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第59話 魔鉱龍を捜索しよう その2

★Side:クロ



『……静かに……』



 世にも珍しい漆黒のペガサス……"クロ"と呼ばれる天馬。


 それが森の木々に紛れて、息を殺している。

 クロの側には、同じように黒光りする巨大なカブトムシ、

 "ハイパーホーン"とクワガタの"バーサクワガタ"がいた。


 彼女らは、ある存在を視界に捉えていた。



「……グルル…………」



 全身が何とも言えない独特の模様が浮かび上がった

 特殊な金属に変異している龍。

 "魔鉱龍ダマスカス"の姿がそこにあった。



(……大怪我をしてる…………)



 魔鉱龍ダマスカスは重症を負っていた。

 全身が魔法金属と呼ばれる特殊な金属となっているにも

 関わらず、その金属の鱗が痛々しく割れ、

 全身に亀裂が走っているようにも見える。


 さらにその亀裂からは、決して無視出来ない量の血が吹き出ていた。



(……あのままだと……死ぬ……)



 いくら龍が優れた能力を持つ存在であっても、

 生物である以上、致命傷を受ければ死ぬ。


 クロとしては、どうにか話しかけて応急処置を

 してやりたい所なのだが、あの傷では目に入るもの

 全てに対して攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない。


 クロ達は、重症のために警戒心が非常に強くなっている

 ダマスカスにどう接触するか計りかねていた。


 結局、何かから逃げるように移動する

 ダマスカスに気付かれないように跡をつけるしかなかった。


 後方からダマスカスのいる方角に向けて接近している

 存在の魔力や気配を感じながら……。



★Side:ミスリル



『あー。なんか、落ち着きますねぇ』


『ひんやりしてて、楽マロ~』



 魔鉱龍ミスリル。彼女はグレッシャースライムと

 呼ばれる氷塊のようなサイズの凍ったスライムと

 洞窟の中でくつろいでいた。


 この洞窟、彼女らにとって物凄く快適だった。


 薄暗く、外敵もおらず、涼しい上、土壌が肥沃なのか

 土が美味い。地下からの湧き水も冷たく澄んでおり、

 夏の暑い時期であればこういうところで惰眠を

 貪りたいと思えるような環境だった。


 ……あくまで彼女らにとっては、である。


 そもそも、ミスリルが今回こんな洞窟に来訪した

 目的は別荘や住処探しではない。


 この居心地のいい洞窟の何処かにいるという魔鉱龍。

 "魔鉱龍オリハルコン"を捜索しに来たのである。


 しかし、居心地の良さに心奪われ彼女らは転移してから

 殆ど先に進めていなかった。


 もしアスがいたら、彼女らのお尻を全力で蹴っただろう。


 しかしながら、ここにはツッコミ役がいなかった……。


 ミスリルは、空島でこういう洞窟を作ってもらおう。

 そんなことを考えながら、とうとう

 居眠りし始めるのであった……。



★Side:フラード



「……さて、何処から行こうか……」



 門番を半狂乱にして門を通過したフラードさん。


 目的である魔鉱龍アダマンタイトがこの辺境都市の

 貴族によって捕らわれていることは知っている。


 しかし魔力感知を飛ばしても、アダマンタイト……

 つまるところ龍種クラスの大きな魔力を感じ取れない。



(何らかの方法で阻害されているのか?)



 魔力感知を断念し、とりあえず、まず冒険者ギルドに

 顔を出してみることにした。可能ならこの都市の貴族に

 ついての情報も確保するつもりである。


 千里眼を働かせ、冒険者ギルドの看板を見つける。

 そのまま冒険者ギルドへ早足に向かった。


 ギルドの扉を開く。扉に付けられた鐘が鳴り響く。


 それと共に幾人かの冒険者が扉の方を向いた。

 ある者は怪訝な顔を、ある者は呆然とし、

 ある者は怪しく笑みを浮かべた。


 見慣れない蒼い髪の少女を見た冒険者達の反応は

 多種多様と言える。


 フラードさんはそんな視線を感じ取りながら

 ギルドの受付の列に並んだ。


 多くの冒険者が辺境で狩った魔物の買取や依頼の報告を

 しており、どの列も混雑としている。


 しばしの時を置いて、フラードの番になった。



「本日のご要件は?」



 受付の女性が笑顔を浮かべながら尋ねた。



「魔鉱龍について、何か知っているか?」


「……え?」


「魔鉱龍アダマンタイト。聞いたことはないか?」



 受付嬢や後方の冒険者は不思議そうな顔をした。


 見た目はただの少女なのに

 何故魔鉱龍について尋ねるのか、と。



「……ええ。もちろん知っていますよ。

この都市の郊外にある廃鉱山に生息している龍種ですね。

廃鉱山にアダマンタイトがいるのは有名な話で、

これまでも腕に自信のある冒険者の方が廃鉱山に

挑んだ事もあります。まぁ、結果はアレでしたが」



 受付嬢は苦笑しながら答えた。



「しかし、何故わざわざアダマンタイトのことを?

