目標
箸休め回を挟みまして、いよいよ第一章パート2に入りたいと思います。
誤字脱字の報告などがあれば本当に助かりますので、何卒よろしくお願いします!!
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第一章 パート2 「強さ」
「よっ相沢」
「おう」
「今日二時間目数学のテストだぜ。ダルイよなー」
男四人グループの中に入り、席に座る。
顔も成績も立場も普通と言ったレベルのグループだ。
朝のホームルーム。席は各々が座りたい所に座れる。
よってグループは基本的に固定化され、一年間顔ぶれが変わることはほぼほぼ無い。
俺はホームルームの時間の間は、このグループと過ごすことが多い。
「あのさ、斉藤が初めて迷宮に潜った時ってどんな感じだった?」
顔に微笑みを貼り付け、相手が話し易いテンションを作る。
斎藤は素直に話し始めた。
「俺がダンジョンに潜った時かぁ。相沢はこないだ誕生日だったもんな。俺は八万円でケット・シー買ってF-ランクのダンジョンに潜ったよ。割と楽しかったかなー」
日本での正式名称は迷宮だが、海外での名称はダンジョン。
どちらも同じ意味だが、人によって呼び方は半々だ。
ニュースなどでは『迷宮』が使われている為、一般層の間では迷宮の呼び名がやや一般的ではあるが。
「へー。今も続けてるの?」
「まあ、暇な休日とかに偶にって感じだな。ケット・シーとリャナンシーとゴブラナイの三体が主力だよ。
正直、稼ぎとしては良く無いけど、低ランクダンジョンだと危険も低いし、とりあえず初期費用の元が取れるまでは続けるつもりかな。まあ目標とかはなくて、最悪将来職に困った時、探索者として食い繋げれば良いなって程度だけど
前はEランクとか雑魚だろとかほざいてたけどやっぱ現実は違うわ。あんなの凡人には倒せる気がしねぇよ」
「そんなもんか」
「まあ、だろうな〜」
斉藤が語り終え、藤井と中山が相槌を打つ。
ケット・シーとリャナンシーはFランク。
ゴブラナイがF-ランク。リャナンシーを初回迷宮特典で得たとするなら、ゴブラナイに関しては迷宮でドロップしたと言った具合だろうか。
「それで、相沢はどうだったんだよ?」
「……いや、なんていうか。まあ普通だったかな。七万円で買ったFランクカードパックで女インプが出て」
インプに関して正直に話したのだが……。
「そりゃあついてないな」
「ドンマイ上原」
「……」
……うるさいわ。
別に同情されるほど悔やんでいないせいか、自分を揶揄うようなその言葉に若干の苛つきを覚えた。
「君らだってそうなるかも知れないだろ」
「それは無い」
「そもそもランダムパックなんてギャンブラーが買うもんだろ」
「パックだと30%で上振れるんだけど? 別に良くない?」
「その上振れの内25%が販売価値で一、二万程度の儲けだろ。外れたら平気で三、四万くらい損するじゃん」
正論だけれども。
というか、何故俺はこんな話をしているんだろう。
「あ、やべ。担任来たわ。早くスマホしまえ」
ゾロゾロと騒がしかった教室が静まり、授業が始まるチャイムが鳴った。
そんなクラスを他所目に、俺は窓の外の景色を眺めていた。
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時は2060年。
40年前に突如として出現したダンジョン以降、人類はありとあらゆる不可能を可能にして来た。
画期的なクリーンエネルギーの開発。
多大な情報を処理するシミュレーションルーム。
人間そっくりのAIロボット。
空を自由に飛び回れる魔道具。
制限的な瞬間移動を可能とする魔道具。
あっという間に傷を癒すポーション。
超高精度な配達ドローン。
人類の技術は確かに進歩している。
それでも、技術の発展は急速に迷宮出現以降止まったという専門家も多い。
現在、人類は迷宮が落とす魔道具に発展を頼っている。
新しい物を生み出すと言っておきながら、それは結局迷宮で取れた魔道具を少々改良しただけの物に過ぎない。魔道具の構造が百年経っても理解できないだろうと言われるように、人間が魔道具を自主開発するのは後六十年かかるという説まである。
人は時に考える。
人類は四十年でどこまで変わることが出来たのだろうか。
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「受付ですね?」
「はい」
放課後、迷宮探索の手続きをする為、俺はギルドへと訪れていた。
受付のおばさんから端末を渡してもらい、パパッと手続きを済ませる。
記入内容はID、名前、冒険者ランク、探索迷宮、そして契約の同意の五項目だ。
それを終えてから、俺はギルド奥の迷宮への門がある場所へと向かった。
カラフルなガラス張りの大きな部屋。
どこかの異国の教会のような場所にだって見えるそれも、見るのは二回目。
たくさんの人で賑わい、イカつい装備をした人も、若くか細い女性だっている。
列に並んで五分。
