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鉄薫る世界にて  作者: キャバルリー
第九章:トラウマ ~ルドマン編~
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第一話

───7月30日4時頃、南東部カトレアにて。

カトレアの一画にはアパートがいくつか建っており、そこには一般人を始め様々な人たちが暮らしている。

アパートの一つ「ウォルナット」、その214号室。薄暗い部屋に三人の女性が机を取り囲んで座っていた。


「…ツモ。メンピン一発ドラドラ…裏1。二本場だから6200オール」

「えぇー!?幾らなんでも四巡目でそれっておかしいじゃないの!?」

「…ヤッベェ、東2でもう飛びそう…」


この部屋の主チェシャは相変わらず虚ろな目で、しかし得意げな表情でアリーチェとリリから点棒を受け取る。

プライベートで親交の深いこの三人は、時折こうやって深夜から明け方にかけて麻雀卓を囲むほどの仲だ。


「あーもう…今日はジェシー一人で仕事だからこうやって遊びに来たのに…財布が空っぽになっちゃうよ…」

「今からでもレートを下げてもらって構いませんが。やはりデカピンはリスクが」

「はぁ?ウチ等みたいな仕事やってる人間にとってデカピン以外小遣いにもなんねぇしー」

「そ、そうよ!!大体まだ負けたわけじゃないし…!」


かつて刃を交えた相手であることが考えられないようなやり取りを交わす奇妙な関係の三人は、雀牌をかき混ぜて山を作る。


「…最近、リリさん自由な時間が多いようですね」

「ん?まー仕事ばっかじゃ疲れるしー、それに色々あるしー」


リリはそう言って床に置いてあったエナジードリンクを少し喉に通した。


「えっとさ…リリ、あのレイヴンの所に通ってるって話、本当なの?」

「…ウィルソンから聞いたのかよ?」

「うん、そうだけど…あんなのに近づいたら危ないよ?」

「テメェに心配される筋合いねぇしー…コイツはウチ個人の問題でもあるから、気にしないでくれる?」

「…レイヴンさん、そんなに危険な方なんでしょうか。私には愉快な人にしか思えませんが」

「ハァ…チェシャもこの街に来て間もない頃襲われたんでしょ?」

「はい。力試し、と仰られていたのでこちらも全力で試させてもらいました」


そう言いながらチェシャはチョコバーを齧る。


「あの人はホントおっかないんだから、気をつけないとダメだって」

「んだよ、アリーチェはあのババアの事そんなに恐いのかよ」

「いやね…ジェシーがレイヴンの事を全然話そうとしてくれないから、それだけ危険な人なのかなって」

「はぁ、テメェ知らないのかよ…レイヴンは…っと、ワリィ、電話だ」


リリは床に置いていたスマホを手に持つと、そそくさと部屋から出て行った。


「…例の武器商人の件が片付いたと言え、リリさんがこれだけ仕事に出ていない事、変だと思いませんか?」

「うーん、まぁ確かに…やっぱ何かあったのかな…」

「生憎リリさんと我々はこの街の地位が全然違うので聞き様がありませんが」

「…そうだね。ファア…流石に眠くなってきた…」


その後、リリの電話が終わるまで二人は眠気と戦いながらじっと座っていた。


「ワリーワリー。そして更に悪いんだけど急用が入った。今回の局は保留って事でよろー」

「え、ええ…急用じゃ仕方ないか…」

