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愛する人と、幸せになること ~前世で死んだ私を、彼だけが覚えていた~  作者: rara
第1章 地獄の果てで、出逢ってしまった
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3/55

②

一度目の人生は——

 敵国の王子と恋に落ち、裏切られて二十一歳で命を落とす、その結末を除けば。


間違いなく、恵まれていたと思う。


大陸の小国、アルザス。

その王家に生まれた私は、一人娘として大切に、大切に育てられた。


幼い頃から不自由は何ひとつなく、愛情に囲まれた日々。

けれど同時に、王族としての責務もまた、当然のように背負っていた。


そして十八歳になった時。

病に伏した父王に代わり、私は王位を継いだ。


小さな国ではあったが、誇りはあった。

信頼できる重臣たちに支えられながら、私は懸命に国を治めた。


贅沢ではなく、民のために。

慎ましく、けれど誠実に。


——だからこそ。


私の人生の過ちは、あまりにも単純だったのかもしれない。


敵国の王子と、恋に落ちてしまったこと。




隣国の大国ゼウス。

その不可侵条約の証として、王城に留め置かれていた第二王子——アラン。


“人質”とはいえ、彼には城内での自由が与えられていた。

そして年の近かった私たちは、自然と同じ時間を過ごすようになった。


最初は、ただの話し相手だった。

孤独を紛らわせるための、互いにとっての逃げ場。


けれど気づけば——


兄弟のように笑い合い、

誰よりも近くで心を通わせる存在になっていた。


それが、恋に変わるのに、そう時間はかからなかった。


しかし、運命はそれを許さなかった。


私たちの想いが深まるのと時を同じくして、ゼウスは領土拡大を掲げ、アルザスへの侵攻を開始した。


戦火は瞬く間に広がり、国は不安に包まれる。


その最中——

私は、両親を相次いで失った。


原因は流行病。

あまりにもあっけない別れだった。


気づけば、支えをすべて失っていた。


その空白を埋めるように、私の心は、アランへと強く依存していった。


彼だけが、そばにいてくれる存在だったから。


だがその姿は、周囲にはどう映っていたのだろう。


敵国の王子を匿い、恋に溺れる女王。


重臣たちの信頼は、次第に離れていった。

民の声も、冷ややかなものへと変わっていく。


もともと軍事力に乏しいアルザスにとって、

内部の乱れは致命的だった。


戦況は、長くは持たなかった。


敗戦が目前に迫った頃。

私は死を覚悟し、籠城を決意していた。


王として、国と運命を共にするために。


——けれど。


アランは、違う選択を差し出した。


一緒に、ゼウスへ逃げようと。


その言葉に、私は激しく揺れた。


王としての責務。

ひとりの女としての想い。


どちらを選ぶべきか——答えは、分かっていたはずだった。


それでも私は。

国を捨てることを、選んだ。


彼と生きる未来を、信じたから。


そして——城を抜け出し、たどり着いた街で。


私はアランに殺された。

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