37 領地とオスプレイ ~~ぐいぐい行くことにする~~
今日は、少し長くなりました。
数日間は、館で過ごした。
まず、父親に手紙を書いた。トゥールでの出来事を報告しなければならない。ロゴのことだから頭に来て大司教やレイズのところに殴り込みに行きかねないので、報復については考えがあるので待って欲しいと付け加えておいた。
ネイとヤンコーは、かなり闘えるようになっているようなので、黒千代を付けて魔の森の周辺を巡回するように指示した。魔物は森から出てくる。出てくるところを叩けば被害が出にくくなるのだが、どういう周期で、どのあたりから出てくるかが全く分からず、対策が立てられないのだ。それを巡回させ、観察させることで情報を集めつつ、ネイとヤンコーの訓練にもなるという形だ。
シノは、レイズの村に潜入している。
ドワーフのグラインガドルとユーローには、船の建造を命じた。おおよその設計図は、テウデリクとゴームルも一緒になって考え、あとは任せておいた。川を行き来できるような船が欲しいのだ。ロワール河の河口からトゥールまでの船便を整備したいと考えている。
漂白剤については、イソアザミを採取して試してみることにするので、少し待ち時間が発生するのだ。
ユーローは、テウデリクが雑草が丘に帰って来た時に、
「テウデリク様、水車と水道管が出来ました! これで楽にお風呂に入れます!」と報告してきていた。
お風呂の問題だけではなく、畑への水やりも大幅に効率化するので、新しい畑を耕すことができる。肥料も撒くようにしているので、収穫量は大きく増えるだろう。
トゥールの商人、レイモンダルムが訪れてきた。
「テウデリク様、トゥールでは災難でしたな。」
「レイモンダルム、トゥールでは、お見舞いに来てくれて助かった。あの薬草のお蔭でゴームルの傷口もふさがった。礼を言うぞ。」
「はっ。ところで、私、このたびギムザリウスから独立致しました。」
「おお! それは目出度いな。しかし急な話だな。こちらに店を出してからにすると思っていたのだが。」
「それが・・・。」
どうやら追い出されたらしい。
「ギムザリウスによれば、近いうちに戦争が始まるのだそうでして。店を出す程度なら良いが、テウデリク様のところで御用商人に近い形で商売をするのは許さぬと言われました。」
「戦争? どこが戦争するのだ?」
テウデリクは不思議そうに聞いた。
ガリアは数十年来経験したことのない平和な時代を享受していた。
フランク人は、西ゴート、ブルグンド族を撃破し、ガリアの大部分を支配している。西ゴートとは、シギベルト王、キルペリク王ともに婚姻の絆を結び、戦の兆しなどどこにもない。
フランクの王たちが、ゲルマニアに遠征に行くことはあるが、それは遠くの話だ。
ブルグンド王国は、南東のランゴバルド族の侵攻を受けることがあるが、これも国境紛争程度の話だ。雑草が丘には関係がない。
「それが、ギムザリウスの商人としての勘だと言うのです。」
「ふむ。しかし、そのような当てにならないもので、店を出すのを禁止するというのも無体な話であるな。」
「は。それで、出てまいりました。」
「であるか。」
ギムザリウスも一流の商人だから、何か察知しているのかもしれない。
実際のところ、この時から数か月後には、キルペリク王の下でガルスウィンド王妃殺害事件というものが起きて、東西フランク両国が戦争状態に入るのだから、その勘は当たっていたということになる。
「そちに最初の仕事を依頼しようかの。」
テウデリクは決断した。
「5000デナリウスを与える。もっとも頭金でまずは2000を渡す。それで新開地の建設を始めよ。」
「は?」
レイモンダルムは商人である。建設工事の経験などない。
「そちが自分でやる必要はない。トゥールから懇意の大工などを呼んで来て良い。村で人手を雇っても良い。それらの総合的な手配を任せるということだ。」
