オタクコンビ
また遅くなりました……
ガツガツと、静かな森のなかに咀嚼音が響く。音の元凶は明見と佐藤、クラスでまあまあ仲の良かった友人と言える存在だ。
「むしゃむしゃもぐもぐしかしまさか杜若氏がもぐもぐ美少女にむしゃなっているとは、しかもロリむぐむぐ」
「うるさいよ、僕だってぐらまーな女の人になれるんだったらなってたよ。つーかご飯食べながら喋んな」
明見が僕にそんなことを言ってくる。僕は不満たらたらな声で返答する。
「PTSDの女の子の為に女になったんだろ?今いないなら何で男に戻らないんだ?」
「ぱつぱつの女の子の服を着た森を徘徊する男を君は見たいか?それに、僕はすぐ戻るつもりだったんだ。方法が何故か潰されてるだけで」
「お、おう……」
「……」
場が一瞬シンとする。僕がぱつぱつの服を着てるところを想像したのだろう。ばかなやつらだ。
「それよりも君たちの話を聞かせてよ。何があったの?」
「そうなんでござるよぉ!拙者達は西の山脈地方に行って亜人ハーレムを築こうと旅立ったのでござる。そこで言うも涙聞くにも涙の冒険譚を繰り広げたわけでござるが……」
「黙れ、そんなん無かったわ」
少し痩せた男、明見がつらつらと言った言葉に明見よりは体格はしっかりしているがまだ弱そうな佐藤が突っ込む。
「なんか今ひどい評価を貰った気がするんだが……?」
「知らないなぁ」
訝しげな顔をする佐藤を無視してことの顛末を聞く。
「いや、な……?」
どうやら僕が逃げ出した後、クラスの大半が野営施設に引きこもったらしい。自分達もその中の一部で、鳳凰院とかはまだ勇者勇者しようとしたけど一旦聖王国に帰還。帰ったら帰ったで動ける本町君とそのハーレムは行方不明になった僕を探しに行かせ、鳳凰院とその仲間の才能溢れる感じの人たちは魔族が出現した帝国に行かされた。引きこもった自分達は聖王国の城の中で引きこもってるのは役立たずだから戦闘系は殺して生産や医療系は奴隷紋刻んで強制的に働かせるかみたいな物騒な話をうっかり聞いてしまった。だから二人で慌てて夜逃げした、と。目標は西、エルフとか獣人とかの亜人たちの自治区だ。
「待ってこれ終盤だよね?」
「いんやこれからこれから」
何この異世界世知辛状況。聖王国鬼畜過ぎません?やっぱ人間怖いわー。その後野盗に襲われ手に持っていた持ち物の殆どを奪われ、補給のために村とかに立ち寄った際には足元を見られまくった交渉をする羽目になったらしい。その上、
「逃げたのバレたの」
「うっわ、それどうしたの?『逃亡兵は銃殺刑だ!』的な?」
「それどこのソ連?まぁ、本当にそうだったんだけど」
その時彼の雰囲気がちょっと変わる。
「いやーまんまと騙されましたよ?黒髪黒目の日本人が『こっちに来い!助かるぞ!』っ言うからよくわかんないゴムプールみたいなのに飛び込んだらここよ。野郎!次出会ったらぶっ殺してやる!」
なんかもうかわいそうだ。でも残りのクラスの人たちはどうなったんだろう?本当に殺されたり奴隷にされたりするのか?
「わからん。もしかしたらあるのかもな、奴隷紋。なんたって異世界。そういうのはテンプレだろ。助けたかったが、あの人数で逃げ出しても先が無かった。鳳凰院か本町を探して救出に向かうしかなかったんだよ」
ナルメアちゃんのとこに戻る前に、やった方がいいことが増えたようだ。




