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勇者様と言うなかれ  作者: 大島周防
愛の狩人編
60/91

12

相変わらずののんびりした様子で、テオが部屋に入ってきた。


「いや、初めまして。やっぱ似てますねー。」


テオがネッドに向かって放った言葉。三人が三人とも、モーガンの殺害でピリピリしているのをあまり気にしていないようだ。なんだか肩から力が抜けた。


「何?」


と、問うと、ポケットからゴソゴソと紙を取り出した。


「イザドラから、『聞いてこい』って言われたんで。色々あるんで、メモしたんだけど。」


ここ数年、読み書きも勉強しているけれど、ひどい悪筆だからメモをもらっても読み取れないだろうな、と、ため息をついた。


「えーと、最初は・・・『あんた、モーガン殺したの?』ですね。」


皆が動きを止める。


しばらくして、ようやく我に返った私が返事をする。


「殺してないわよ!って、いうか、なんで、モーガンが殺されたって知ってるの?」


家令に向かって、テオが、ペンを貸してくれとねだっている。書かなきゃ返事が覚えられないわけじゃないでしょうに!!


「えーと、たぶんそれは、警備隊の捜査員が、ウチに来て、セスのこと探してたからでしょうね。」


「「「それ、先に言いなさいよ!」」」


三人で合唱した。


ネッドが、


「やはり、セスのことを疑っていますね。おそらくイエーツの方から情報提供があったんでしょう。」


と、つぶやいた。


テオは動じない。


「次はっと、『捜査員にはなんて言って話つければいいの』かな?」


自分で書いた字がなぜ疑問形なんだ。おまけに、イザドラのやつちょっと疑ってない?


「あ、それと、『追い払ったほうがいいならそうするけど?』だ。」


私は慌てて止めた。


「いや、やめてよ。事情聴取に応じたら、少しは様子がわかるんじゃない?そんな無闇矢鱈に敵を増やさないでほしいわ。」


まさか噛みついたりして心象悪くしてないわよね?


妹ちゃんが、


「逮捕されそうな勢いなの?」


と、テオに聞いている。なんで私の周りの女性陣は皆こう喧嘩腰なんだろう。


「違うんじゃないっすかね。二人できてましたからね。セスさん逮捕するなら、もっと人を呼ぶんじゃないですか。」


そりゃそうだ。卑しくも弓隊のトップなんだからね。


「出頭してはいかがでしょう。ミーガンを連れていって、友人であるモーガン夫婦から子供を預かったけれど、そのまま連絡がつかなくなった、ゆえに夫婦の行方を探していたと。」


ネッドが提案してくれた。


「まだ預かってるんですか。じゃあ、『子供どうしたの?』は、チェックかな。」


テオがブツブツ言っている。


「あと、『いつ戻ってくるの?』は?」


「それはわかんないな。緊急で戻ったほうがよい理由がある?」


「別にないと思いますよ。神殿との交渉もだいぶ終わりに近づいて来たんで。イザドラがハリソンの悪事を逆手にとって、うまくこっちのやりたい方に誘導してますよ。」


テオはイザドラが神殿に行く時には必ず随行している。一人では行かせない。テオが言うのならその通りなのだろう。イザドラのことはテオに任せて、私はまずは捜査員と話をしなくては。


「なんか忘れてるような気がするんだけどなぁ。」


テオがまだモゴモゴ言っている。


私の方が、はた、と思い出した。


「テオ、イザドラに、女性が一人逃げてくるかもしれないから、保護してくれって、伝えて。元は帝国から逃げてきたけど、今は娼婦として道に立ってるから。」


テオの顔が嬉しそうに綻んだ。


「あ、そうだ。『この女は誰よ。私にどうせいというのよ。』っていうのがありました!」


はあ?


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