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ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ) 作者:かすがまる

第1部

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16 ドラデモ的実況魂について/影魔は嘆息する、吸血の戦闘志向に

 神の御心もまた、心だから。
 静かなる時もあれば……激しい時もまた、ある。


◆◆◆


 サチケルちゃんてば何してくれてんのかなー!? いもでんぷんだって怒るよ!?

 夕方の! 開拓地で!

 《アセプト・チャイム》と《コール・グランベル》の重ねがけ召還大演奏会とか頭悪すぎるでしょう! そりゃ作中屈指の名曲だし、大好きだけども! 空中水族館もファンタジックシュールで癒されるけども! 

 こんなの、ヴァンパイアさんが乗り込めワッショイしてくるよおっ!!

 ほら! ほらね! 言わんこっちゃない!!

 あーあ。確定イベントとはいえ、時間稼いだら《コール》系間に合ったかもしれないのに……これで開拓地に大ダメージ入ったら、サチケルちゃん有罪ですわ。

 んで、西から百五十人とか不自然過ぎますなー。

 ヴァンパイアの軍隊って、基本的に百人単位で動くんですよね。それ未満は端数扱いという雑さ。しかも戦わずに後退するとかないわー。露骨に罠じゃん。

 ってことは、南からかな……あ、やっぱり。

「あれ? 何かもうバレたっぽいけど?」

 ヴァンパイア軍のおなーりー。総勢五十人。ざっくりとわかりやすい兵数融通でもって搦め手部隊を作ったわけですなあ。

「なんだ、ヒトの雌じゃん。一匹だけとか超迷子っぽい」

 隊長はあれかな? オープンフィンガーグローブのやつ。うわ悪趣味な。首とか腰とか、白骨の飾りをジャラジャラさせて。

「景気づけにちょうどいいや。犯して食おうぜ」

 ちなみにヴァンパイアの骨は茶色いし、エルフのは薄青いです。ドラデモ的謎のディティール。設定資料集は未発売ですけど、他にも食文化とか家族様式とか、無闇にこだわりまくるのがドラデモクオリティ。

「あ、こないだみたく()()()()にすっか。俺、犯す役な。食う役は手足だけにしとけよ。最後まで楽しみてえし、あとで肋骨使うし」

 お、無駄にネームドですね、あいつ。

「ヒトってのは無駄がねえよな。滅ぼすの後回しっつうけど、もちっと大っぴらに獲れるようになんねえかなあ」

 さてさて、ガトムントくんとやらのステータスは……ふむふむ……雷魔法を使う拳術スキル持ちね。よくいるタイプっちゃタイプだけども。

「うおっ、なんだ? い、今、すげえ寒気が」

 魔法のチョイスが駄目駄目ですわ。近接系で《放雷》って何したいの。取るなら《電身》とか《雷撃》とかでしょうに。

「……何見てんだ、雌。すかしたツラしやがって」

 あとのは雑魚ばっかかー。んー。男ばっかりで花のない部隊ですなあ。チャラい不良集団っぽく感じるのはなぜでしょう。

「ヒトだろうが。びいびい泣いて……命乞いしろや!」

 あはははは! 《放雷》! 《放雷》なんで!

 このタイミングでとか! ガトムントさん魅せプレイっすか! ぶははははは!

「なんで、ビビんねえんだよおおっ!!」

 そしてダッシュしてくるう! もう、もう、ガトムントさん! どんだけ面白いパスくれんのさーって、首ちょんばザシュー! 

 あー、笑った。笑いました。ガトムントさんマジリスペクトですわ。

 これはあれですね。こっちも魅せプしないと嘘ですよね。もう眠いとか言ってられんすわ。実況者魂見せてやりますわ。ええと、敵は四十九人だから……よーし!

 クロイちゃんのターン! 《アセプト・ブレード》で剣を召喚! それを地面に突き刺す! 高さと角度を調整して次々召喚! 周囲に突き刺すこと四十九本! んで、最初に刺した一本を、おもむろにまた抜く! 二度手間だけども!

 あとは、流し目っぽくして、クイッと手招き。

 さあ、かかってきなさ……かかってきたあ! よっしゃ来いやあ! 一人斬って剣をポイ捨て! 次の剣でまた斬ってポイッ! 別の剣でポイ! ポイ! ポイ!

 うおお! テンション上がってきたー!!


◆◆◆


 何の冗談だろうかね、これは。

 ひとりの人間が五十人のヴァンパイアを蹂躙する……魔薬中毒者だってもう少し趣味のいい荒唐無稽を夢見るに違いないよ。売人の私が評するのも何だけれど。

「ターミカ……これ、ターミカ……」

 見間違いでなければ、あの数十本の武器は全て虚空より現れたね。これも口にすれば処女血酔いの妄言にも劣る世迷い言となる。処女の私が言うのも何だけれど。

 人間が、使徒のような魔法を使うなんて……そんなことはア痛っ!?