もしや、廃鉱山に挑戦するつもりですか?」


「そんな予定は無いが。いや何……。

その魔鉱龍アダマンタイトがこの都市の貴族に

捕まった、という噂がある。と言ったら信じるか?」


「……失礼ですが、信じられないですね。

魔鉱龍アダマンタイトはSランクの魔物ですし、

廃鉱山は薄暗く、足元も不安定です。

何よりも硬度だけならオリハルコンすら上回ると

言われているアダマンタイトに覆われた龍ですよ?

さすがに、それは信じられませんよ」


「そうか。なら廃鉱山に行ってアダマンタイトが

()()()()()()()()事を証明することから始めるか」


「……廃鉱山に、いくおつもりですか?

……冒険者ランクは幾つでしょうか?」


「そんなことはお前には関係あるまい」


「いいえ。関係あります。冒険者がランクから外れた

危険地帯に向かうことを止めるように忠告する義務が

私達にはあります。冒険者ランクは幾つですか?」


「……はぁ。Fランクだ」


「……最低ランクじゃないですか。

それでは許可が出せるわけないじゃないですか。

廃鉱山に入るには、最低でもBランク以上で

あることが必要です。そもそもFランクで、

何故此処に来たんですか……」



 溜息混じりに受付嬢が答える。



「では、そのBランク以上の冒険者とやら以上の

実力を見せれば良いだろう?」


「……はぁ。Fランクの冒険者がBランク冒険者と

同等の強さを見せる?舐めてませんか?」

 

「やってみれば分かるさ」



 受付嬢とフラードがお互いを睨み合った。


 受付嬢とフラードのやり取りを周りの冒険者達が

 聞いていたのかいつの間にか、

 かなり大きな騒ぎに発展していた。



「あんなガキがBランク冒険者級の力を見せる?

しかもFランクだとよ。バカじゃあねえのか?」


「どうだろうな?装備は見た感じ、大分立派だぞ?

実は強くて、たまたまランクが低いだけじゃないのか?」


「装備を揃えるだけなら金持ちのボンボンでも出来る。

どっかの金持ちのお嬢様なんじゃねーのか?」



 最早言いたい放題である。



「あ゛?」



 ムカついたフラードさんが魔力をつい、

 解放しながらカウンターを叩いてしまった。



 バキャァッッ!!



 鈍い音を立ててギルドのカウンターの大部分が砕け散り、

 床にまで大きな亀裂が走った。


 シーン……



「……あ……。しまった……」



 フラードが、やらかしたと悟ったが、既に手遅れだった。


 先程まで騒がしかったギルドが、完全に静まり返ったのである。


 そして、全員一斉にフラードを見た。


 凄まじい量の魔力を一瞬とはいえ、

 解き放ちながらカウンターを破壊した攻撃力。


 それを見た目少女に見える人物が行ったのだ。

 しかも、自らをFランク冒険者だと言うのである。



(((……お前のようなFランク冒険者がいるか!!)))



 満場一致で彼らはそう思った。



「……すまない。器物を壊してしまった。

弁償しよう。……金は無いから、これでどうだろうか」



 フラードはそう言って、ミスリル鉱石を袋から

 取り出し、砕けたカウンターの上に置いた。



「……えっ。……これって、まさか……」


「何だ?ミスリル鉱石だが?これでは足りないか?」


「「「ミ、ミスリルだとォーーッ!?」」」



 冒険者達が一斉に叫んだ。内心はもう

 「何なんだこのチビは!?」である。



「……え、ええっと。しゅ、修理代としては

十分すぎる程です。むしろお釣りが来ますよ」



 受付嬢は恐る恐るミスリル鉱石を持ち上げた。

 両手で何とか抱え込めるほどの大きさである。



「……騒がしいな。何があった?

……って、何だこりゃ?滅茶苦茶じゃねえか」

 


 一人の男がカウンター奥の階段から降りて来た。



「ギルマスのお出ましか」


「マジかよ。大事になってきたな……」


「……ギルマス?」



 フラードには馴染みない名称だった。


 その間にそのギルマスとやらは、ミスリルを抱えた

 受付嬢と話をしており、そしてフラードの方を向き、

 鋭い眼差しを向けながら近付いて来た。



「悪いが、ちょっと話を聞かせてもらおーか?」



 フラードは内心、どうすればいいか考えていた。

 力ずくでこの場を切り抜けることは出来るが、

 それをしても意味が無い。むしろ厄介な事になる上、

 アダマンタイト救出に支障をきたすと思った。


 この不利な状況をどう穏便に、済ませるか。

 それを考えた、フラードは……。



「分かった」



 ギルマスとやらに返事をし、その後を着いていくことにした。


 後に残されたのは、大勢の冒険者達と、

 重そうにミスリル鉱石を両腕で抱えている受付嬢と、

 飛び散ったカウンターの破片を片付けている

 ギルドの職員達であった……。


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