重なる手
「先生から、だいぶ魔力をコントロール出来るようになったと聞いたよ。頑張ったね、シルヴァント」
青灰色の髪をひとつに束ね、品のいい顔立ちは父としての顔を浮かべ、シルヴァントを見ていた。
15年前。青と緑の魔法士たちを率いる隊長をしていた彼は、今では車椅子に乗り、領地の仕事をしている。
「はい。もう暴走することはないと思われます」
「そうか。…すっかりお兄さんになったね」
伸ばした手がシルヴァントの頬を包む。
後ろに控えていたティアナとアリスティアも、シルヴァントと話したくてうずうずしているようだ。
その光景に、リーゼロッテは安心した。
アカデミーに来たばかりのシルヴァントは、周りからすれば恐怖の対象だった。
その目を受けても、彼はそれを静かに受け止めて、こうして最強の魔法士として卒業を控えている。
「挨拶が遅れたね。私はアーロック・ブライアスだ」
「こちらこそ、家族の時間に押しかけて申し訳ありません。リーゼロッテ・ドイッセルと申します」
「ダグラス・ハーミットです。お会いできて光栄です」
アーロックは少し目を見開くと、そうかと頷き、2人が伸ばした手を強く握った。
「シルヴァントが迷惑をかけたね。あなた達のことはよく聞いているよ。2人の試合が楽しみだ」
「…ねぇ、お父様!シンは試合しないんでしょ?こっちで一緒に観覧できないの?」
痺れを切らしたアリスティアに、アーロックは諭すように言った。
「シルヴァントはまだアカデミーの学生だからね。それに試合をしないわけではない。見守ることも、大事な試合だよ」
シルヴァントは静かに頷いた。
ティアナは少し落ち込んだようなアリスティアの手を取ると、シルヴァントの手を引き、優しく重ねた。
「大丈夫。あなたたちは強くて優しい、私たちの自慢の子よ」
「うん。…いってらっしゃい、シルヴァント!あなたはどんな立場になっても、私の大事な弟よ」
「はい!行ってきます」
シルヴァントは家族に手を振ると、少し先で待っていたリーゼロッテとダグラスの方へ駆けていった。