「ターミカ! いつまで視ているのか!」

 目の前に腐れ上官の顔が。しまった。意識を向こう側へと割り振りすぎていた。どうにも昆虫を使った《陰見》は難しい。目が異なりすぎて補正に頭を使うよ。

「失礼いたしました、バトキス様。()()()()()()()()()()()が風に巻かれて……」
「言い訳無用。して愚弟の様子はいかに」
「……少々、難儀なさっておいでです」
「おお、ガトムント、ガトムント。また悪ふざけとは。おだててやれば攪乱役くらいにはなると思うたに……まったく愛いこと。あのような位置で雷など鳴らして」

 陶然として溜息を漏らすな、内股になるな、そして股のものを大きくさせるな。どこまで気色悪いのさ。つくづく、この兄にしてあの弟ありだよ。

 それにしても、困ったな。あちらの交尾狂は既に首無し、配下も順次地に伏せ続けている……なんて、素直に伝えたところでろくなことにはならないだろうな。最悪、八つ当たりで殺されるかもしれない。さりとて責任問題は避けたい。

 ん? やあ、丁度いいことに。

「きゃっ! ああ、ダメ!」
「今度は何だ、ターミカ」
「ああ……コウモリが、その、鷹にやられてしまいました」
「他に《通視》用の眷属は?」
「いません……も、申し訳ありません!」
「使えぬ。貴様もヴァンパイアならば、も少し精進せよ」
「は、はいっ」

 これでよし。後で何か聞かれても、エルフの罠である可能性を慎ましく指摘しておけば、いつも通りエルフ憎しの大合唱になる。私の身は安泰だね。

 そして、あの異常な人間……正体は知れないし、極めて危険な存在だけれど。

 関わらない方がいいなあ、あれは。

 注視はするとしても、第一発見者になるなど御免こうむるよ。奇怪な真実などというものは平穏を害する毒血だ。私の損が私の益を上回る全ての事象に災いあれ。

「是非もなし。動く。目標の位置は知れている。飛び葉が出入りした、あれよ」

 まあ、そうなるか。そういう作戦なのだし。

 五十隊以上の百牙隊をもって境界領域を混乱化せよ、か。血の気の多い将からすれば、好き放題に出撃せよという命令だ。エルフを討って戦功とするもよし、人間を狩って戦果とするもよし……この辺りに来ていたのは三隊だったわけだけれど。

 まさかエルフの使徒がいようとは。しかも滅多に前線へ出てこない『万鐘』ときた。各隊長が色めき立つのは仕方がないのかもしれない。

 ベアボウ隊が誘引し、ガトムント隊が攪乱し、バトキス隊が本命を叩く。 

 即座に作戦立案したバトキス百牙長は、まず有能な男だね。強者でもある。あの飛行者は恐らく『鷹羽』だけれど、それでも勝利の可能性を見出せるほどに。

 実際、開拓地に残るエルフ兵は少ない。あるいは目標を達成するかもしれない。

「皆のもの、心せよ。エルフは狡猾であるゆえ、どこにどれほどの兵を伏せているとも限らん。ここは網断ちの速攻であるぞ」

 いや、無理か。不可能だね。

 あの異常人間とエルフが共闘しているのなら、上手くいくわけがないよ。

 どれどれ、戦況は……五十人を全滅させて息も切らさず、と。いよいよ化物じみているね。しかも、武器が消えた? いや、出現させられる以上は消失もということかな。やはり使徒の使う魔法に似ている。規模から察して第一段階だけれど。

 黒髪を掻き上げ、己が身を抱き……佇む? んん? どのような意図がア痛っ。

「ターミカ! 集中せい!」
「は、はい! 申し訳ありません!」
「行くぞ!」

 やれやれだ。いっそ置き去りにしてくれればいいのに。百人もいるのだし。

 北側より粗末な柵を跳び越えて、と。

 人間の開拓地か。魔物の襲撃を受けたにしては片付いている。散らかっているのは豹の糞尿くらいというのも皮肉だね。エルフはいつもどこでも森林気分だ。

 鐘が鳴る。うん、いい警戒をしている。人間は弱いからこそ賢く慎重なんだ。

 ん? 屋上の縁にエルフ女。『鷹羽』か。

「きゃあっ」

 手近な家屋へ頭から退避。こんな時のためにこそ、よく足を滑らせる女という評判を得ているのだよ。悲鳴が複数上がった。やっぱり、何か仕掛けてきたね。

「ひいっ! ヴァ、ヴァンパイア!」

 おや、人間がいた。目撃されては仕方がない。首を鷲づかみにしたけれど。

「……身重かあ」

 手を放した。尻餅をつかないよう、介添えもする。私の弟になるはずだった子はそれで流産してしまったからね。まったく、人間は身体が弱くていけないよ。

「聞いて。お腹の子に免じて殺さずにおくけれど、私のことは他言無用だよ。女の開拓地暮らしは苦労も多いだろうけれど、しっかりと産み育てることだ」

 銀の粒を渡す。窓の弁償費としては過分だけれど、迷惑料としては妥当だね。

 戦争ってやつは、つくづくもって……はあ、やれやれだ。

 さ、夕闇の外へ。戦闘音とはほどほどの距離をたもつように気を付けて。
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