1/18
第1話 赤い駅舎を背に幸せ探しが始まる
気に身を任せた者にしか見えぬ景色がある。
人生は、そういう風景で満ちている。
東京駅の丸の内南口に立った瞬間、胸の奥がざわついた。
今日の幸せ巡りは、ただの散歩では終わらない。
そんな予感が、朝の空気に混じっていた。
「……さて、今日はどこへ行こうか」
ひとりごとのつもりが、すぐに返事が返ってくる。
「それはこっちのセリフだよ、おじさん。
行き先を決めるのは“気の流れ”だって、いつも言ってるじゃん」
声の主は甥の健二。
オレの脳内に宿る、理屈っぽい相棒だ。
「気の流れねえ……そんなフワッとしたもんに人生任せて、
ここまで来ちゃったのかよ」
すると、もう一人の相棒・ワイズマンが静かに言った。
「しかし、それでよかったのだよ。
気に身を任せた者にしか見えぬ景色がある。
君の人生は、そういう風景で満ちているじゃないか」
赤レンガの駅舎を背に、オレは歩き出した。
都心を巡る旅が、いま始まる。




