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赤い靴を履くのが馬鹿馬鹿しくなる日

 赤い靴を履くのが馬鹿馬鹿しくなる朝がたまにやってくる。今日もそんな日だった。そんな日に限って、山田がまたセックスについて語りたがる。それでも今日は、まだ聞いていられる話だった。


 大学の空きコマに、座って飯を食っていると、山田が偶然通りかかる。当たり前のように僕の前に座って、飯を食べ始める。そのまま山田は懇々と語り始める。恋人と同じベッドで向かえる朝について。


 山田にしてはちょっと素敵な話をするな、と思った。いつもこれくらいの話をしてくれればいいのに。でもやっぱり山田は山田で、心地よすぎて朝は起きられない、とか、俺は終わった後足が痛くなるんだ、なんて普通の話をするのだ。


 僕は僕の経験を思い出す。安いビジネスホテルのチェックアウトは遅くて十二時で、まだまだ眠っていたい時間に無理やり起きなければいけない。そういうのもあるが、僕は恋人と一緒に寝るといつもより早起きになる。八時におきて、布団を出て、コーヒーでも入れて。疲れでぼーっとしながら恋人の寝顔を眺める。どうしてなのかはわからない。


 そのままの話を山田にすると山田は言う。それは、恋人との関係に問題があるんじゃないか、と。その時は聞き流していたが、あとになってそれが響いてくる。


 その日は一人になりたくて、午後の授業をさぼって僕は駅まで歩いた。気が晴れなくて、周りの目がいつもより気になった。バッティングセンターも、カラオケにもよる気力がない。かといって、このまま帰るのも面倒だった。帰っても、なにもすることがない。けれど、外にいても、なんだか窮屈だった。


 僕はどこにでも売っているコンバースの黒いスニーカーをはいている。いつもの赤いブーツじゃなくて、やっぱりよかった。足が赤かったら、どこを歩いても今日はバカみたいだったと思う。


 結局そのまま家に帰る。スマートフォンでゲームをしてたら、いつのまにか夜になる。恋人に連絡して、眠れなくなったと言う。たいして話すこともないのに長電話して、いつの間にか夜中になる。おやすみ、といって電話を切っても、そのまま二時間は眠れない。


 僕は夢想する。恋人との情事を。そうしている内はなんだが穏やかだ。でも度が過ぎるとそわそわする。


 朝が近づいて、ようやく眠くなってくる。でも、今日は、もうあとちょっとしたら支度をして、また大学に行かなければならない。


 恋人に好きだとメールして、僕は布団に横になる。ぼーっとして、もう無理に眼をとじようとしない。そのうちにいつの間にか寝ている。それは、目覚まし時計がなったときに気付く。たぶんもう僕は忘れている。昨日の朝、赤い靴をはいて居心地が悪くなったときのことを。


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