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勇者様と言うなかれ  作者: 大島周防
愛の狩人編
67/91

19

駆け込んだ警備隊には、既に妹ちゃんと文官君、そして、イエーツ夫人が来ていた。ネッドの指示で、夫人の説得に行っていたはずだから、見事成功したということね。


夫人が警備隊の中年捜査員に説明している。


「エドウィンが・・・あの、エドゥインというのが、今度イエーツ家の養子となる人なのですが・・・身代金を出すことに強く反対いたしまして・・・色々の手続きや変更にお金のかかる時期ですので、主人も・・・『ミュリエルが自ら招いた事だ』と申しまして・・・」


私はその話を遮った。


「ミュリエルはランディの店にいるわ。」


部屋にいた全員の目が私に集まった。


「潜入捜査よ。客として行って、確認したの。」


これ以上の説明は、勘弁して欲しい。夫人が一番最初に反応した。


「ミュリエルは!ミュリエルは!」


「生きてる。でも、衰弱が激しくて、あんまり持たないと思う。すぐに救出しなにと。一刻を争うわ。」


捜査員たちが立ち上がった。もし彼らが動かないのであれば、裏の力(殿下)を使ってでも、救出に行くつもりだったけれど、大丈夫そうだ。でも、中年捜査員が躊躇っている。


「詰所には俺たち以外三人しかいない。踏み込むなら十人は必要だろう。今夜は無理だ。」


捜査員二人は、夕方飛び込んできた夫人と妹ちゃんの事情聴取のために残っているらしいが、夜勤の捜査員は多くないらしい。だけど・・・


「一刻を争うの意味わかる?ミュリエルは明日まで持たない。」


私が怒りの声をあげると、それまで黙っていたテオが、同意の発言をする。


「多分、縛られたまま、飲み物も食べ物を与えられていないんじゃないっすかね。意識が混濁してました。」


テオも危険を冒して、一回人間の姿に戻って声をかけたらしい。でもミュリエルは反応しなかったと言っていた。それですぐにねずみに戻って外に出て、馬車で私を待っていたのだ。


意外そうな表情でテオを見る捜査員に、テオが、


「セスが客として潜入している間に、俺は、裏口から忍び込んだんです。あの店は、裏の小路に、外からわからないようにドアがありますよ。中からしかあかないけど、表のドアより壊しやすいし、ミュリエルさんの囚われている部屋にも近いっす。」


と、説明した。


「犯人逮捕なら十分な人数がいるでしょうけど、ミュリエルを救出することだけを考えるなら、そんなに人数いらない。とにかく救出優先で考えて!」


私が訴えると、夫人が立ち上がって、


「お願いします!」


と、叫んだ。


「正面から警備隊が揺さぶる、その間に、私たちが裏のドアを壊して侵入する。」


中年捜査員が慌てる。


「ちょっと待ってくれ。なんで君らが捜査に参加するんだ。」


「テオと私はどっちも店の様子を知っているし、テオは正確に部屋に案内できる。少人数で救出にあたるなら、私たちの協力は外せないでしょ。」


そう言うと、捜査員は天井を見上げて考えはじめた。


「私も行きます!」


夫人が叫ぶ。いや、いや。現場で夫人を守るために割く人数はない。


「奥方は、妹ちゃんと一緒に私の家に行って。ミーガ、いや、ミケランジェリーナがいるから。」


「えっ?」


驚いてるところを見ると、私がミーガンを預かっていることは全くイエーツ夫人には伝わっていなかったらしい。


「いつ帰れるかわからないし、家には(赤ん坊の面倒を見れるような)女手がないの。ミケランジェリーナの面倒をみながら、連絡を待ってて。」


そう言うと、夫人は頷いた。ミーガンに早く会いたいのだろう、妹ちゃんをせかしながら、外に向かう。


妹ちゃんを追いかけようとする文官君の首根っこを捕まえた。


「君にはやってもらいたいことあるから。一緒に来て。」


未だた躊躇う捜査員たちに、宣言した。


「あんたたちが来なくてもやるわよ?!」


ようやく覚悟を決めたのだろう、捜査員が頷いた。


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