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「聖女様、こちらにいらっしゃいましたか。」
後ろから声をかけられた。アガサ達だ。一緒にヴァルに報告に行くことになっていたので、ここで出会えたのだろう。
「ハリソン司祭もご一緒でしたか。」
その声に、ハリソンは、
「皆さんご苦労様でした。では、私は急ぎ神殿に連絡を入れますので、失礼します。」
と、言って立ち去った。
知らず知らずのうちに息を止めていたのだろうか、ようやく呼吸ができるようになった。
ハリソンの後ろ姿に、ベアトリスが、目を細めて、
「距離感のない男だな。」
とつぶやいた。
「あの手の男っているよね。ズカズカ当たり前のように踏み込んでくる。鬱陶しい、聖職者のくせに。」
アガサが容赦ない。
「聖職者だから油断なんないのよ。聖女様もその容姿なんだから、気をつけないと。」
キャシーが私に注意する。おそらく私の波打つ金髪、白い肌のことを言っているんだろう。一見ひ弱なのは自覚している。
ベアトリスが、私を見ながら首を傾げる。
「ストラウス先輩は、聖女様、『ああ見えても、街の御者より口が悪い』って言ってましたけど、なんか違いますね。」
ヴァルの奴め。
「難民達のためにも、慈悲深き聖女様路線で推していくから、あんた達もそのつもりでいてね。」
三人とも納得したような顔をしている。
「それと、ハリソンは要注意。女と見たら見境なしの可能性あり。」
今度は三人とも、ああという顔で頷いている。ハリソンの言動に、私の言葉を疑わせないようなものがあるのだろう。
皆でヴァルのいる執務室に向かう。歩きながら、キャシーが、
「明日の任務も参加できませんか?」
と、聞いて来る。
「なるべく参加希望者皆で順番にやるつもりなんだけど。」
と、答えると、皆が残念そうにため息をついた。
「皆やりたがるだろうな。この仕事に就けなかったら、食堂と調理室の掃除しなきゃなんないもんねぇ。」
キャシーの言葉にベアトリスも、
「便所掃除を女性騎士だけに命じてきた時は、反乱おこしてやろうかと思ったわ。」
と、付け加えた。
キャシーとアガサが、
「「えー、そんなことあったの?」」
と、驚く。
「ストラウス先輩が、騎士全員、平等に任務を課さなのであれば、女性騎士は引き上げる、って抗議してくれなけりゃあ、やばかったわよ。」
ベアトリスがため息混じりに説明した。
「オスロフ部隊長は第三師団出身じゃないからね。うちの師団長ほど慣れてないんだと思うわ。」
第三師団は、ヴァルの叔父が師団長をやっている。女性兵士の志願が一番多いところでもある。叔父とはいえ、ヴァルの任務は常に過酷だけど。
「ヴァルに続けって、みんな頑張ってるの?」
と、聞いてみた。
「「「恐れ多い!!」」」
異口同音で返事が来た。
ベアトリスが代表で吐露した。
「ストラウス先輩は・・・特殊です。勇者ですからね。抜きん出た胆力と実力があります。でも、私たちが皆ああなれるかというと、体力的に無理です。」
三人とも女性としては鍛えられているとはいえ、体つきは、少し大きいぐらいか。髪の毛の色はそれぞれ違うが、ポニーテールが初々しい新兵さんたちだ。ベアトリスが続ける。
「とはいえ、我々だってそれなりの覚悟で師団に入団したんです。自立して、経済的に苦しい家にそれなりに仕送りをするためだったら、女性であることを捨てるのは致し方ないと。」
アガサが軽い調子で言う。
「あら、私は諦めてないわよ。師団でいい男が見つかるかもしれないじゃない。あんだけ男がいるんだから、一人二人はまともなんじゃないの?」
言い終わらないうちに、三人とも吹き出した。キャシーが否定する。
「無理、無理。ウチの師団の連中と一緒になっても暮らしなりたたなーい。誰も持参金なんて期待できなーい。」
若い女の子が集まると姦しい。だがこの朗らかな様子を見ているとヴァルが面倒を見たがる理由がちょっぴり理解できた。
執務室の前に立つと、アガサが、
「アガサ・サフロン以下4名、入室許可を求めます!」
と、声を挙げた。
「入れ!」
中からヴァルの返事があった。