テウデリクは図面を出してきた。
「ああ、この場所でございますな。」
レイモンダルムは一目で場所が分かったようだ。
「この場所は、絶好の交易地となると思っていたのです。」
「そうだろう。」
「しかし、この図面のとおりでしたら、おそらく5000ではとてもとても・・・。」
「分かっておる。まずは土台などの基盤工事を頼む。それから川港だ。公衆便所や浴場など、生活の基本的施設も作る必要があるが、要するに受け皿を作っておくということだ。あとは、少しずつ作っていくし、呼び寄せた商人が自分で建てる場合もあるだろう。」
「なるほど、分かりました。この仕事、お受けさせて頂きます!」
「うむ。細かいことはヴェルナーと相談しろ。技術的な面で困ったことがあれば、ユーローかゴームルと打合せせよ。」
これで懸案が一つ片付いた。
新開地の建設はロゴに相談してからと思っていたのだが、トゥールに行く道の途中で軽く持ちかけたところ、「テウがいいって思うなら、いいぜ。」と簡単に許可が出たので、どんどん進めていくつもりなのだ。
定期市では、月々3000デナリウスほどの収益が上がっている。最初の定期市では、布が爆発的に売れたので、4000の利益が出たのだが、今は少し値が落ち着いている。それでも生産量は徐々に上がっているから、収益はそれほど落ちていない。
レイズのところに流れた製作技術が今の独占状態を崩すかもしれないが、実のところテウデリクはそれほど危機意識を持っていない。漂白ができるようになると、見栄えが全く違うものになる。機織り機も改善を進めていく予定だから、品質が追いつかれることは当分の間はないだろうと見ていた。
更に、テウデリクはロゴの所領全域から羊毛が集まるように手配していた。村人にも機織り機の技術を隠さないことにして人手も集めるつもりだ。そういう総合的な産業構造が出来上がりつつあるのだから、レイズが自分の村で、細々と布を作る程度では、ほとんど脅威にはならない。ポワティエ大公、グンドヴァルドゥスも領内で布生産を始めるかもしれないが、それでもテウデリクが考えているほど組織的に産業化することはできないだろう。
ミーレに言って、ヴェルナーとガーリナを呼ばせた。
「ヴェルナー」
「はい。」
「海岸地帯に行って、現状を調査だ。それから塩田を作り始めてくれ。」
「はっ。」
シノが地図を作ってくれていた。おおよその塩田候補地は決まっている。それにテウデリク配下の技術陣と知恵を絞って、塩田の基本構想は出来上がっている。
「ガーリナも、手が空いているときにはできるだけ一緒に海岸地帯に行って、様子を確認しておいてくれ。特にあそこの領主、ガレオとの間で揉め事になるかもしれない。そのときの折衝については、お前に同席して貰おうと思っている。」
ガーリナの外交折衝の初舞台ということになる。
「は、はいっ! 分かりました。」
「ミーレは護衛を頼む。」
「はい。」
「あと、マイナが言っていたイソアザミという奴を探してみてくれ。」
薬師の娘だった幼女が、漂白剤の材料になるかもしれないと教えてくれたのだ。特徴は聞いているので、なんとかなりそうだ。
「テウ様、人手はどうなさいますか?」
「もうじき父が帰ってくる。そうすると用人を全部借りる許可を貰うつもりだ。それから、レイモンダルムに頼んで、新開地の労働力を回して貰うことを考えている。労賃を払うだけの資金は、十分にある。」
「分かりました。」
ヴェルナーとミーレが出発の準備をしに行った。
「ガーリナ」
「はい。」
「塩田の方は、主にヴェルナーがやるので、お前は補佐程度で構わない。それとは別に、各村の村長に手紙を書いてくれ。この館に来るように、技術に秀でた者と一緒に来るようにと伝えよ。この雑草が丘の下の村を模範として、同じようにやらせていくつもりだ。資金援助もする。融資だが。ガーリナには、その指導を任せようと思う。」
「はいっ。」
