2章 過去の未来(ゆめ) 【別人】
僕のペンライトは青色だ。
きれいな夜空みたいな髪色と淡いラベンダーの瞳、首にはチョーカーというクールでかっこいいキャラデザなのに明るく元気に笑い、カワボというギャップからユメミライの中でも絶大な人気を誇るメンバー。それが"ちぃ"こと僕・千空だ。
性同一性障害ということを明かさず、元気な男の子として明るく笑う。自称天使というレッテルを貼り、ヒナの願い通り、僕はバーチャルアイドルとして人気を誇っている。
でもユメミライは個性が強く、みんな大人気だと思う。
「ちぃの書く台本ってすげーいいよな〜。前のりつが幼児化するやつめっちゃ伸びてる。」
紫担当のメンバー、樹里くんは台本読みとかをやってて、とにかくイケボでかっこいいお兄さんって感じ。なぜか僕をたくさん褒めてくれる。
「ありがと。なんかみんなのコメントとか見てたら幼児化ってワード結構でてて!元気でかっこいいりつならぴったりだと思ったんだよね!!ギャップって大事!」
僕はメンバーの中で一番明るいを演じ、たくさん笑う。別にそれに苦痛を感じない。むしろ愉しさを感じられる。天職だったかもしれないと思ってヒナに感謝する。
「俺のおかげでしょ!」
同じく元気キャラのりつは黄色担当のメンバー。天然でイジられキャラ。でもリスナー想いで時々かっこいいことを言ってみたり、個人配信はリスナーのみんなに人気だ。
「そういえば、りつの個人配信聞きに行ったよ。なんかちょうど俺はみんなの味方だよ、、、みたいなこと言っててかっこよかったな〜!」
と僕が言えばりつが
「なんで聞きに来てんの!めっちゃ恥ずい、、、。」
と慌てていう。
こういうところが人気なんだと思う。
「ちょっと!今作業中じゃなかった?集中しなよ〜」
ユメミライのリーダーは赤色担当のゆな。
「ゆなじゃん。いいでしょ、ちょっとおしゃべりくらい。」
しっかりもののゆなはリーダーにぴったり。
「あの、、、。僕、、、。忘れられてますかね、、、?」
静かで引っ込み思案でマイペースなのが緑担当のつくね。
「つくねくん、誰も忘れてないからね!ほら、元気だして〜〜。」
慌ててゆながなだめる。
つくねは僕の相方でふたりともカワボ、天使ということでやっている。
<ピコン>
どうやら、最後のメンバーがやっと通話に入ったようだ。
「ごめん、遅れた〜!」
「遅いよ、みうみ。」
「まぁ、みうみが遅いのももう慣れたかな〜。」
「みうみくん、今度は送れないようにしようね?」
「!ごめんなさい、ゆな様!」
みうみ。ピンク担当。遅刻常習犯。
イケボでかっこいいがおっちょこちょい。
メンバーのことは大好きだし、みんな秘密は無しって感じで。僕も性同一性障害のことをメンバーだけに話した。スタッフさんも、知ってる人はいるみたい。
親身になって話を聞いてくれて。
とにかく優しかった。明るくて、元気が良くて、6人集まったら笑いが耐えない。
そんなメンバーだからこそ、楽しめる。
愉しくいられる。
そんな、個性強すぎる6人の選抜メンバーが集まったのが歌い手の未来が託された"ユメミライ"なのだ。
「こんばんはー!ユメミライ、青色担当のちぃくんです!」
僕が言うとチャット欄が早く動き始める。
『こんばんは!』
『わこつです!』
『こんばんは!配信ありがとうございます!』
などなど、たくさんのチャットが流れていく。
「君たちこんばんはー!全く、こんな時間に起きてちゃだめでしょー?、、、え?"ちぃくんが呼んだからきたんですよ!!"、、、あははっ。そーだねぇ、ごめんごめん。やっぱ来てくれて嬉しい。」
僕が笑うとやっぱりまたチャット欄が早く動く。
「えーと、なになに?"今日の内容は?"えっとねぇ、サムネと題名にもある通り、ちぃくんへ質問!〜チャンネル登録者30万人記念〜だよ!、、、、"初見です"初見さんいらっしゃいませ〜!、、、、"つくねくんがツイートしてる"えぇ、うそ〜!、、、、ほんとだ〜!、、、"ちぃへ質問やってるって言ってたので聞きます。今年の誕生日に欲しいものはなんですか。いっつも悩むから教えて(•ᴗ•❁)"、、、かわいいなあ。」
チャット欄は「優しい」とか「メンバー想い」とかがたくさん流れてくる。
配信をやっていて、こういう温かい空間が僕は好きだった。
「誕生日〜?そうだな〜。ユメミライが始動して2年目ってことで、僕の誕生日も2年目なわけだけど、何がほしいとか特にないな〜。リア友にもらって嬉しかったものとかはあるんだけど、メンバーからもらったプレゼントって特別な感じするんだよね〜!つくねがくれるなら何でも嬉しい!、、、って言って毎回困らせるんだけどねw」
僕が話せばみんなが反応してたくさん話してくれる。
雑談をたくさんして、みんなと仲良くなる。
配信が終わったらエゴサしにいく。
みんなが嬉しいって言ってくれる。反応は必ず返してくれるし、アンチにだって負けられないくらいのフォロワー数。僕が病んだらみんな心配する。だから、中学生の時の僕とは全然違う僕になった。
ヒナが好きになってくれた「チソラ」と「ちぃ」はきっと別人だ。
人は、いろいろな顔を持つ。
自分でも知らない、性格がある。
アイドルになってたくさん学んだ。
明るくすること、怖くなった時の対処法。そして、僕にも味方がいるっていうこと。
誰も信じられないことがあるけど、それでも進めば味方ができる。離れていってしまったら悲しい。でも、きっと味方になってくれる人がいる。
苦しいを越えれば想像もつかなかった未来が来るということ。
やっぱり未来はわからない。
未来が明るいなんて、そんなのわからないけど。でも、怖いわけではない。
アイドルに挑戦して、僕が無知だったことを知った。
普通になんて縛られていたらきっとこの世の中では生きていけない。
でも。誰かに助けを求められるということはすごくすごく大事だということ。
君も、忘れないでほしい。