↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花売り娘は底辺から頂点を目指します!貴公子に溺愛されすぎて魔性の聖女になりました。  作者: 小田ゆなこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/560

美女を連れた貴公子と花売り娘・2

 近寄らないほうがいいとリリーが思った時には、エドモンドはもうそこまで来ていた。


「ここに来たからには、花冠を着けねばならないな」

隣の美女にそう声をかけている。


「ええ、エドモンド様。この後は友人宅へ顔を出すのですもの。当然いりますわ」


 花市は今日から三日間開かれるが、話題には鮮度が大切で初日に来る事に意義がある。だから貴族は今日が多い、とリリーは教えられている。「せんど」の意味が分からなくて、後からおじ様に聞こうと思っていたのだった。


「この小さな娘から買ってやろう――娘」


 自分に言われていると思えずぼんやりと見上げたリリーに、エドモンドが硬貨を渡した。花代には過分な額だ。


「花冠をこちらのご婦人へ」

「まあ、愛らしい花売りさんだこと。花屋の看板娘さんかしら。ひとつ選んでくださる?」


 品良く彩られた唇から出る声も美しい。キレイな人は優しい人でもあるらしい。リリーはペコリと頭を下げた。


 こういう華やかな美女は案外かわいらしい物がお好きだ。真っ赤や紫ではなくピンクや白が。


 リリーは高価ではない花を組み合わせたピンクと白の花冠を差し出した。


「お買い上げありがとうございます。こちらをどうぞ」


「あら意外だわ」と目を見張ったあとに笑みが広がる。

「この子の目には、こう見えるのかしらね?」


 エドモンドに同意を求めながら手を通したところを見れば、正解だったのだろう。


ほっとするリリーの頭上から声が降った。

「私の花飾りは」

驚いて見上げる。

「薔薇がもう挿してあります」


 確かに対(つい)でお勧めしているが、エドモンドのフラワーホールには開きかけの白薔薇の蕾が挿してある。だから花冠にも白の入ったものを選んだのだ。


「そうか」

初めて気付いたというように下襟に目をやるエドモンドを、美人が可笑しそうに見る。


 それをまた周辺の人々が憧憬を込めて眺めるので、ちょっとした人だかりになってしまっている。


「では、こうしよう」

エドモンドが薔薇を抜き、リリーの耳につっとかけた。


 その手で篭から白い花の小さな束を取り、自ら胸ポケットへと挿す。美女と同じ種類の花だ。


「これでお揃いですわね」

美女が嬉しそうに浮かべた笑みは、リリーから見ても惚れ惚れとするほど美しい。


「行こうか」

「ありがとうございました。良い一日を」


 美女を促すエドモンドにリリーは精一杯の笑顔を向けた。美女が「あなたもね」と返す。


「まだ初日だ、あまり頑張り過ぎるな。では、またな」


「また?」

花売り娘にエドモンドが掛けた言葉に、美女が反応した。


「明日は品評会の審査委員長として、明後日は優勝者の授与式で、またここだ」


 背中を見送るリリーにも聞こえるように説明しているのだろうエドモンドに、「そういう事」と美女が納得する。



「『では、またな』だって」

リリーはつい呟いて慌てて周囲を見た。


 人垣はとうになくなり、気に止める人は誰もいない。耳に挿してもらった薔薇から、いつもの坊ちゃまの香りがする。


 三日も続けて坊ちゃまに会える。

「頑張れそう」

リリーは篭を抱え直した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。