「融資計画の素案を作っておいてくれ。」
「分かりましたっ!」
ガーリナには、夜な夜な「西ローマ帝国衰亡史」(作:テウデリク)を口述筆記していたので、「融資」と言われてすぐにピンと来るようになっていた。
「それと、定期市の取引ルールは、ゆっくりで良い。」
「すみません・・・。見当がつかなくて。」
「構わない。僕も簡単に考えすぎていた。参考になるものがないと作りようがないことに考えが及んでいなかった。行商人を館に招いて各地の取引の実情を聴き取っていこうと思っている。そこでガーリナも同席して貰って、当地の明確な取引ルールを作っていけばよい。」
「分かりました。」
「ある意味、これは歴史的な事業だ。なにしろどこの定期市でも、そのような成文化されたルールというものがない。」
慣習ルールで進められていることも、商業ギルドの力を不当に強くしているというところがある。自由経済の基本は、明確で誰にでも分かり、誰にでも等しく適用されるルール作りなのだ。
「はい。頑張ります!」
「それから、この前説明した件だが・・・。」
野蛮魔法の仕組みを説明したのだ。
「あ・・・はい。」
ガーリナが赤くなってうつむいた。
「ミーレとシノにはうまくできたが、誰にでも力の譲渡ができるかどうか、分からないのだ。手順も、結構恥ずかしい。そういう事情があったので、事務方であるお前にはしなかったのだ。」
「分かります。」
「だが、お前が望むのなら、女の子の中でお前だけしない理由もない。」
「テウ様。」
ガーリナがしっかりとテウデリクの目を見た。
「私、ミーレさんみたいな美人じゃありません。」
ガーリナが絞り出すように言った。
5歳の女の子が自分で言うには辛い言葉だ。
シノに負けているとは言わなかった。シノの方が可愛らしさでいえばミーレよりも上かもしれない。エルフの血が神秘的な美しさを醸し出していた。それでも年下で、前から自分たちの仲間だったシノに対しては、負けを言葉にするのは更に辛いのかもしれない。
「ガーリナ」
テウデリクは言った。
「はい。」ガーリナはうつむいたまま言った。
「僕とお前が大人になったら」
「はい。」
「お前を俺の側女にしてやろう。」
「えっ?」
ガーリナが目を真ん丸にしてテウデリクを見た。
「正妻にやきもち妬くなよ。」
テウデリクはそう言いながら立ち上がった。
「ガーリナ、来い。」
館を出てから、ゴームルの離れに立ち寄った。
マイナはテウデリクとも喋るようにはなったが、今でもゴームルの家に入り浸っている。
「ゴームル、いるか。」
「は、テウ様。」
今日はユーローがいないが、トゥールで略奪してきた女とマイナがゴームルといた。女はゴームルの足を揉んでいて、マイナは身体が温まる薬草茶の研究をしていた。
「ゴームル、ちょっと卵を温めていてくれ。」
テウデリクは腹巻のようなものを外してゴームルに頼んだ。
腹巻に大人の拳くらいの大きさの卵を入れ、更に保温のため羊毛を詰めてあるから、かなり不格好なのだが、孵化するまではこれで頑張るしかない。しかし、今からガーリナと、ナニをするので、流石に卵を外さなければならない。
「は。分かりました。」ゴームルが快諾する。
「マイナ、卵が割れそうになったら、呼びに来てくれ。下の林にいる。」
「はいテウデリク様、分かりました。」
それから、テウデリクとガーリナは、丘を降りて行った。まだ春は来ていないから、外に出るだけで寒い。ここで下手をすると風邪を引くかもしれない。
もっとも、丁度夕方になっていて、共同風呂が焚き始められる時間になっていた。外で済ませて、それからすぐに風呂に入れば風邪を引くこともないだろう。
人気のないところで、ガーリナにスカートを下ろさせた。
「こんなところで、こんな恰好ですまんな。」
「いえ、いいんです。春まで待つのは嫌ですから。」
ガーリナはうつむきながら言った。
下半身には何も付けずに、樹に寄りかかってお尻を突き出させた。
