道中にて
「やばばばばばばば」
「落ち着け!事情を話せば許してもらえるって!」
「だ、大丈夫だよ?お姉ちゃんがついてるから、ね?私もさっきまで操られてた?とはいえ勇者だから一緒に謝って上げるから」
「いやいやいやいやむりだって人死にでてるし国大打撃。いくら瞬間転移系SCPが使えないからってこれはオワタァァァァ!ふぎゃぁぁぁぁぁ!」
車の中は大騒ぎ。焦りで正気を失った僕はギャン泣きし、それを必死でなだめようとする佐藤。それに付随するようにフェリアの《魅了》の洗脳から回復した勇者ハーレムの一人、岡田ひなたさんが膝の上に僕を乗せて頭を撫でであやそうとしてくる。子供扱いされてるぅ……ナルメアちゃんにもたまにやられてたから耐性ついたけど前だったら心臓発作で死んでるなぁ……あ、ちょっと気持ちいいそこそこ……あ……
「ふふ、落ち着いたみたいだね。でも、君は誰なの?帝国の人と繋がりがあるみたいだしそれにあんまり私達と話したがらない佐藤くんと明見くんが気安く話す女の子なんて」
横で癒されていく僕をにこにこと見守るもう一人の女の子、早坂文香さんが僕に質問してくる。
「そいつ杜若だぞ」
「へぇ~。カキツバタちゃんなんて不思議な名前だね?まるでうちのクラスメイトにいた人みたいな名前だね」
「いや、だから当人。杜若義彦だよそいつ」
「「え゛」」
僕を撫でている手が止まった。なんでぇ……
「はいぃ……杜若さんですよぉ……あ」
僕は冷たくなった空気に気付かずにぽわぽわと返答してしまってから現状に気付いた。
《色欲》に洗脳されて戻ったら自分を助けたとおぼしき三人の内一人の女の子が目の前でギャン泣きしていて、しかもその人物の正体は突然失踪した陰キャ男。
そいつが美幼女になってなんか膝の上で溶けてる。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
まぁ、こうなるのが当然だよねぇ……
「――ふぅん、そういうことなんだぁ……」
また車内が大騒ぎになった後、どうにか落ち着いた女の子二人は僕を撫でまくっていた。
「その、えすしーぴー?ってやつで女の子になったんだ。かわいいねぇ」
「うー……早く帝国いかなきゃだしナルメアちゃんのとこにも帰りたい……つらいんだよぉぉぉぉふぇぇぇぇ」
「おーよしよし」
「ふにゃぁ……」
あ……なにこの子達頭撫でるの上手すぎ……
「あぁ……国が滅んだと言うのにそれを助けるはずの勇者様方は旅行気分……先程の勇姿はどこへやら……」
嘆くような声で窓の外を見ているアルトさん。その光景はちょっと写真に納めたいくらい綺麗だった。毒吐かれてるけど。
「しゃーねーだろあんたのお陰で方角こそわかったが距離はくっそ遠いんだ。いつまでも緊張感持たせても疲れるだけ。あんたも休めるだけ休んどいた方がいい。それとも『聖剣爆弾』の光で目が潰れた状態で魔族蹴散らしながら帝都目指せってか?死ぬわふつーに」
「……むぅ」
「はいはいそんな可愛くむくれてもダメダメ。帝国救いたいなら、つーかあんたの国の再建を狙うなら俺らとコネ作っといた方が良いぞ?つー訳でそこのTSロリと女子三人で女子会してろ。何ならクッキーでもいるかい?」
僕の手元にクッキーの袋を出しながらまた佐藤は周囲の警戒を始めた。
「ど、どうしようか?」
クッキーの袋を両手で保持しながらキョロキョロと三人を見る。
「そうだねー。少し話しておこうか?杜若ちゃんはもう色々いったから良いよね」
「うん」
「じゃ、私からやろうか。私は岡田ひなた。ここにいる人たちとおんなじ召喚された勇者だよ!趣味は走ること!よろしくね!」
「私は早坂文香。あたしも勇者でひなたとは友達よ。よろしくね」
二人の自己紹介からアルトさんが続く。
「私はアルト=マリアフェルス。カラフト王国第三魔法大隊大隊長、そして宮廷魔導師の一人でした。それをあの《色欲》にいいように扱われ……くっ」
ギリ、と下を噛むアルトさん。その目には涙が浮かんでいる。
「ったく仕方ねぇだろ相性の問題だ。《魅了》なんてありゃ女の天敵だった敵だからな。そこの男女なら中身で問題ないだろうが普通の……いや普通ではない気がするが女があれに勝つのは不可能だ。現にそこの恋愛してたはずのハーレム構成員、しかも勇者ですらがっつりかかってたんだからな」
「は、ハーレ……」
「うぅ……」
そんな佐藤の単語を聞いて赤くなる二人。その二人を見てアルトさんは少し落ち着いたようだった。
「それも……そうですね。でも、私は宮廷魔導師。魔法面において王をお護りしなければならなかったのです」
「あー、後悔してるとこ悪いが」
突然車のスピードが下がり停車する。
「まずいなあれ、完全に包囲されてら」
フロントガラスから見えたのは、大量の魔族に今にも攻められんとしていた帝都だった。




