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悪魔に転生したけど可愛い天使ちゃんを幸せにしたい  作者: 亜辺霊児
第一章 ノアズアーク法聖国編
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19話 パワーアップという名の初期リセット

「頑張って! でちおん!」


「そうよ! 何やってるのよ!」


 ルリとメキメキの声で我に返る。

 そうだ。このまま死ぬわけにはいかない。


 ルリは俺の体を掴んで、体が魔界に引きずり込まれないように支えてくれている。

 メキメキはいつの間にか俺から抜け出していおり、周囲を慌てた様子で飛び回りながら俺を応援している。

 しかしこのままでは魔力が尽きて俺は死ぬ。


「でちおん、魔力を切って! 全部なくなっちゃうよ!」


 そうだ。伸ばした魔力を切れば助かる。

 いや、切って良いのか? ここで切ったら俺は生き残るが、さらに弱体化してメキメキよりも役に立たなくなってしまうのではないか?


 それはまずい。

 逆に考えろ。

 今ならルリが支えてくれているんだ。

 踏ん張る方の力をすべて魔力の流れに回して逆流させるべく働きかける。


「切ることはできない! ここであきらめたら終わりだ。何とかするからルリは俺を離さないように耐えてくれ!」


 もうここからは気合いと根性だ。

 魔力に俺の全力の意識を働きかける。

 滝から落ちる水が逆再生するイメージだ。掃除機の吸い込むイメージでも何でもいい。

 とにかく俺は魔力を必死に引っ張り上げ続けた。無我夢中ではあったが永遠に続くような時間とも思えた。



 そしてそのときがきた。

 急に引き上げるのが楽になったのだ。

 どうやらある程度魔力が回復して引き上げる力に余力が出てきたようだ。

 その調子で引き上げ続けていると一定の量が回復したところで、魔力を引き上げ続けても回復しない状態へと行き着いた。

 どうやらそれが俺の魔力量の限界らしい。

 魔核にも圧迫感を覚えるのでここでやめるべきだと俺は判断した。


「ありがとう。もう離してくれて大丈夫だ」


 俺は魔力のパイプを切ってルリに感謝の言葉を告げた。

 そして俺は自分の体を確認する。

 俺の毛玉のような体は何倍も膨れあがり、ルリよりも大きくなっていてまるでバルーンのような有様だ。魔力の風船だな。


 そこから形を整えるべく元のオオカミの姿をイメージして具象化魔法で体を再生する。

 大きなバルーンとなっていた体は急速に縮んで人型となり、角と羽の生えたオオカミの姿へと戻った。別にこれが本当の姿というわけでもないが何となく落ち着くし動きやすいからな。


「良かった! 元の姿に戻れたんだね! でちおんが死んじゃうかと思ったよ」


「すまない。心配をかけたな」


「ホントよね! あたしたちを心配させるようなことはこれっきりにしてよね」


 変身が終わって駆けよってきたルリとメキメキに心配されながらも、俺は体の状態を確かめる。

 具象化魔法による再生でも取り込んだオオカミの要素が体内に残っていれば、受肉した体と違いはないようだ。それどころか魔力が魔界にいたとき並に回復してパワーアップしている。

 今の魔力量なら聖騎士団の団長相手なら何とか戦えそうな気がするくらいだ。


 ルリがいればこの再臨もどきは回復する手段として使えることは証明できたが、次も上手くいくかどうかは分からないのでこの方法は最終手段だな。

 やってみて人間や他の悪魔が真似ない理由が分かった。強力な核を持つ七聖天使や七凶悪魔でなければ再臨は危険すぎる手段なのだ。神気の場合もおそらくだが天界へ神気が吸い込まれて死ぬことが予想される。真似してやったやつはことごとく死んだのだろう。


「今回はルリのおかげで何とかなったけど、やっぱり俺は七凶悪魔とかではないらしいな」


「もう! 最初から言ってるでしょ!」


 ルリが珍しく怒った様子で俺を軽く叩いてきたが、心配されたことに少し嬉しさを覚える。


「すまんすまん。それはともかくこれからの話をしたいんだ」


「これからの話?」


 過程はどうあれ結果的に俺は回復できたので、これからの選択の幅広がる。

 この体であるならルリに頼り切った移動をしなくて済む。

 もし毛玉の姿で運んでもらう場合は、ルリに抱えてもらうことになる。そうなると俺たちは外敵から不意打ちを受けたときに対処が遅れやすく、周囲を覗いながらの慎重な移動が必要となってしまう。

 その点、二人とも手ぶらで移動できるなら、移動距離も稼げて危険への対処も容易となる。

 聖騎士団のやつらにはいずれ見つかるかもしれないが、少しでも距離をとって考える時間を得たい。


「そうだ、これからの話だ。できれば悪魔に対して友好的な人間がいる場所に俺は行きたい。そういった相手ならば話もしやすいし、俺たちの目的とする世界平和に近づけるヒントを得られるかもしれない。ルリは何か心当たりはないか?」


「う~ん」


 ルリが腕を組んで考える仕草をする。

 いつの間にか俺の肩の上で横になって猫のように丸まっているメキメキがつまらなそうに欠伸をしていたが、この際もうそれは気にしない。

 メキメキにとって人間の平和などどうでも良いことなのだろう。メキメキからしたら俺がかけた爆弾があるから離れられないだけだしな。別に解除してやっても良いんだが、「それじゃさよなら」と離れて行かれたらそれはそれで寂しいものがあるな。


「そうだ! ガランディア帝国とかどうかな?」


「そこはどういうところなんだ?」


「悪魔や魔族や亜人族がたくさん暮らしてるって聞いたことあるよ。だからうちの国と仲が悪いけど」


 魔族や亜人族か。また知らない名称が出てきたな。

 悪魔とどう違うのか分からないけど、聞いたらまた「知らないの?」とあきれられそうだから黙っておこう。どうせ会えば何となく分かるだろう。


「あと、あれだよ。皇帝が七凶悪魔の一人、憤怒の悪魔(サタナエル)だって話だよ」


「なんだと!? 悪魔が暮らしてるって話だったからもしかしてと思ったけど、七凶悪魔がそんなに大々的に国を持ってるのか?」


「うん。そうだよ。悪魔が治めている国はそこくらいしかないけど」


 地上唯一の悪魔の国か。

 人間を支配しようとする魔王のようなやつだろうか?

 一度は会ってみたいが、ルシファーみたいに話が通じないやつだったら困るってのはあるな。

 とりあえずはノアズアーク法聖国のやつらより話ができる相手と思いたい。

 しかし天使をそこに連れて行って大丈夫だろうか?

 敵対しに来たと思われたり、悪魔への手土産と思われるかもしれないが……。


「まあ、考えてても分からないし、他に当てがないならそこへ向かってみるか。それでそこはどの辺りにあるんだ?」


「ここからまっすぐ東の方だよ。ルリが全力で走って数日かかるくらいかな」


 それって結構遠いのでは……。

 距離の心配はさておき、今回もルリの先導で俺たちはガランディア帝国とやらを目指すのだった。

☆メキメキのちょこっとお便りのコーナー


 読者の方から質問や感想や要望を紹介していくコーナーさ。

 特に大きなネタバレにならない範囲なら作者の代わりに答えるけど、あたしが言うことだから話半分に聞いた方が良いかもね~。

 ちなみにまったく何も感想や質問や要望がこなかったり、作者が忘れたりするとこのコーナーは自然消滅するからよろしくさ☆


 今回は告知だけでさよなら~♪

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