「分かりました。今度時間が空いたらまた連絡してください」

「はいはい、んじゃ」


リリは軽く手を振って部屋から去ってゆく。その背中をアリーチェは寝ぼけ眼で見ていた。


「…二人じゃ麻雀は出来ませんね。ゲームでもしますか?」

「いや、私もそろそろ帰ろうかな…ジェシーもそろそろ帰ってくるだろうし」

「そうですか…そういえば、今日はジェロシアさん何のお仕事で?」

「えっと、何かイブリースの社長が帰ってきたらしくて、その接待だって。凄くめんどくさそうにしてた」

「接待…枕ですか?」

「ジェシーに限ってそれはないって。それにあの社長もセクハラジジイだけど手は出さないらしいし」

「そうなんですか」

「…あ、電話」


アリーチェは床に置いてあった携帯を手に持つ。


「もしもし、どうかした?」

「フフッ、一人で泣いてないかと思ったけど大丈夫みたいね」

「はぁ!?子供じゃないんだから、からかわないでよ!で、仕事終わったの?」

「もう少しかかりそうね、社長がトイレに行った隙に電話してるのよ」

「ふーん…ねぇ、接待って何してるの?」

「あらあら、もしかして私が食べられちゃうんじゃないかって心配?」

「違うわよ!」

「明け方なのに声が大きいわね…ただの食事会を兼ねた顔合わせよ。とってもつまらないわ、ご飯もまずいし」

「…へぇ、そうなんだ」

「あ、帰ってきた。また終わったら電話するわ、それじゃ」


南部区域ワトル、イブリース本部にて。

社長室のソファでジェロシアは携帯を胸ポケットにしまう。

つまらなそうにテーブルの上に並べられたピザやコーラといったジャンクフードを見ながら、相手の帰りを待った。


「ふぅ…いや悪い悪い、そのおっぱいを見ていたらついムラムラしてしまって」


セクハラ紛いの発言をしながらその男はジェロシアの向かいに腰をかけた。

イブリース取締役、皆からは社長と呼ばれているその男は厳しい顔つきと体格の良さ、身なりの清潔感とは全くそぐわない性格の男だ。


「私のには興味ないくせに、お世辞なんて要らないわ」

「んん?ご機嫌斜め?どれどれ、オジサンが悩みを聞いてあげましょう」

「あんたに相談したところで茶化されて終わりだろうし、やめておくわ」

「うーん、ひどい。これでも若い子のお悩み相談のプロなのにねー」


そう言って社長はピザを一切れ持ってかぶりつく。


「その年でこんな体に悪いもの良く食べれるわね」

「此処は本場アメリカ!ジャンクフードを食わずして何を食うっていうんだい?」

「…あんた日本人でしょ」

「そだけど?」

「…フフッ…つくずくつまらないわ。あんたとの食事は本当につまらない。早く用件を伝えて開放してもらえないかしら?」

「上司に向かってなんたる暴言!…それに、別に用件とかないんだけどなぁ。あそうだ、プレッツェちゃんは元気だった?」

「…ええ」

「なら良いんだ、いきなりいなくなるから心配してたんだよ」

「あんたは知ってたの、あの子があそこにいたという事」

「噂は一応、ね。ただ会いにいくわけにもいかんだろう?」

「それもそう、か」


ジェロシアは紙コップに入ったコーラに少しだけ口をつける。すっかり炭酸も抜けてくどい甘味が口内を犯す。


「あと、アリーチェちゃんはちゃんと成長してる?」

「単純な戦闘面だけならイブリース上位クラスじゃないかしら、もしかしたらファミリーの主力とも渡り合えるかも知れない…でも経験値の少なさと、覚醒の条件が不安定なのが課題ね」

