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日中はミーガンをつれて、弓部隊の家族達に会いに行き、砦への移動を説得して回る。赤ん坊連れはめんどくさいと思っていたけれど、案外家族たちには評判がいい。
「セス様もご家族を連れてお引っ越しされるのですね!」
「赤ちゃん連れでも大丈夫なら、子供と一緒に主人の側にいられるかしら。」
まあ、この子は家族でもないし、連れて行く気もない。だけどしっかり利用させていただいた。
オムツを替えながら(ストラウス家の侍女が必要なものをひとまとめにしてカバンに入れて渡してくれた)
「そうよぉ。最初は小さいけれど、官舎も用意されるし、同じような家族が集まっているから、助け合うこともできるしねぇ。」
「長く離れ離れで暮らすのは、お子さんたちのためにもよくないと思うのよ。砦の隊長は、子供達のための学校も考えているようだし。」
「「さすが、勇者様よねぇ。」」
「女性の気持ちはやはり女性が一番よく理解してくれるわ。」
「治安はどうなんでしょう?難民が増えていると聞いていますけど。」
「難民については、神殿と聖女様が、慈愛をこめて彼らを救っているし、農業や畜産、工場で働くことによって自立し始めているのよ。増えてはいるけれど、問題にはなってないわ。むしろ、新たな労働力として期待されているのよ。それに、治安といえば、街に砦の指導によって、自警団ができているし、農閑期の軍事訓練も進んでいるから、むしろ王都より安全よ。」
成長期の街だ。すでに官舎を作る作業は着工しているけれど、まだまだ人手がたりない。ヴァルからは、家族がまず移動してくることで、それに必要な家などを建てる大工や労働者が王都から流れてくることを期待するといわれている。
現状では、飽和状態の王都にしがみついている技術者が、なかなか北の街に来る決断ができないようだ。公的事業による仕事を生み出すことによって、人口バランスよく増やすのを目指しているらしい。
とりあえず、北の街を売り込まないと。
確かな手応えと共に、昼の作業を終えると、そのまま、ゲイ仲間がつるむバーに向かった。
+
「あらあ!ミケちゃんじゃないの!」
まだ時間が早いせいで、客もまばらなバーで、馴染みのバーテンダーが声を上げた。その視線の先に、ミーガンがいる。
ミケって、猫かよ。
「私にはマデラ酒。この子には、ジュースある?」
「カクテル用のオレンジならある。」
そう言ってカウンターの中に消えたバーテンダーが、私の飲み物とミーガンのジュースと共に戻ってきた。
「ねえ、この子のこと知ってるの?」
ミーガンの頭をなぜなぜしながら、バーテンダーが答える。
「お母さんと一緒に、何度か・・・あんたのモーガンを探しに来たわよ。」
「私のじゃないわよ。それで?」
「モーガンが頻繁にここに来てた時は、お母さんがミケちゃんと一緒に迎えにきてたこともあったわね。」
「最近は?」
「モーガン自体、ここんとこ全く顔を見せなくなったから。てっきり家でミケちゃんのお父さんやってると思ったんだけど?」
「いない。」
「なんでアンタがミケちゃんの面倒見てるの?」
「わかんない。ミケって・・・」
「なんか長い名前だったと思うんだけど、思い出せない。ミケでいいじゃない。お母さんは?なんていったっけ?」
「ミュリエル・イエーツよ。どこにいるか知らない?」
バーテンダーは首を振った。
「悪い子じゃないんだけどね・・・赤ん坊連れてくるような場所じゃないって、何度か注意したんだけど・・・モーガンも・・・アンタがいなくなってから、荒れてたし。」
知らんがな。
「最近きてないの?ここに来ないとしたら、どの辺で遊んでると思う?」
「カスティーヨ通りで見かけたって噂は聞いた。」
チッ。面倒臭いところに出入りしてくれるわね。仕切り直しだわ。
マデラ酒をグッと飲み干すと、同じくオレンジジュースを終わらせたミーガンを連れて、ストラウス家に戻ることにする。カスティーヨは流石にミーガン連れていけるような場所じゃない。