テウデリクも下を脱ぐ。
「始めるぞ。」
「あ、あの・・・。」
「なんだ。」
「テウデリク様。お願いがあります。」
ガーリナは必死な目でテウデリクを見た。
「なんだ。」
「こんなの、厚かましいかもしれませんが。私、・・・キスして、欲しい、です。」
テウデリクは驚いたが、下を脱いでいて寒い。ガーリナも寒さに震えているので、あれこれ喋っている時間はない。
「ふむ。ガーリナよ、お前は僕が最も頼りにしている配下の一人だ。女としても好ましく思っている。」
これはちょっと事実とは違う。それほど魅力的というわけではないのだ。しかし、テウデリクは人の外見だけで寵愛するかどうかを決めたりはしない。ガーリナの忠誠心、努力は高く評価しているし、それがガーリナに対する好意に繋がっている。そして、それは愛情に近いものでもあった。だから、好ましく思っているというのは、完全な嘘というわけではない。
テウデリクはガーリナの肩を抱いて引き寄せ、その唇に口づけした。
「テウ、さま。・・・ありがとうございます。」
ガーリナはテウデリクにしがみついた。
「うむ。大人になったら、もっとすごいのをしてやろう。だが、今は尻を出せ。」
とにかく寒いのだ。できれば早く終わらせたい。
「はい。・・・お願いします。」
そういって、ガーリナは目を瞑った。
・・・
数分後、テウデリクはガーリナの身体から身を離した。ガーリナはがくがく震えていた。寒いからというのもあるだろう。
手持ちの布で身体を簡単に拭かせて服を着るようにいい、すぐに風呂に入ることを指示した。この時期に身体を冷やすのは時として命に係わるのだ。
「明日の朝、館で確認しよう。野蛮魔法、使えるようになっているといいな。」
「はいっ、テウ様・・・ありがとうございます。」
ガーリナは手で顔を隠しながら言った。
ガーリナが共同風呂の方に歩いて帰って行ったのを見送ってから、視線に気が付いた。
幼女が目を見開いてテウデリクを見ていた。
信じられない、というような表情をしている。
「お、おぅ、マイナ、如何致した。」
つい戦国大名風の口調になってしまった。
「あ、あの、えっと。はい、その見ていて。あっ、テウデリク様とガーリナさんのことじゃなくて、えーっと、卵です。卵が動くって、おじいちゃんが。」
マイナはゴームルのことをおじいちゃんと呼んでいるのだ。
「そうか、では、すぐに行くぞ!」
テウデリクは、走って丘を登って行った。その前にズボンを履くのを忘れない。
(見られてしまった。かなり気まずいな。)
・・・
テウデリクは、一時的に館の3階のロゴ夫婦の寝室に入っていた。
ロゴたちはルーアンの結婚式からまだ帰って来ていないから、基本的には無人なのだ。
用人に命じ、暖炉に火を入れさせ、暖炉の前で卵を温める。上衣をたくしあげて腹を出し、卵の上に羊毛を被せて素肌で温めるのだ。
カツカツ
確かに卵の中で何かが動く音がする。
(二つ同時に孵化してくれるとありがたいのだが。)
片方の面倒を見ながら片方を温めるのは面倒ではある。
カチカチカチ、カツンカツンカツン
卵の音が変わった。
最初は単に中で動いているような音だったが、今は中から叩くような音に変わってきている。
床に布を何枚か敷いてその上に腹から卵を出して置いた。前に座って観察を始めた。
ふと気が付いて部屋の中を見渡す。
いた。
部屋の隅で錆猫がじっとこっちを見ていた。
「サビ」
テウデリクが声を掛けると、「ニャ」と小さな、囁くような声で返事をしてきた。
「サビ、この卵は獲物ではない。絶対に手を出すんじゃないぞ。」
テウデリクが言うとサビは残念そうに、にゃあ、と答えて暖炉の近くに来て座った。
これは目が離せないかもしれない。
テウデリクはサビの動向を目の端で捕えながら卵の観察を続けた。
二つとも、中から叩く音を出している。
カツンカツンカツン、コンコン、コンコン!
