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ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ) 作者:かすがまる

第1部

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03 ドラデモ的バトルについて/魔術師は驚愕する、少女の一撃に

 ワタシは待つ。心静かに耳を澄ませて。
 そうすれば、声が聞こえてくる。そして、身を任せる。


◆◆◆


 わたしはニンジャになりたい。ミーティング中に存在感消す忍法を、欲す。

 はい、というわけで! いもでんぷんです!

 今日のドラデモDX実況は気合い入ってますぜー?

 前回までは一心不乱の農奴ライフだったわけですが、今回は遂にバトルだよ皆集まれー。このゲームの理不尽さを余すことなくお伝えしますよ。神回タグよろ。

 あ、グロ耐性無き者はブラバ推奨です。スプラッタばけらったなので。

 むーん、腕が鳴るなー。パーフェクトポチポチで能力値的には可能な限りに準備できてますからね。後はプレイヤースキル次第です。奴隷種族の奴隷なクロイちゃん、生か死か!

 いざ、ここに取り出したるVRマシンをば……脇へポイー。使いません。

 よく訓練されたドラデモプレイヤーはPCプレイ一択です。デスク周りに食い物飲み物マンガラノベは当たり前。ディスプレイは彩度も明度も落としてお目々にやさしく。これで長丁場対策よーしよし。で、サウンドはBGMその他諸々カットで環境音のみ大音量。今回、相手が相手だからー。

 それというのも、このゲーム、リアリティの追求どころを間違ってるんですよ。まあドラデモだからしかたないね……DXでもね。

 戦争イベントがですね、なんとなんと、ほぼ半日がかりなんですよ。戦況によっては日をまたぐこともしばしばだいたいよくある話。中には一週間も終わらなかったケースまで。聞けばその大半が山中行軍だったとか。

 それ、もう、別ゲー通り越して別エンタメじゃん……旅ジャンルのさ?

 もちろん、イベント中は中断セーブなんてできません。もともと一時停止ボタンなんてないし、強制終了なんてすればセーブデータは自動削除。ゲームオーバーでも無論のこと削除。でろでろでぃんどんっていう例の伝統的BGMで。

 殺しにかかってますよね……プレイヤーの社会的立場を。

 CMだとアイドル声優が「超リアルな戦場では一瞬のスキが命取り!」なんて素敵笑顔でしたけど、ベータ版からのガチ勢は暗黒微笑ですよマジでおこだよ。

 ま、古参兵いもでんぷんにスキはないですぜ? だって明日から三連休だもの。

 さーて、読み込み終了! 戦争のお時間!

 あ、やべやべ、手汗対策のタオルはどこだ? あと、その、ペットボトルは。


◆◆◆


 急に襲われ、逃げて隠れて、もはや為す術のひとつもねえときた。

 なんとも惨めなもんだぜ。破門された魔術師にゃ、こんなしみったれた最期がお似合いってわけか。

 大挙して現れた数多の魔物……ゴブリン、シェルボア、マッドエイプ、ソードラビット、ポイズンラット……森の深奥に生息しているはずのやつらが、揃いも揃って猛り狂いやがって。畜生め。

 しかし、ま、駐屯軍も呆気なかったな。所詮は中央から爪弾きにされた連中ってことか。なだれ込まれやがって。

 殺戮じゃねえか。

 捕食ですらねえんだから。

 こりゃ魔法だろうなあ。黄目どもの≪恐怖≫か、耳長どもの≪狂気≫か。どちらにしたってろくでもねえ。目につく端からただ殺す……魔物同士でも殺し合う。同族すら考慮しねえってんだから、おぞましいわな。

 死だ死だ。死しかねえ。

 どいつもこいつも、死んじまう。

 建物一つ残りゃしねえだろうな。この穀物蔵だって、納税用だからって頑丈になっちゃいるが、明日まではもつめえよ。

「ひっく……ひっく……」
「どうして……どうしてこんなことに……」
「おかあさん、おとうさん……」
「泣いちゃ、泣いちゃダメよ。静かにしてないと……」

 篭った面子にゃ女子供が多いな。あーあ。悲惨な終わり方になりそうだぜ。

 さあて、と。鎧戸のそばへ行っとくかな。そんで早めにくたばっちまおう。そうすりゃ子供の悲鳴を聞かずに済むし……肉壁ひとつ分、わずかでも、死を遠ざけてやれる。生きていられる時間を、伸ばしてやれるからな。

