24 ヴァル・ストラウス視点
「ごめん。」
砦から駆けつけたセスが、頭を下げた。
「ハリソンの後を追わせるつもりだったんだけど。」
私は声を荒げた。
「なぜ、隊長からハリソンを追放したという連絡がここにない!」
セスと一緒に来ていた副官である騎士が同じく頭を下げる。
「申し訳ございません。オスロフ隊長は神殿に連絡を入れて、ハリソン司祭の処分の問い合わせの最中であり、まだ、司祭追放の手続きをとっておりませんでした。司祭は勝手に砦を出て行きましたが、隊長にそれを止める権限・・・」
ダン!
言葉を遮って、私は机を殴った。
「犯罪を犯した可能性のある司祭を、拘束も取調べもしないというのは手落ちだろう!」
私はセスをギロっと睨む。
「君らが扉を開けなければハリソンは出られないだろう。なぜ、出した!」
「すまない。」
セスは言い訳しなかったが、その日の門番が、「出ていくなら出ていけ」ぐらいの気持ちだったんだろう。城壁で勤務についている弓部隊にハリソンはことごとく嫌われていたという。
「イザドラの様子は?」
セスが問う。
「会わなかったのか?」
私が問い返すと、
「ドアを開けてくれなかった。」
と言う。セスでも駄目か。ため息を吐く。セスに状況を説明した。
「部屋から出てこない。食事も摂らない。何よりも、眠らないんだ。夜、イザドラの部屋の前で様子を伺っていたテオが、一晩中歩き回る足音を聞いたそうだ。」
私は、この会議に参加していたテオに目をやる。
「このままでは倒れてしまうのは目に見えてますよ。」
テオが呟いた。トラウマが一気に来たのではないかと思われた。
副官が、
「女性騎士を派遣いたしましょうか?聖女様も多少なりともご安心されるのでは?」
と、気を遣う。私をなんだと思っている?
「いや、女性男性にかかわらず駄目だ。指が、手が目に入るのが耐えられんらしい。イザドラの喉に、ハリソンの手形がくっきり残っていたからな。そのせいかもしれん。」
セスの顔が怒りで赤く染まった。副官も奥歯を噛み締めた後、口を開いた。
「ハリソンの処置は?オスロフ隊長から、必要であれば、砦で身柄を拘束するという旨お伝えするよう、言付かっております。」
「いや、新しく発足した自警団が、現在ハリソンを捕縛し、収監している。彼らの初仕事だ。街で起こったことだから、街で処罰したいと自治会にも言われている。裁判もするそうだ。」
「出来ると見てるの?」
セスの懸念は最もだ。自警団の初仕事がこれだ。
「ああ、元々街には簡易裁判を行えるようになっていたし、現行犯で、言い逃れのしようもない。裁判は形式だけで、処罰の方法はほぼ決定していると言われた。」
「どんな?」
「広場にハリソンを立たせて、皆で石を投げるそうだ。石を投げたい希望者がずいぶんいるらしい。イザドラも本人が知らぬところで、随分慕われているのさ。」
「ちゃんと死ぬの?」
セスの額に青筋が立っている。
「ああ。大丈夫だ。簡単には死ねんが、確実に死ぬそうだ。」
改て副官に命じる。
「以上の状況を、オスロフ隊長に伝えてくれ。」
「はっ。」
そう言うと、副官は、急ぎ部屋を出ていった。
「で、イザドラをどうするの?」
私にも見当がつかない。天井を見上げた私に、テオが声をかけた。
「俺に考えがあるんですけど。試してみてもいいっすかね。」




