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19 紛争は続く ~~海軍増強~~

ちょっと短い目ですが、投稿します。

誤字脱字、その他ご意見等あれば、是非お願いします!

ナントの町は、合議制により統治されていた。

前の代官であったゴームルが、ブリトン王国の襲撃に際し、壮烈な討ち死にを遂げた後、経済関係代表としてヴェルナー、工場生産、造船所代表としてユーロー、定期市管理としてガーリナの父親(ネイの父でもある。)、軍事関係代表としてテイズ(水軍の長)、市民代表としてトゥール出身の商人であるレイモンダルムの5人が必要に応じて会合して施政を掌っていたのである。


ゴームルの遠縁の少年は、現在はロゴの館に引き取られてテウデリクが鍛えている。ゆくゆくは、前記の市政委員会ともいうべき合議体に加えられ、最終的には代官となるかもしれないが、少なくとも現時点では、5人で重要事項を決定している。


ゴームルの館があったところは、現在もそのままにされている。煉瓦造りの立派な建物で、広い会議室があるから会合には丁度良いのだ。


ユーローが報告をしていた。

「以上のとおり、被害は、関船1隻が沈没、1隻が一部破損、小早が3隻焼損しました。」


前夜、突然に襲撃を受け、ロゴの船が放火されたのだ。


「人的損害はありません。」

ユーローが報告を終えた。


「実際問題として、水軍力の点ではどうですか?」

ヴェルナーが質問した。

一応、ヴェルナーが議長格ということになっている。


「まあ、特に敵とかいない状態だったからな。別段問題はない。」

テイズが答えた。

ロゴの従士頭だったが、現在では水軍の長がすっかり板についている。


「水運という点ではどうでしょう。」

ヴェルナーがレイモンダルムに聞いた。


「少しきつくなります。もっとも、安宅船を動かして頂ければ、全く問題ないですが。」


安宅船とはいうが、純粋な和船ではなく、古代ローマの造船技術も活用し、しかも魔の森の木材とミスリル製の釘を使っている大型船いずもは、河口から海に出して航行訓練をしていたところだった。そろそろロワール河を遡っても大丈夫だろう。


「では、さしあたっての問題はないということになりますね。焼けた船については、再度建造することにします。今後のことを考えると、もっと増やした方がいいかもしれない。これはテウ様に一応報告をしておきますが、もう建造は先に初めてくれ、ユーロー。」

ヴェルナーはユーローに指示する。


「分かった。」

ユーローも答える。


「みなさんも、それでよろしいですか?」

ヴェルナーが出席者を見渡す。全員うなずいた。


「誰の仕業なんだろうな。」

テイズが、本題に入った。


「状況を確認しましょう。さっき、ユーローがまとめてくれましたけど、数日前から、ナントの町に旅人などを装って複数の怪しい人間が入って来ていました。そして、昨日の夜、一斉に港に集まり、船に火を着けた後、ロワール河に飛び込んで逃亡した模様です。」

ヴェルナーが簡潔にまとめる。


「ふむ。」ガーリナの父が相槌を打つ。正直なところ、定期市の管理で一杯いっぱいなのだ。一応顔を出してはいるが、基本的には自分の領域に関係がなければ賛成に回ることにしている。


「つまり、相手は複数の人間を雇うことのできる存在であり、しかもロワール河の下流域で人間を回収する能力がある、ということになります。」

レイモンダルムが推理する。


「そうなりますね。そうすると、現在戦闘中のブリトン王国は候補から外れます。」

ドワーフには、そのような秘密工作はできない。そこまで人間との関わり合いがないのだ。ケルト人ならできるかもしれないが、ナントの町にまで潜入するのは困難だろう。


「そうすると、候補は二つ。一つはポワティエ大公、もう一つは、ロワール河水運_組合ギルドだ。」

テイズが考えを述べた。


「有力な候補はその二つですね。もっとも、西隣りの領主、ガレオ様、北隣りの領主ギリエン様、トゥールの商業ギルド、トゥール都市伯、ロワール河対岸の領主たちも考えられます。」

ヴェルナーが容疑者を広くとった。


「動機がない。」ユーローが反論する。


「いや、嫉妬しているかもしれない。ロゴ様の力が強くなることを警戒しているというのもある。それに、周辺から住民の流入も続いているから、破壊工作を仕掛けてくるというのはありえることだ。」

ヴェルナーが考えを述べる。


「そうだが、ここまで手の込んだことをする資金力、組織力を持っている勢力は少ないよ。」

ユーローも譲らない。


「どちらももっともですが、要するに最有力候補としては、さっきの二つ、可能性は少し低いですが、他の勢力の仕業もありえる、ということでしょうか。」

レイモンダルムが割って入った。


「では、こうしましょう。まずテウデリク様にご報告して、シノに調査をして貰うことにしましょう。それから、テイズ殿は、イズモに乗船してトゥールまで遡上し、周辺を威圧すること、レイモンダルム殿は伝手を手繰って水運_組合ギルドに探りを入れること、以上について、テウデリク様の許可を頂き次第、取り掛かるということでどうでしょうか。」