 と、思ったところで。

 そうら、来ちまった。死が。足音を立てて。

「ひぃっ!」
「ふぐうっ!」

 おうおう、お前ら、まだ小せえくせして。哀れにも呼吸を止めて。健気にも悲鳴を堪えて。自身をかき抱いて。身近な者と掴みあって。目を見開くにしろ硬く閉じるにしろ、涙して。顔面を引き攣らせて。歯を食いしばって。

 壁の向こうから、低く、息遣いの音。

 そして、あーあー、鎧戸を削る音まで。

「うわあ! 戸を喰い破られるぞ!」
「ああああ!! 嫌だああああああ!!」
「何か、何か壁になるもんを持って……ぐぽぺっ!?」

 扉が弾け飛んだ。騒いだやつらの内の、中年男がグシャリと潰れた。

 入り口で午後の日差しを背負うのは、猪の魔物シェルボア。豚っ鼻の息が荒い。ポイズンラットを踏み潰したのか。紫色のでかい鼠、その残骸から、ブシュブシュと血泡が吹き出てやがる。

 臓物の生臭。糞尿の汚臭。目に染みる瘴気。

 何もかもが痺れちまうようなこの期に及んで……魔物め、コンニャロウ、睨みつけてきやがる。値踏みしていやがる。涎を垂らしやがる。

 クソが。狂える殺意の行く先は、女子供ってか。

 このオデッセンさんの前で、喰おうってのか。女子供を。

「させねえよ、ド畜生が」

 火を灯した。魔法の火をだ。手ぶらじゃ種火程度のもんだが、なあに、気を引けりゃそれでいい。

「死ぬにも順番ってもんがあるんだ。わかれや」

 立ち塞がる。曲がりなりにも三十余年を生きた大人として、男として、これくらいのことはしなきゃなんねえ。これっぽっちかよと嗤えるが。それでも。情けなくて泣きたくなるが。それでも。

 哀れ、神に見捨てられて久しい俺たちだが。

 せめて、年長者の背中くらい、信じさせてやりてえんだよ。バカヤロウ。

「かかって来やがれ、猪野郎め……ひょえっ!?」

 血が、飛び散った。

 シェルボアの血だ。憤怒と苦痛の鳴き声。これもシェルボアのもの。

 何だってんだ。目の前に立つのは、黒髪の小娘。その手には大きな三つ又の鋤。腹と背とに麻袋を結わいつけ、足下にシェルボアを踏み伏せて……いや、鋤で刺し貫いている。土床に縫い付けている。

 落ちてきたのか。天井の梁か何かから。

 潜んでいたのか。俺たちがここへ逃げ込む前から。

 ずっと機会を窺っていて、今、致命の一撃を為したってのか。重い麻袋を抱えるなんていう、威力を増すための用意周到をも見せつけて。

 ゴキリ、と音がした。

 小娘が全身を使って鋤を倒し、シェルボアの頸骨を砕いた音だ。勢いあまってか柄が折れた。小娘は転がって、服と頬とを赤黒く汚した。すぐにも起き上がってシェルボアを見る。その眼差しは冷ややかだ。何の気負いも感じられねえ。

 死が飽和したような、この、静寂。

 動くことができんのは、その、小娘だけで。

 小娘は周囲を見回すと、大きめの石片を拾った。シェルボアの死骸に近寄り、顎の角度を整え、石片を叩きつけた。何度も何度も打ち据えた。蹴りもして、最後にはつかんで捻って。

 大きな牙を、その手にもぎ取りやがった。


◆◆◆


 シェルボアの大牙、ゲットだぜ!

 いやあ、上手くいきましたねー。扉カリカリ音に耳澄ませてた甲斐があったってもんですよ。目の方はマンガ読んでましたけども。

 それにしても、幸先いいなあ。開拓地で蔵に篭った場合って、大概はポイズンラットかゴブリンなんですよ、入り口破ってくるの。シェルボアはレアケースです。壁からダイナミック侵入ってのなら、シェルボアさんの独壇場ですけどねえ。

 で、戦利品たる大牙ですが。

 初撃破ボーナスで、スペシャルな追加効果つきました! イエイ!

 このまま持っていても不思議パワーで筋力が増強されますし、ルート次第じゃ、後々凄く便利な使い道があります。ぶっちゃけ、魔法もらえるかも。難易度確変のチャンスですよヤッター!

 さー、ここからは動きますよ。ドラデモがアクションRPGだってことを思い出す勢いで。なにせタイムリミットありますし。多分恐らく。

 開拓地名物なんですよ、このマッチポンプ戦は。

 今回はどっちの「正義の味方」が先に駆け付けるかなー?
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