「…やはりまだ変異が起きてしまうか…」

「二年前に比べれば格段に感情を制御できるようになっているけど、まだまだ安定はしていないわね」

「それでもあの頃に比べればマシって感じか…キリルから彼女の転属を依頼された時はどうなる事かと思っていたが、ジェロシアちゃんに預けて正解だったようだ」

「…あの子の預かり期間は何時までだったかしら」

「五年、って契約だが、最終的にはアリーチェちゃんの意思によるだろう。あの子も金の為にこの世界に入ってきたから、欲しい分だけ稼げたら足を洗うかもしれない」

「あら、あの子お金が欲しかったの。ならもっと取り分を増やしてあげないと」


ジェロシアの言葉を聞いた社長は驚いた表情で彼女を見る。


「何だ、知らなかったのか?」

「お互い心の深淵は覗き込まないようにしているのよ。どうせあの子も、暗い過去を背負ってるんでしょ?」

「…アリーチェは孤児院出身でな、今も其処に仕送りをしているんだと」

「へぇ、やっぱりしっかり者ね。でもそれだけの為にこの世界で金を稼いでるなら少しリスクが大きすぎやしないかしらね」

「確か…あの子の兄も元シルヴァーニ家第三部隊所属で、今は本家で働いているらしいが…その兄のコネや本人の希望でシルヴァーニ家に入り、気がつけば殺し屋」


社長の言葉を、ジェロシアは虚ろな目で返事もせずに聞き続ける。


「…似た者同士、ってことだ。お前とあの子はな」


セッターを取り出し、口に銜えるジェロシア。

彼女が今何を想っているか、社長には大体察しがついていた。


「ま、これからも上手く世話してやってくれ」

「…ええ」

「さてと、長話が過ぎた。そろそろお開きとしようか。帰り道は気をつけてな、ジェロシアちゃん」

「そっちも老いぼれなんだから気をつけなさい。オヤジ狩りに遭っても知らないわよ」

「ジェロシアちゃんに心配してもらえてオジサン嬉しいねぇ」

「はいはい、喜んでもらえて幸いだわ」


───8月1日10時頃、南東部カトレアにて。

今日はカトレアに新しく出来たショッピングモール「パンタム」のオープンセレモニーが行われる。

カトレアに並ぶ他の店も大々的にセールを行っており、ちょっとしたお祭りのようだ。

歩道を歩きながら晃司は道行く人々と共にパンタムへ向かっていた。

このお祭り騒ぎも去るとこながら、気になったのは警備の厳重さである。

いたるところに黒スーツの男が無線機をつけて立っており、それだけ今回のセレモニーが重要なイベントだと言うことを物語っている。

聞いた話ではキャスタニアの市長も出席するらしいし、もしかすれば事件が起こる可能性も…いや、流石にこの警戒態勢ならありえないか。

しばらく歩いていくと、遂に一際大きな施設へとたどり着いた。


「…やっぱデカイなぁ…」


流石に郊外の超大型施設と比べると規模は小さいが、この商業都市の中においてはかなりの面積を誇っているだろう。

施設前には幾つもの出店が立ち並んでいる。

見覚えのある移動販売車とステラの姿も見えたが、接客で忙しそうだったので声をかけるのはやめておいた。

施設の正面エントランス前には特別多くの人溜まりが出来ていた。ここでセレモニーが行われるのだろう。

晃司は人ごみの中を上手く潜りつつ、最前列へとたどり着いた。

ガヤガヤとした喧騒は、程なくして聞こえてきたアナウンスと共に静まり返った。


「皆様大変お待たせいたしました。これよりパンタムのオープンセレモニーを開催いたします…まずはキャスタニア市長、レオナルド・エルハイムさんによる挨拶になります」


アナウンスの後に、一人の男性がエントランス前へと出てきた。

まばらな拍手と観客の冷めた目線から、この市長の支持率の低さが窺われる。

マイクスタンドの前で市長は止まり、マイクを手に持つ。


「えー、改めまして、市長のレオナルドです。このたびはお集まりいただきありがとうございます。さて、数年前から計画しておりましたこのショッピングモールも、今日遂にオープンすることができました…」


話が長い。その上とてもつまらない。心にも思っていないような市民への感謝の言葉や、この街の惨状をまるで全く知らないかのような発言の連続、これじゃあ呆れられて当然だ。

