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第14話 執行

 旅の途中、とある街道を歩いていると、少年が三人組に蹴る殴るの暴行を受けていた。世に聞くいじめのようだ、と少女は気付く。


「エロスはどう思う?」


「どう思うって……あのいじめがか?」


 少女は頷く。


「そうだなあ、俺が思うに、ああいうのは時に生の活力をもたらすんだ。生きることを肯定できるような人間は少ない――」


 少女の表情が陰ったのをエロスは見のがさなかった。心情を悟り、


「ごめん、そんなつもりはなかったんだ」


「いいのよ、続けて」


「分かった……その中で、今いじめられっ子は、いじめっ子に活力を与えてる。逆に言えば、いじめっ子はいじめられっ子から力を受けているってわけだな。いささか功利的だが、あいつら、いじめっ子が少しも心に傷を負っていないとするならば、あいつらのやってるようなことは、少なくともあいつらのためにはなってるだろう。だが、俺の信条にちゃんと照らしあわせるとするなら、あいつのやってる事は半分善で半分悪ってとこだ。生を得ている点では良いが、生を奪っている点では良くない。――まあ、つまりは俺の立場からいじめにどうこうは言えない、というわけだ」


 少女はタナトスの方を向いた。


「タナトスはどう思う?」


「イヒヒ? いじめは良いこと、そうだろう? フフ、破壊こそ善だ! さあ一刻も早く死のうよ……」

 少女は一瞬だけ、タナトスを蔑みの目で見た。


 いじめは続き、いじめっ子たちが手を止めたときには、少年の体は青あざだらけでボロボロだった。

 少女は声を上げるか迷った。

 少女の体に触れられる人間は居ないため武力行使されるのが怖いわけではないのだが、ただ、少年の心が問題だった。


 そのまま迷っていると、いじめっ子たちが少年に背を向け離れて行く。


 少年の手が、近くにあった大きな石に伸びた。彼はそれを持ちあげ、傷んだ体で猛ダッシュすると、いじめっ子の一人をおもいっきり殴りつけた。いじめっ子は崩れ落ちる。少年はどこに体力が残っていたのか疑わざるをえない機敏な動きで、もう一人も殴り倒す。残された一人も、通りにでた所で頭蓋骨を砕かれた。


 少女はにこやかな笑みを浮かべて、倒れた三人に近付く。一番近い子の首筋に手を当てると、もうじき死ぬことが分かった。少女の笑みが、一層深まった。


 対して少年も笑っていたが、それは少女の笑いとはまるで違っていた。異質で、凍りつく、狂気の笑い。

 タナトスが少女の隣で、少年と同じように笑った。

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