横に置いてあるパネルに『01』を入力し、続いて攻略階層である1を入力する。確認にもYESを押した後、俺は門を潜り抜けた。
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「……おぉ」
感激に声を上げているのは、前回潜った迷宮との比較からだった。
石造りの壁、床、天井。
相も変わらず、不自然に明るく、異様な不気味さを持っている。
迷宮と言えば誰もが思い浮かべる、洞窟の中のような場所。
だが、そこではない。
そう。寒く無いのだ。
前回は散々な寒さ対策で凍傷になるかと思ったほどだ。
対して今回は良いコンディションで挑める。
「っと」
忘れかけていたが、さっさとモンスターを出さなければ。
そう思いながら、俺はリリィとアンナ、それに白狐を召喚した。
「……颯太様」
「マスター」
召喚された二人は、すぐに俺の元へ駆け寄ってきた。
対して白狐は、距離を置き、タイミングを見計らって声を掛けてくる。
「初めまして、でしょうか? マスターさん」
マスターが固有名詞になっているが、どうでもいい。
それより重大な事実が俺を襲っていた。
「……いや、色々突っ込ませて欲しいんだけど。──君もしかしてメスだったの?」
距離を置いて立つ二十くらいの女性。白狐だ。
わざわざ人間に化けていた。
「ええ。開幕早々初対面で失礼ですね」
「まあ俺たちからしてみれば初対面ではないし。で、人間の姿なのは何故?」
獰猛な肉食獣の気配出して置いてメスだったとかビビるんだが。
「理由はいくつかあります。まず第一にコミュニケーションが取りやすい事でしょうか。人間が狐に話しかけるのと同じ人間に話しかけるのとでは、ハードルが違うでしょう? 第二にウケの良さです。単純に、人間の姿だと友好を作りやすいというメリットがあるのは理解できますよね? 特にマスターのような男性の場合は女性の姿の方が好きと言う、浅はかな願望があるようですし。マスターも女性二人を引き連れている事からその類かと思いましたが、違いました?」
「誤解だけど」
「では、本来の姿に戻った方がよろしいと?」
「……ちなみに人間の姿だと弱くなったりする?」
「接近戦では弱くなりますが、代わりに魔法の威力は上がりますね」
「良し、じゃあそのままで」
「「えぇ……」」
ジョークっぽく言ったんだけど、ドン引きしないで?
そこそこ傷つくから。
「ていうか、君たちさ」
「何ですか?」
傷心から立ち直り、気になっていた事を口に出した。
「全員敬語なの紛らわしくない?」
「そりゃあモンスターなんて全員敬語キャラじゃないですか」
リリィに身も蓋もない返事をされたが、挫けずに続ける。
「いや、まあそうなんだけど。字面での問題というか何というか」
「……? まあチャットとかだとそうかもしれませんね。私たちはL○NE使いませんが」
「いや違うわ。ボケてる訳じゃないんだわ。聞いた所によると、レベル五で得られるシンクロシステムのテレパシーは思念的な物で聞こえてくるらしいから、声の区別がつきにくいらしい。まあどの探索者も、抽象的な答えしか出てこないから相当説明するのは難しんだろうが、使い込んでいるカード達でも複数体の同時シンクロだとやっぱりある程度個性の強い個体の方が意思疎通を取りやすいそうだ」
「それは知りませんでした」
リリィはシンクロシステムについてあまり詳しく無いようだった。
恐らくは知識として無いのだろう。レベル五以上の探索者と組んだ事がないのかも知れない。
「つまり俺は君たちが敬語をやめてくれても構わないって事だよ」
ガッチガッチに主従関係を構築するのが好きじゃないってのもあるけど。
「そうですか。じゃあ、えーと。……これといった口調も思いつきませんね」
まあそう簡単に個性は変わらないか。
「そうかしら? こういうのでいいのよね、マスター?」
「おっ。それっぽい雰囲気出てるよなアンナ」
アンナはすぐに順応した。
「白狐は……」
「何だ。……仕方ない。私も同じようにさせてもらおう」
「こっちが素か。通りでさっきの喋り方、大分違和感あったわけだ」
二人とも順応が早いことで。
「ちなみに白狐は名前とか欲しいか? リリィもアンナも貰ってるし、希望があれば付けるけど」
「そうだな……いや。その件は保留にしてもらいたい」
「何故?」
「私からしてみればマスターにはまだ何も示せてない。それに急造の名前を求めてる訳ではないからな」
「……オーケー。じゃあ納得出来るような名前を考えておくとするよ」
白狐というカードも失い難いモンスターだ。
どのカードにも言える事だが、安易に関係を悪くする訳にもいけない。
チーム内の不和を生まないために変に気を使いすぎない事も大事なのだろう。
「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
視線を集め、一呼吸置いてから切り出す。
「俺たちの目標は幾つかある。そのウチの一つとして、十一月、今から五ヶ月後の事だ。俺たちは全日本中・高等部探索者選手権大会の県別予選に出場し──優勝する」