だんだん音が強くなってきている。
ついに、卵に穴が開いた。中から嘴が覗いている。
嘴を盛んに動かして穴を広げている。卵の中で身体が転がるらしく、たまに違うところを突いたり、ひっくり返って足が穴から出たりしている。足の力も強いのか、そういうときにも穴が拡がり、卵の殻に大きな亀裂が走った。
(割りたい)
テウデリクはせっかちだ。
こういうのを見ると、手を出したくなる。
じっと待っているのは苦手なのだ。
(しかし、我慢だ。)
じりじりしながら待つ。
(日本の鷹とは違うな。)
ミサゴは、春先に産卵して、4月頃に雛が孵るという記憶がある。
オスプレイは違うのだろうか。通常より1か月ほど早いように思う。
それとも、ここが違う世界だからだろうか。
(そもそもこいつも魔物なのだ。)
雛の両親が見えない刃を放ってきたときは、本当に焦った。
狩りのときには使っていなかったが、あれは本当の緊急時にのみ使うのかもしれない。
そういう意味では、日本の鷹と同じように考えると失敗するかもしれない。
「ピーピープィー」
割れかけた卵の中から声が出始めた。
ちらっと横目で錆猫を見るが、サビは、
(手出しはしませんよ。)とでもいうかのようにこっちに背中を向けて寝転んでいる。もっとも、尻尾が動いているので、微妙に安心できない。
「サビ、絶対に手を出すなよ。」
再度警告しておく。
「にゃ。」
サビも短く返答する。
卵の先から嘴が大きく突き出された。
ぴいぴい鳴きながら、嘴を振り回し、卵の中で、卵ごと転がりながらもがいて、足も使って殻を破壊して、雛が飛び出してきた。
もう一つの卵からも、同じようにして雛が出てきた。
「おお」
テウデリクは感動した。
織田信長であったころは、鷹が孵るところを見る機会はなかった。流石に忙しくて、そこまでの時間がなかったのだ。
何日も卵を抱えて寝たり歩き回ったりしていたから、かなり情が移っている。ついに孵化したと思うと、我が子のように、いや、我が子よりも可愛い。雛たちがピイピィ言いながらごそごそと歩く練習をしているのが、とにかく可愛い。
突然の衝動に駆られて、テウデリクは、
「世界ヲ支配スルろーまノ文明ノ理ヨ、我ハ命ズ、コノ雛ラノ生誕ヲ祝シ、体力ヲ与エ、アラユル病苦ヤ疲労ニ耐エ、イカナル使命ヲモ完遂スル、強キ精神ト肉体トヲ与エヨ。」
と唱えた。
今までにないほどの強く白い光が雛たちに注がれた。
(呪文が、だんだん正解に近づいてきているのかもしれないな。)
昔、ゲルマンの神が、文明魔法は砂漠の神に盗まれたと言っていたが、やはり本当かもしれない。それを意識して文言を訂正しているのだが、その方が効き目があるように感じる。特にトゥールでグレゴリウス大司教に手痛い背信行為を受けてからは、聖教会そのものに対する深い不信感が更に募って来たので、それが文明魔法の行使に良い影響を与えているのかもしれない。
突然、錆猫がテウデリクの背中に手を掛けた。腹を密着させてくる。
「おい、サビ、何をする気だ。」
聞くが答えず、腹をこすりつけてくる。
「おい、またか、サビ」
錆猫の下腹部の小石ほどの堅いものがテウデリクの背中に押し当てられ、激しくこすりつけられた。
と、思うと、突然錆猫が背中から離れ、よたよたと慌てて歩きながら雛たちの方にやってきた。
そして、雛たちの上に覆いかぶさるようにして、ぴゅ、ぴゅっと白いものを飛ばした。BUKKAKEである。
「サビ、器用なことをするな。」
現代日本に産まれていたら、男優になっていたかもしれない。
雛たちは一層力強く鳴きながら、テウデリクの膝に登って来た。まだ弱弱しい羽根をパタパタ動かしている。羽ばたく振りをするたびに、白い光と赤い光が交互に放射された。
オスプレイの雛たちは、文明魔法と野蛮魔法、どちらの力も、その身体に宿したようだ。
ご一読ありがとうございました!
次話は、光秀に戻る予定です。




