23 (暴力的表現注意)
本来でしたらこの章と22章を一緒にすべきなのですが、暴力的表現を読みたくない読者の方もいらっしゃるのではないか、ということで、分けております。未成年の方々、苦手な方は、どうか飛ばしてくださいませ。
「かはっ」
息苦しさに目が覚める。なぜ息ができないのだろう。ようやくうっすらと開いた瞳に、お腹の上に乗っかる黒い影が映った。
影から伸びる両手が私の喉に取り付いている。
霞む目でそれがハリソンだと気づいた瞬間、硬直した。
私の体の変化をいち早くハリソンが察知したのだろう。手が緩んだ。
「へっ、直ぐに殺さなきゃならんと思いましたがな、動けないんならちょっと楽しませてもらいましょうか。」
そう、動けない、動けない。
ハリソンの顔が私に近づく。
私の手はどこ?足は?どこに右手はあるの?混乱した頭で必死に考えるけれど、どこにも感覚がない。
口は?口?どうやって動かすんだっけ?
目は開いてる?
ビリッ。寝巻きの胸元が破れる音がする。首が硬って、見下ろすこともできないけれど。
「なあに、あんたの死体をあの狂人どものところに放り投げておきゃあ、いくらでも罪を被ってくれる。あんたの大事な、大事なキチガイどものところにな。」
いやあ!せっかく、せっかく傷が癒えてきたのに。せっかく、せっかく気持ちが繋がってきたのにぃ!
私の様子を見ていたハリソンが、口が動きそうになったのに気がついた。私の口を、ハリソンの手が押さえつける。あの手が、指が。唇の上を這う。
ハリソンの重みを感じ始めた。
ガブッ!
それはもう反射のようなものだろう。口を押さえる手に思いっきり噛みつく。
ああ、噛みつき方を覚えていてよかった。
「うわぁ!」
痛みでハリソンが叫んだが、食いちぎるまで話してなんかやらない!歯を食いしばった。ハリソンの左手が何度も私の頬を殴る。
痛みと共に感覚が戻ってきたことを感じる。
片手は頭の上だ!両手を突き出すようにして、かがみこむハリソンの目を狙った。
「ぎゃぁ!」
ぬるっとした感覚が私の指の先にある。
私の口を振り払った手で、ハリソンは顔を覆っている。
足が、お腹の感覚が戻ったぞ。足をバタつかせ、ハリソンの体の下から抜け出そうと足掻く。
「いやぁ!!!」
ずっと言えなかった。今こそ叫んでやる。
「いやぁ!!!」
世界中に届け。私は嫌だっ!
ドアが開いて、テオが、ヴァルが飛び込んでくるのが見えた。
全てが暗くなった。