まるで校長先生の話のような無駄な時間を五分ほど過ごし、やっと市長の話が終わった。


「ありがとうございました…それでは次にテープカットを行います」


アナウンスが流れると、数人の男と女がエントランス前のテープの前に出てくる。

恐らくスポンサーやテナントの会長だったりするのだろう。いかにもお偉方と言ったオーラを漂わせている。

一人一人ありきたりな一言コメントを放ち、いよいよハサミをテープの前で構え始めた。


「それではパンタムのオープンを記念いたしまして…」


その瞬間会場に響き渡ったのは銃声。スターターピストルだと最初は思ったが、すぐに実弾入りの銃声だと気づく。

テープカット参加者の一人、市長の隣に立っていた男性が脇腹を押さえてその場にうずくまる。

華やかだがつまらないセレモニーは、一転して混沌の渦に巻き込まれた。

ガードマンが何人も飛出してきて参加者を護衛し、観客は悲鳴をあげて会場から逃げ去る。

テレビカメラは被害者を映す者と犯人を探し回る者に分かれ、テープカット参加者達はガードマンの裏で怯えているようだ。

だが晃司は落ち着いて辺りを見渡す。この状況で自分が撃たれる事はないはずと高をくくっていた。


「…いたぞ、捕まえろ!」


他のガードマンたちが逃げ回る観客達の中に押し入り、犯人を捕えようとしている。

生憎此処から犯人の姿は見えない。が、晃司の視界に更に別のものが飛び込んできた。

それは恐らく矢だ。一本の矢が群集の中へ落ちて行き、そして短い断末魔が聞こえてきた。

一斉にガードマンが其処へ集まり、遂に犯人が捕まえられた。

晃司もその場へ駆け寄り、野次馬の一人となる。

犯人の右肩には矢が突き刺さり、その手からは拳銃が滑り落ちていた。

どうやらまだ息はあるようだ。犯人は若い男性、どうやらアジア系らしい。

テレビカメラが続々とこちらへとやって来る。これはかなり大事になってきた。

ふと撃たれた男性のほうを見てみると、数人のガードマンが必死に応急処置を施しているようだった。

その中に一人、どこかで見たことあるようなポニーテールの女性がいた。


「あら晃司君、アンタも野次馬根性凄いねぇ」


そう言いながら晃司の隣に並んだのは、案の定ステラだった。


「どうもです…えっと、相当ヤバイことになりましたね」

「…あ、え、あっちゃー、こりゃ…相当なんてもんじゃ済まないよ今回は…晃司君、ちょっと此処はヤバイだからこっちに来て!」

「え?あ、ちょっと!」


ステラは無理やり晃司の腕を掴んで事件現場から撤退した。

移動販売車まで駆け寄り、手早く店を畳むと即座にステラは運転席に乗り込んだ。

晃司も息を切らしながら助手席に乗り込む。


「…って、乗ったはいいけど人が多すぎて車が出せそうに無いね」

「そ、そうですね…はぁ…いきなり走らなくても…」

「…晃司君、今回はタダで情報をあげるから此れ聞いてすぐに帰るんだよ、いいね?」


そんなに念を押されると言う事は、あの男性はかなりの大物なのだろうか。


「と、とりあえず色々整理したいんで教えてもらっていいですか…?」

「あの撃たれた男はね、七大ファミリーの一つ、ルドマン家の現家長、ロイド・ルドマンなんだよ。どうやらフロント業の警備会社の会長で出席してたみたいだけど…」


ルドマン家…そうか、あの女性は先月の定例会でビルに居た、確かアコニットとかいう名の女性だ。

しかしルドマン家のトップが撃たれたとなると、どう考えてもかなりの大事件だ。


「それって、かなりヤバイですね…」

「いやぁ、ホントにヤバイよこれは…トップが襲撃食らったのなんて何年ぶりだか…いいかい晃司君、何度も言っておくよ。死にたくなかったらどこか安全な場所に引篭もる事、いい?」

