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想起

 自室へ戻り、さっきの違和感の正体を掴もうとした。

 ロキの動揺の本質。薗田との感覚の相違。

 今日あった事、感じた事は、吉井に報告する必要がある。

 正直、大槻には理解し難かった。

 もちろん、自分はいきなり初対面の少女の手首を掴んだりはしない。

 けれど、それは、そんなに一人の人間を傷付けるような振る舞いなのだろうか。

 殴ったわけでもない。ただ、手首を掴まれたという程度の事が。

 エンの言うように、幼い頃のトラウマのせいもあるのだろうか。


「ああ、そうか」


 行きついた自らの考えに、思わず小さくつぶやいた。

 薗田は、かなり早い段階から、ロキを少女として扱っていた。

 自分はまだ、彼を少年として捉えている。本来、男じゃないか、と。

 強大な力を持つ眷属たちに守られ、人類を滅亡へと追いつめる妖魔を退ける、人類最強の力を持つ者である、とも。

 妖魔と対峙するロキは、恐怖心をみせる事はなかった。

 眷属たちを信頼し、背筋を伸ばして立ち、自信に満ちているように見えていた。

 そんなロキが、大槻の姿を見ただけで取り乱して逃げ出すような男に、手首を掴まれたくらいで怯えるのが当然、というのが納得できなかった。


 そうだ。

 

 眷属たちが付いている限り、誰であろうと、ロキに傷一つつける事は叶わない。

 暴走車に突っ込まれようとも、高所から転落しようとも、彼らはロキを守り通すだろう。

 その事実は、誰よりもロキ自身が充分に理解しているはずだ。

 ロキの動揺には、なにか、もっと別な理由があるのだろう。

 吉井に報告する前に、直接ロキと話してみよう。

 自らの考えに何度か頷き、彼の元を訪れるべく自室を出た。

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