ヴェルナーが結論を出す。


「承知した。」

全員が同意した。


「警備を固める必要がある。」

ユーローが補足した。

「そうだな。」

ヴェルナーが考える。


「そもそも港とはいいつつ、ロゴ様の船も、他の船も適当に停泊していた。水軍関係の船は一か所にまとめて離れて停泊させ、そこで警備する必要があったんだ。ユーローの方で西岸に適切な停泊場所を作るというのはどうだろうか。」

ヴェルナーが解決策を示す。

ナントの町は、魔の川がロワール河に流れ込むところに作られている。ロワール河上流側、つまり東側は一般市街、西側は、どちらかというとロゴの領内から集められた労働者が働く工場地帯となっていて部外者が入って来たらすぐに分かるような作りになっている。


「それがいいな。」

テイズが即座に同意した。その方が安全だし、機密も保たれやすい。

「設計に取り掛かることにする。」ユーローも同意した。


「では、以上とします。次の討議事項は・・・。」



  ○ ○ ○ ○ ○



ロゴの館を出て、小山を降りるとすぐに城内広場があり、その一画を煉瓦造りの大きな建物が占めていた。

有事に際しては避難場所、地下は貯蔵庫となっている。

平時には特に何も使っていなかったが、改めて学校を作ることとされた。

領内から優秀な子どもたちを集め、読み書き算盤、歴史、法学、経済学、農業技術、工業技術、医学、薬学などを教えていくことになっている。


「おはよう諸君。セミナリオ・ロガにようこそ。」

ロゴの学校という意味で、セミナリオ・ロガという名前となった。

そこでテウデリクは入学式に出席していた。もちろん学校側の立場だ。


「諸君は、各村の期待を背負い、この学校に来た。この学校は、領主ロゴ様が作られた学校で、諸君はここで様々なことを学び、そこで得られた知識を使い、諸君らの村をますます発展させていく役割をはたして行くことになる。日々研鑽を積むように。」


テウデリクは長く喋るのは苦手なので簡潔にまとめた。あとはガーリナが適宜補足して説明なりしてくれるだろう。


檀上から降りて、母クロティルドのところに行った。


「母者、ここもにぎやかになりますね。」テウデリクは母に話し掛けた。

「そうね。全寮制? っていうの? 子供たちもここで寝泊まりするのね。可愛いわ。」

クロティルドもにこにこしながら答えた。

領内全域から集めたので、通いにすることができなかったのだ。しかし、ここで数年間ぶっ通しで学べば、領内に知識が拡がり、人材不足に悩むこともなくなるだろう。


「カッツ、イッチ、お前たちもできるだけ同席するようにな。」

テウデリクは弟と妹に話し掛けた。

信勝とお市。前世でも弟と妹だった存在だが、テウデリクはこの二人も優秀な部下に鍛え上げるつもりだった。


「バウバウ!!」

二人もうなずいている。


「あらあら。じゃあ、私も一緒に勉強することにするわ。」

クロティルドもやる気らしい。



  ○ ○ ○ ○ ○



「寒い! 揺れる! うっとおしい!!」

ヒューゴは叫んだ。マストの上に登っている。


「島は見えるか!!」

ミヒャルが呼びかけた。


「いや、全然ですよ。もう少し進まなくちゃ。」

ヒューゴが答えた。


「方向は間違っていない。多分。」

舵を取りながら、テウデベルト王子が躊躇いながら言った。


「そいつは安心ですね。」

ヒューゴが答えたが、風の中のこと、誰にも聞こえていない。


ケルトのドルイドと名乗った老婆は、マン島の一番高い山の上に祭壇があり、そこにケルティック・クロスがあると断言した。

聖パトリキウスは伝説と異なり、ヒベルニア本島には辿り着くことができなかったらしい。

足がかりにマン島で布教し、そこには少数の聖教徒が残っているが、大部分は古い異教を信仰している。ヒベルニアの王がマン島に陣を構え、年に何度もブリテン島に襲撃しに来ているらしいので、その王と交渉すればなんとかなるだろう、と投げ遣りな説明をしてくれた。


ヒベルニアの王とどう交渉するべきなのか。

同族でもなく、ローマ文明の外側にいた民族のこと、共通する文化的背景もない。恐ろしいほどの蛮族だと言われているのだ。

なにしろ、殺した人間の皮を剥いて、盾に張り付けていると言われている。

戦争で討ち取った敵の小指の骨に穴を開け、それを首飾りに使っているそうな。首飾りが重くなればなるほど、武勇のほどが知れるという趣向らしい。


そのような蛮族の王に会って、「ケルティック・クロスを貰えませんか。」と頼まなければならないのだ。訳が分からぬ。


「あ。見えた。」

マン島とおぼしき島影が見えてきた。

内心、見つからなければ良いのにと思っていたのだが、やはり見つけてしまった。ヒューゴは毒づきながら、マストを降りて行った。

ご一読ありがとうございました。

そういえば、勢いに乗って、信勝とお市を誕生させていたのをすっかり忘れていました。

しばらく平穏な日々になってしまいそうですが、もう少しメリハリを意識して書いて行きたいと思っています!引き続きよろしくお願い致します。

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