「そ、そんなに大事へ発展するんですか…?」

「当たり前じゃない!犯人がもし七大ファミリーの何処かだとすれば街全体で大抗争になる…外部組織だとしてもカトレアは危険地帯になるよ、絶対に」

「な、なるほど…」

「これはちょっとアタシも身を守るために情報を仕入れないと…逐一晃司君にも情報は流してあげるから、気をつけるんだよ」


突如起こったルドマン家トップ襲撃事件。テレビによる報道より遥かに早く、街全域にその情報が拡散された。

それを聞いて動き出す者達の数は計り知れず。表と裏の世界の住人全てがこれから起こりうる危機に身を震わせる。


───同日同時刻、キャスタニア郊外、レイヴン宅にて。

Tシャツにジーンズを履いたレイヴンは右手に訓練用のナイフを持ち、目前でPTRS1941を構えるリリを微笑みながら見つめる。

リリはPTRS1941を棒術の如く巧みに振り回してレイヴンに迫るが、いとも容易く軌道を見切ってレイヴンは後ろに下がる。

そして一瞬の隙を突いてレイヴンは一気にリリの懐に潜ると、振り払われた鉄塊を避けつつ彼女の喉元にナイフを突きつけて見せた。


「…勝負あり。大分動きに隙が少なくなってきたけど、まだまだその銃に体の重心を奪われている。それじゃ雑魚はともかくそれなりにナイフ使える相手には敵わない」


そう言ってレイヴンはナイフでリリの頬を軽く叩く。リリはため息をついてPTRS1941を下ろした。


「チッ、何でコイツが見えんだよ…マジ意味わかんねーし」

「別に見ちゃいない、予測してるのさ。武器の重さ、相手の体格、スピードから概ね軌道は見えてくる…で、前々から思ってたけど、お前さん何か近接術でも学んでた?」

「あぁ?ん、まぁ一応…」

「やっぱり。で、あの振り回し方は…薙刀、やってた?」


その言葉を聞いてリリはきょとんとしている。どうやら見事正解を引いたらしい。


「やっぱり。なら一つアドバイス、銃口をもっと重くしなさいな。銃剣巻きつけるなりすれば格段に振りやすくなる。お前さんの体には既に薙刀術が染み付いて…」

「うっせぇ!薙刀なんて…ウチは…ウチは…」

「へぇ、えらく拒否反応見せてくるわねぇ」

「テメェにはカンケーねーし、薙刀の話は一切すんな、じゃないと…」

「じゃないと殺すって?じゃあ一杯話してあげる。そうすればヤリ合えるんだろう?」

「…超ウゼェ…あ、電話」


リリは右足のガーターベルトからスマホを取り出して耳に当てる。


「あい?…は、マジ?ああ、リョリョ。じゃ」


スマホをしまったリリはPTRS1941を構え直してレイヴンのほうを向き直した。


「ファミリーの急用が入っちまった、稽古は延期でよろ」

「えー?つまらないわぁ…で、用件は?」

「言える訳ねーし…でも、嫌でも知ることになるんじゃね?イブリース伝いで」

「そんなに大事か。ならまた仕事が入りそう。じゃあ今度は街で会うことになりそうねぇ」

「さぁね。んじゃ」


リリは軽く手を振り、家の前に停めてあった原付へと向かって行った。


「ん、電話」


ポケットに入った携帯が震動し、レイヴンはすぐに携帯を取り出す。


「もしもし、何?」

「…ロイドが撃たれた、脇腹らしいから命に別状はないと思うが…」

「あーらあーら、それは大変。お相手さんは?」

「ルドマン家が拘束したらしいから、正式な情報はまだかかるだろうな」

「成程。で、用件はそれだけ?」

「…恐らく仕事が入る。何処からかは知らんが」

「でしょうねぇ。首を長くして待ってるから、飛びっきり楽しめる逸品を持ってきて頂戴」

「期待はするな、それじゃあな」


電話の相手はイブリースの社長だった。レイヴンは不敵な笑みを浮かべながら携帯をしまった。

七大ファミリーのトップが撃たれた。それはつまり開戦の合図。

果たして何処まで巨大な抗争へ発展するだろうか。そして何人殺せるだろうか。

湧き上がる狂気に胸を躍らせながら、遠くへ走り去ったリリの背中をレイヴンは眺めていた。

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