表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/560

家令ロバート・ケインズと侍従長ファーガソン

 家令ロバートは、エドモンドの遣いで大公宮殿へと赴いた。


 用を済ませ、必要以上に広い廊下を玄関ホールへと向かうところで声が掛かった。


「ご無沙汰しております、ケインズ殿」


 ケインズはロバートの家名だ。

人影を見た時から素知らぬ顔で通りすぎるつもりでいたロバートは、「仕方なく」と感じさせない態度で声のした方に目を向けた。



 呼び止めたのは予想通り、エドモンドの弟であるタイアン殿下の侍従長。タイアンは家令をおいていない。よって侍従長が使用人の筆頭となる。


 ロバートとは年齢も近く、一方的に親近感を持たれているようで、機会があればあちらから必ず声を掛けてくる。


 式典等の折りには裏で一緒になることもある。

無駄に張り合ったり、力を誇示しないという点においては、仕事をする上でやり易いタイプでもあった。



「偶然ですね、ファーガソン殿。あなたもこちらへお越しでしたか」


「はい。近々、他国からのお客様をお迎えするにあたり、銀器をお借りするために」

ファーガソンは、にこやかな笑みを見せた。


 通常の銀器なら、タイアンの住む離宮にもある。銀器を借りるというなら、大公家の紋章入りのものだ。わざわざそれを借りださなけれはならないほどの客とは。


 考えを巡らせるロバートに、ファーガソンは自分から話し始めた。


「共和国から姫君の姿絵を持って使者殿がいらっしゃるでしょう? 接遇はエドモンド殿下の宮かと気楽に構えていましたら、我が君へと話がまいりまして。先方はどちらの殿下でも構わないらしいですよ」


 あけすけに語るファーガソンだが、職業柄よそへは聞こえない声の大きさは心得ている。仕事の出来ない男ではない。



 そんな話は聞いていない、などとは少しも顔に出さずに、さして興味もない様子でロバートは頷いた。興味があるなどと知られれば、さらに話が長くなる。


「タイアン殿下は、どのようにお考えですか」

知りたいことだけを尋ねる。


「殿下は留学を面倒がっておられますからね。妃殿下をお迎えすれば、留学をしなくても済む。縁談はいくらでも来ますから、今回お決めになるかどうかは存じませんが、ここ数年の内には婚約されるのではないでしょうか」


 タイアン殿下が留学を嫌っているとは初耳だ。

二つ年下のタイアン殿下の選択は、エドモンドも迫られる選択に違いないが、若き主からそういった話は聞いたことがない。


 気にしていないのか、まだ具体的ではないせいか。エドモンドはタイアン殿下やファーガソンほど口数が多くはない。


 留学と結婚。どちらを選んでもかなりの環境の変化だ。そして留学をしても、いつかは奥方を離宮にお迎えする。



 話し続けるファーガソンに適度に相づちをうちながら、ロバートはリリーの事を考えていた。


 エドモンドが奥方を迎えれば、落ち着くまでは今のように夜間に好きに外出する事は難しい。


 リリーはまだ十一歳だ。せめてあと四年、成人するまではなんとか支援してやりたい。

十五になればかなりの部分を自分で決めることができる。例えば母親と離れることも。


 若き主が伸ばしてやっている精神系の特殊な能力は、使い方によっては食べていく為の手立てとなると聞くが、それもすぐには無理だ。



 いつもは早めに会話を切り上げるロバートが、今日は付き合っているので、ファーガソンは気を良くして次から次へと話題を提供してくれる。


 エドモンドから聞けない以上、今後はこの男とも付き合う必要がある。

リリーのより良い未来を目指してロバートは自分から話題をふることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