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ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ) 作者:かすがまる

第1部

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04 神官は歓喜する、少女の舞いに/ドラデモ的魔法加護について

 神は降臨する。ワタシの背後に。
 戦場を見下ろし、敵の能力を看破し、最適な手段と最善の行動を指し示す。


◆◆◆


 神は、死にました。

 もしくは去りました。あるいは在りもしなかったのです。

 よしんば人の歴史に奇跡と見紛う痕跡が認められたとしても、それは先人の努力と工夫の成果であり、決して超常の御業を今に伝えるものではありません。人間の現実とは、救われることなき辛苦の道行きです。

 そう理解した上で、なお、僕は神官であり続けてきましたが。

 なんとしたことでしょうねえ、あれは。あの有り様は。

 黒髪の少女が戦っていますよ。

 なんという強さ。いわんやその速さ。見ている間にもゴブリンを三匹も。左手にひっつかんだボロ布を振って惑わし、回り込み、右手に握りしめた手斧を叩きつける戦闘技術……ポイズンラットもソードラビットもひらり躱してザクリと断首……なんという鮮やかさ。いわんやその凄まじさ。

 人を超えていますね、彼女は。超人ですよ。

 膂力と身のこなしだけならば、騎士の中にも同程度の者がいるでしょうが……ああは戦えません。戦えませんとも。

 そら、今の爪を回避します。背中に目があるかのよう。おお、時の先をも見通しますか。奇襲に先んじて跳び退いていたとは。そして攻撃。最小の手数にて最大の戦果。斧振る先に首来たる。断首の連続。喊声を上げるでもなく。

 神懸かりではないですか。まるで。

 人間が勝利するなどという、夢物語のようではないですか。

「御僧、どうした。援軍の旗は見えたのか」
「これはウィロウ卿」

 忘れていました。そういえばそんな理由を建前に鐘楼台へ登ったのでした。いまや避難所と化した我が神院の、寒々しいばかりの愁嘆場に辟易して。

 まあ、砦までの距離を鑑みますに、援軍など間に合うわけもないのですが。

「援軍については、残念ながら、馬蹄の上げる砂埃ひとつ見当たりません」
「そうか……では他の生存者はどうだ」
「魔物同士の殺し合いが始まっていることから察して、田畑や雑木林には皆無でしょうね。いるとすれば行政区か貯蔵区かでしょう」
「……行政区はトロールに襲われた。残った者たちは助かるまい」

 あちらが囮となってこちらが生き残っている、ということですね。さぞや苦い決断をしてきたのでしょう。端整なお顔をそのように曇らせて。

 ふむ、ウィロウ卿も辛い立場です。

 名だたる武門に生まれながらも、嫡子争いを嫌ってこのような場所へ。それは正当なる権利の放棄。正統なる身命の遺棄。しかしながら家名と能力への期待が義務のようにつきまとうのですからね。

 いじましくも気高いものです。権利に比べて義務の大なる人間とは。

 それが逆転した人間など腐り袋。幾つも幾つも、過去も今も、王城には飾られています。どれもこれも、これからも、おこがましい感傷に浸るなどして。

「御僧、魔除けの結界はあとどれほどもつものか」
「この瘴気です。明朝までは難しいかと」
「そうか……では、夜を待たずに脱出しなければ。我らが血路を開く。御僧には民と傷病者の引率を任せたい」
「いえ、それには及びません」
「む。曲げても引き受けてもらいたいが」
「いえいえ、どうも我々は救われるようですから」

 怪訝な顔をされて当前ですね。それにしたところで間抜けな目と口の開きよう。

 更なる想定外を示したならば、さて、どうなるのでしょうね。

「ご覧ください。あれなる様を……奇跡を」

 おっと、指し示す手が震えているではないですか。笑止。僕のごときが厚顔な。拝まず祈らずの悪党が今更に信徒の感動をなど。おや涙まで。まるで童子。僕が。フェリポ・ヴァルキ・ミレニヤムともあろうものが。

