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25年後の医学1

 そしてぼくらは二十五年後の未来に着いた。

 タイムエイジマシンの外に出ると、そこはマンションの一室…、なんてことはなく、そこは相変わらず茶トラ先生の実験室だった。

 ずいぶん古ぼけてはいたけれど。

 床やテーブルにはいっぱいほこりが積り、実験室のいろんな機械なんかは錆びついて、もう何年も使われていないようだった。

「どうやらここは無人のようだな。この時代にわしが生きておる保証はない。わしはこの時代、九十歳だからな。多分生きてはおらんだろう」

「きっと近くの有料老人ホームかなんかに入っているんだよ。九十歳の茶トラ先生って、めちゃくちゃイメージわくけど」

「そうだといいが」

 それから家の外に出ると、庭は荒れ果て、草木が生い茂り、それとくらべると周りには近代的な建物がずらりと並んでいた。

「周りの様子はすっかり変わっておる」

「そうみたいだね」

「さて、亜里沙ちゃんに会いに行こう。順調にいけば医学部を卒業し、とっくに一人前だろう」

「そうだといいけど…」

「お前さんはこの時代三十七歳で、一つ年下の亜里沙ちゃんは三十六歳だ。だからちょうど中堅の医者になっておるだろう」

「だけどこの時代、あいつがどこで働いているのか、分からないんじゃないの?」

「だからわしは亜里沙ちゃんに『そうそう。それから亜里沙ちゃん、三十六歳くらいになったら大学病院の内科で働いていてくれないか』と言ったのだ」

「なるほどそういうことか! じゃ、あいつはこの時代、大学病院の内科にいる『予定』なんだ」

「そういうことだ」

「それにしても茶トラ先生は何でも用意周到だね。クロロホルムとか気付け薬とか、それから、お父さんをこかした救急箱とかさ」

「救急箱はお前さんの親父さんが横断歩道に飛び出すのを止めたんだぞ!」

「はいはい。そういうことにしといてあげるよ。ところでさあ、ぼくはこの時代、何をしていると思う?」

「そうだなあ、最先端のテクノロジーの研究者あたりかな」

「本当かなあ」

「夢は大きく持て」


 それからぼくらは、大学病院へ行くことにした。

 ところで、茶トラ先生の車があったらいいのだけど、二十五年もたっているので、多分だめだろうと思ったけれど、念のため探してみたら、草木の生い茂ったガレージに、朽ちたようなポンコツ軽自動車が見つかった。

「何年も乗ってないようだな。こりゃだめだ。よし。タクシーで行くか」

 それからぼくらは、デビルのお母さんの病気の、あらいざらいの資料や医局花見のアイスボックスなんかを抱え、歩いて大通りに出た。

 そこは歩道、自転車道、車道にきちんと別かれ、その車道には未来のイカした自動車が音もなく走っていた。

 それからぼくらが歩道に立っていると、いかにも「タクシー」という感じの、これまた、とてもイカした自動車が走って来たので、茶トラ先生が手を上げると止まってくれた。

 そしてその二十五年後のイカしたタクシーのトランクに、例の洗いざらいの資料やらアイスボックスやらを積み込み、二人で後ろの座席に座り、大学病院へと向かった。

 タクシーを降りるときお金を払ったら、運転手さんが「こんな古いお札は珍しい」と、とても喜んで受け取ってくれた。

 ただし物価の関係で、料金は一桁多かったので、茶トラ先生は眼が飛び出した。

「有り金は全部使い果たした。帰りは歩きだ。『テクシー』とも言うんだぞ」

「テクシー?」

「テクテク歩くタクシーのことだ。さっきまでわしらがいた時代でさえ、とっくに死語になっとる」

「へぇ~」

 それからぼくらは、立派な建物の大学病院に入った。


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