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白いウサギは甘い苺の夢を見る・5

「髪の手入れが悪い」とエドモンドに起きるなり言われては、リリーがまた涙目になりそうだ。ロバートは誉められそうなところを探した。


「ですが、おやつはエドモンド様のお言いつけを守ったようでございます」


机の上には三つ菓子が残っている。


「よく出来たと、誉めて差し上げませんと」

「その程度のことでか」


 若き主は薄く笑うが、リリーが目覚めたらすぐに誉めるのではないかとロバートはみている。


「土産はおろしたか」

「はい」


 エドモンドの言う土産は、今回の狩場近くにある農場で作っている苺の蜜煮。春に収穫したそのまま食べても甘い苺を、日持ちするよう蜜で煮て瓶に詰めたものだが、そこでしか売っていない。


 誰かを買いに行かせても良いのだが、苺の蜜煮など往復二日もかけるほどの物でもない。


「ほしいの」とエドモンドがエレノアにねだられなければ、甘味に詳しくない主人と自分では知ることはなかっただろう。


「ヨーグルトに混ぜると聞いたが、コレにはミルクに混ぜてやれ」


リリーの髪に暖かい風を含ませながらエドモンドが指示する。


「お嬢さんのお好きなスコーンに合わせても、よろしいかもしれませんね」

「口中ベタベタにするな」

「エドモンド様の指まで舐めようと狙うでしょうね」


 エドモンドの口角が上がる。「行儀が悪い」と叱りながら、リリーの食い意地を面白がっていることなど、ロバートにはお見通しだ。


「早く目を覚ますよう、瓶の蓋を開けて、コレの顔に近づけるか」


あながち冗談とも思えない口振りでエドモンドが提案する。



 狩猟に行ったものの、馬に乗ったのは数回。空いた時間を女伯爵の部屋で過ごし、彼女を満足させ他を納得させたと見るや二日早く切り上げた。


 共に戻るというエレノアに「パーティーの華を連れ帰っては、私が恨まれる」と宥めながら見惚れるほどの笑顔を向け、「あなたの為に家令を買いにやらせた物だ」とご所望の苺の蜜煮を手渡す。

人前であることもあり女伯爵は、そこで引いた。


 彼女に三瓶、留守を守るリリーに五瓶。「ダースで買ってこい」と言われていたが、それ以上は農家が売りたがらなかった。



「皿に少し出せ」


 待ちきれないらしい。髪を乾かし終えたエドモンドは、本当に蜜煮を顔に近付けてみるようだ。


 ここまでよく我慢した方だ。ロバートはエドモンドの悪戯を止めないことにし、瓶の蓋を開けた。

すぐに甘い香りが広がる。


つい指を入れて舐めたくなるような香りだ。

エドモンドの白いウサギはすぐに目を覚ますだろう。


 ロバートは自分もすっかり楽しんでいると、笑いそうになるのを堪えて、主に苺の蜜煮を差し出した。



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