引かれる手
この国の花形である竜騎士は、誓約したその日から卒業のための模擬戦まで注目されている。
リーゼロッテとダグラスは、歴代稀に見るエース級同士の戦いとして、スタジアムを埋め尽くすほどの注目を集めていた。
「さすがコーネリア様の忘れ形見!あの美しい立ち姿までそっくりだ」
「ダグラス様も端正な顔つきになった!あれは2人の子が楽しみだな」
そんな声を聞きながら、シルヴァントはアカデミーの関係者席の一番後ろに座っていた。
模擬戦とはいえ、誰もシルヴァントが剣を振るう姿に興味はないだろう。
「あれが黒の厄災か」
そう。
シルヴァントは、幼かったとはいえ、国を揺るがす災害を2度起こしている。
アカデミー側も、わざわざヘイトを買ってまでシルヴァントを表舞台に立たせることもない。
ギュッと手を握りしめると、温かな手がそれを包むように添えられた。
「なんだ、貴殿も緊張してるのか」
「リゼっ!」
「私もダグラスも準決勝まで暇でな。本当はシルヴァントとも剣を交えたかった!…魔法では勝ち目は無いしな」
ニヤっと笑ったリーゼロッテ。その後ろから、ダグラスも顔を覗かせる。
「リゼは魔力が少ないからね。なんでだろ?ね、イグニール」
「…ドイッセルは騎士の家系、じゃからのぅ」
そういうと、イグニールは目線を上げた。
シルヴァントの背後には、相変わらずノイジュヴァーンが静かに佇んでいる。
「久しいのぅ、ノイン。その顔、だいぶ落ち着いたように見える」
「…イグニール。相変わらず物好きの様だな」
表情は変わらないが、声を発するノイジュヴァーンに、近くの客席からはどよめきが広がる。
「…アーロックが来ている。其方に会いたいそうだ」
それだけ伝えると、ノイジュヴァーンはシルヴァントの手を取った。
「ダグラス、私たちも行こう!多属性と名高いお方がいかほどのものか、会ってみたい」
「わかった。…とりあえず先生たちには席を空けることを伝えとくよ。お願い、アースティア」
ふわりとした風がダグラスの頬を撫でた。
「ふむ、アースティアはダグラスに甘いのぅ」
「お母さんみたいで頼もしいよ」
クスクスと笑いながら動く一行に、客席は未だどよめいていた。




