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21 リトマス滅亡!?


「ヒュオオオオオオオオオ――――ッ!!」


『風麗竜』ヒュレイドラ。

 めっさデカイ。

 100人乗っても大丈夫そう。

 羽ばたいているだけなのに竜巻起きてる。

 冒険者たちの目は完全に釘付けだ。

 もはや私なんて眼中になし。


 私はこそこそーっと旧領主邸の陰に隠れた。

 仮面を外して、怪しいローブも脱ぐ。


「アルニャン! この証拠物件を持ってトンズラしてくれ!」


「了解だニャン!」


 ローブでくるんだ仮面をくわえてアルニャンはコソ泥みたいに逃げていった。

 うおおおっし!

 これで領主の依頼、コンプリートォ!

 あの絶望的な状況から見事切り抜けてやったぜ!


「さて」


 あらたな問題が出来した。

 このクソデカドラゴンどうしよう。


「おいおい、嘘だろ……。ヒュレイドラかよ」


「洒落になんなんわよ、こんなバケモノ」


「お嬢様とか誘拐犯とか言ってる場合じゃねえぞ。この町、滅ぶんじゃね?」


「オレもう帰る」


「帰るったってどこにだよ。もう帰る家も残らねえぞ、コレ……」


 ヒュレイドラの評価、クッソ高いな。

 リトマスきっての冒険者たちが完全に気を呑まれている。

 やっぱドラゴンって最強種族なんだな。


「ヒュオォ?」


 そのヒュレイドラさんがめっちゃこっち見てる。

 召喚主がなんの命令も出さないから、指示待ちドラゴンになって空中待機してる。

 そっかそっか。

 私の命令は聞くのか、あんた。

 なら、さりげなく追い払うこともできそうだな。


 私は廃城の裏手からこそこそっと屋根の上に這い上がった。

 右往左往するか放心棒立ちするかの冒険者たちを下に眺めつつ、スヒィィっと息を吸い込む。


「ヒュレイドラよ、一度だけ言おう。去れ。二度とこの地に近寄ること許さぬ」


 私はなんか往年の大戦士っぽい雰囲気を醸し出して、黒髪をなびかせた。


「ヒュゥウン……」


 ヒュレイドラはものすごく悲しそうな感じで首を垂れた。

 名残惜しそうに私を見つめ、そして、空の彼方に去っていった。

 いや、ほんとごめん。

 呼び出しておいて、去れ、近寄るな、だもんな。

 パワハラよ、パワハラ。

 それもこれも狂言誘拐なんか思いついたあのアホが悪い。


 蹴ってやろうと思って屋根から飛び降りると、冒険者たちが駆け寄ってきた。


「うおおおおお! シーナさん、あんたすっげえよおお!」


「あのヒュレイドラを剣も抜かずに追い払っちまいやがった!」


「あんたが来てくれなけりゃオレたち町ごと全滅してたぜ!」


「マジでハンパねえ! 『漆黒』の名は伊達じゃねえな!」


「よ! 町の英雄! 竜殺しのシーナ!」


「お、おう……」


 私目線だと手のひら返しがすごい。

 さっきまで私をぶっ殺そうとしていたのにな、こいつら。

 若干思うところあるが、こいつらはなんにも悪くねえ。

 悪いのはあいつだ、あいつ。


「フンッ!」


「あひーん!」


 あひーん、ッじゃねーよ。

 腹立つので、私はもう一発ぐるぐる渦巻き頭を引っぱたいた。


「シーナさん、本当に助かったよ。いろんな意味で」


 ルシウス君は神がかり的な造形が半分崩れていた。

 疲労困憊って感じ。

 金糸のような髪も鳥の巣みたいに乱れている。

 お互い災難だったな、アホ女とバカ親のせいで。


「あんたも蹴っときな」


「……。いや、さすがにそれは」


 今一瞬、変な間が空いた。

 うんうんわかるよ?

 こんな奴の付き人やるとか地獄だよな。

 私が代わりに蹴っとくね?


「フンッ!」


「んあっひぃ~~んんぬ!」


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