐藤の声が響いたが僕にはもうその声は聞こえなかった。
走る。走る。走る。
明見が作ったハンヴィー程ではないが自転車くらいの高速で走り続ける。もう魔族の軍勢まで約50メートル。魔族の最後尾が僕の存在に気づき始めた。もう遅い。
僕は目の前の人型の魔族に殺意を向ける。そしてそのままヤクザがドスで刺すみたいな要領でお腹の辺りに包丁を構えて魔族を刺す。魔族は、誰も止めないし抵抗しない。
「へ……?」
何が起きたかわからない、という顔の魔族の頭をもう一本の剣で刎ねる。
次。また人型の魔族を見つけて殺しに行く。また他の魔族は邪魔しないし、狙われた魔族も反応しない。
SCP-668の能力。殺害対象を殺害するまで相手は抵抗できないし周囲の奴等も止められない。
この力でデパートにいた何百人もの人間が皆殺しにされたという話もある。今やっているのはその再現だ。
こうして無抵抗の殺戮が続いていく。気づけば城壁まであと少しのところまできた。
僕は上空に目を向け空を飛ぶ魔族に狙いを定める。触手の塊のような魔族の肩?を踏み台にして僕は飛び上がった。
「ぎゅびっ」
気持ち悪い声をあげる喉にSCP-668を刺し、刺した点を軸に魔族の上へ半回転。次の目標を定めSCP-668を抉るように引き抜き傷口を拡げながら蹴り飛ばし、その反動で次の目標に向かう。
城壁まであと10メートル。あと少し。僕は次の目標を凄いふかふかしてそうな羽をした魔族に目標を定め――
「あ、が……?」
叩き落とされた。
背中に感じる衝撃。肺の空気が抜け、骨に罅が入る。《自己修復》が始まり体はもとに戻っていくがその魔族が追撃に来る。幸いにも、SCP-668は持っていた。もし落としていたらこの魔族の大軍に袋叩きにされていただろう。
「っ!」
僕はゴロゴロと横に転がりそれを避ける。SCP-668は死んでも手放さない。殺意も止めない。
「ほう……背骨を折っていたと思ったがこれを避けるか?ただの雑魚ではないようだ」
男の声。立ち上がり声のほうを向くとそこには白い天使の羽を持った男がいた。
「我こそは《七大罪》『傲慢』のルシファー。貴様ら帝国の下位種族を滅ぼす者なり」