 それでも、それでも……ああ……なんという美しさなのか。 

 少女斬遊。破魔の舞い。踊るようにして魔物を殺す。悪夢を祓うは黒髪の広がり。妖魔を討つは白刃の閃き。人間の絶望をかくも鮮やかに打ち破って。

「あれは……あの子なのか。黒髪の」
「ほう。どういう素性の方なのですか?」
「詳しくはない。一度話しはしたが」
「彼女の名を、お聞きしても?」
「クロイ」

 素晴らしいきかな。響きからして既に尊く。

「いかん! 得物を失ったぞ! 助勢を……」
「御心配には及ばぬでしょう」
「な、何と!」

 シェルボアに刺さり奪われた手斧を一瞥、少女は焦りも惜しみもしません。

 ボロ布を振ったる後にはその右手に一本の鉈。群がるポイズンラットを薙ぎ払って残心。マッドエイプに布を奪われたとて、身をひるがえすや、左手に手槍が。拾った様子などなし。刺突。さらには投擲。瓦礫の上のもう一匹をしとめて、次は短剣を逆手にソードラビットへ。

 魔法ですね。虚空より武器が生ずる魔法。火水風土雷、どの属性でもない魔法。

 それは、少女が特別であることを意味します。

 選ばれた存在であることを明示します。

 うふっ。

 つまりは、彼女を特別に愛し、恩寵を授ける御方があらせられるということ……うふふ……幸いかな。幸いなるかな!

 神の実存が証明されているのですよ!

 今まさに僕の目の前で! まばゆいばかりの説得力でもって!!


◆◆◆


 うーん……むむーん?

 ≪アセプト・ブレード≫て、これ、人間に使えたっけかな……エルフやヴァンパイアならわかるけど……それにしたって超レア職用だろ……隠しイベント?

 おっと、実況中に実況を忘れるとか、いもでんぷん汗顔の至り。きりっ。顔出しNGですけども。

 それはさておき。

 魔法使えちゃってますね。うちのクロイちゃん。これかなり不思議現象です。

 というのも、ドラデモ世界の魔法って習得条件とか使用制限が厳しいんです。特に人間だときっついマゾい。

 まず、種族ごとに使用可能な属性が限定されてます。エルフは水と風、ヴァンパイアは土と雷、そして人間は火のみと謎の冷遇。しかも威力のバランスもおかしい。攻撃魔法に注目すると「人間<<<越えられない壁<<<ヴァンパイア<エルフ」なんです。魔力値、人間は第二位のはずなのに。

 その原因は「守護神」の存在にあります。

 全ての魔法は守護神の加護の賜物っていう設定なんですよ、ドラデモ世界って。エルフには竜神が、ヴァンパイアには魔神が、それぞれ神秘のパワーで恩恵を授けているわけですなー。

 で、人間にだけは守護神がいません。なんてこったい。

 だから魔法は弱いし、眷属の助けはないし、病気するし長生きできないしで、この世に絶望したような勢力と成り果てているのです。うーん。ドラデモってる。

 まあ、エルフやヴァンパイアでプレイしたらしたでで、また別方向でマゾいんですけどね。

 守護神のご機嫌取りがね、超大変なんです。超。

 理不尽なお使いマラソンさせられたり、唐突にクエスト始まったり、意味不明な供物要求されたり……そのくせ加護の力が安定しないんだからストレスフル。しかも怒らすと洒落にならん呪詛よこすし。ダイレクトに殺しにくることすらあるし。

 シェルボアの大牙、ゲットしたじゃないですか。

 実はこれ、魔神に捧げるつもりだったんですよね。ヴァンパイア側へ正式に従属して、加護のお零れをいただこうと企んでたんです。雷魔法欲しさに。

 それがなあ……まさか≪アセプト≫系に化けるとはなあ。召喚魔法ってレアものなのになあ。

 っていうか、大牙、どっちに供物認定されたんだろ。

 儀式なしで勝手にってあたり凄く魔神っぽいけど。奔放極まってて。竜神は手順とか様式とかやたらめったらうるさいし……んへ?

 え? 「鬼神」って何?? 

 うわ、何これ! 攻略サイトでも見たことないんですけど! すごい! スレ建てて検証すべき!? いや、でも、実況中は情報収集しないって自分縛りが……!!
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